悪いのはそっちだよね?
「ちょっと待って、王都に来てくれないかな?総本部長が来ているし、指導をしてくれる冒険者も手配しているから行ってくれると、はやくいろいろと終わるんだけど」
「なんで行かないといけないの?襲ってきたヤツを殺していいって言ってくれればいいよ。手加減とか面倒。身を守るために賊の冒険者討伐許可を出しといて。こっちからはそれぐらいだけど?」
「王都にね、交渉しに来てくれているから」
「だから?身分や地位は関係ない。必要なら自分で行く。今回は必要だと思っていない。追い出されるような形で王都を追われた僕に、もう1度行ってくれっていわれてもイヤだ。それじゃあ、全力攻撃を防げるのがいるなら行ってもいい。手加減を間違えると力加減がうまくいかないかもしれないでしょう?」
「今の生活魔法のレベルは?」
「今は8だね」
冒険者達がざわついた。
「普通の魔法だとどのくらいのレベルになるの?生活魔法はよく知らないの」
「普通のだと威力とか射程とか保持時間とか決まっていると思うけど、生活魔法はそれが決まってないから、普通の魔法のレベルプラス1ぐらいは出せるかな?威力は辺境伯様のワイバーン討伐隊に聞くといいんじゃない?実際に目の前で見ているんだから」
「どのくらいか見せてもらって報告したいんだけど」
「見せると家がなくなる。討伐隊の全力防御かな?弱いと思ったけど、後ろにいて、押し込まれていたよ。盾とか地面にさしていたんだけど、なんでなんだろう?わざとだと思うけど。そうだ、氷とクリスタルを出すね」
どんと土に突き刺さる。家より大きな氷とクリスタルが両側に出現する。
「使い勝手の良さならこのくらい?」
大人のこぶし大の氷とクリスタルをバラバラと出していく。出している途中から大きい塊にぶつける。固さではクリスタルが強いね。そして、壊す。
「こんな感じかな。相手が出来るなら行くよ?でも、教えてくれる人が死んでもかわりをすぐに、冒険者ギルドが用意してくれるというなら王都に行ってもいいよ。ちゃんと教えてくれるまでね」
「王都の本部に確認をしてくる」
血の気が引いているヘルセさんが冒険者を連れて村のほうに向かって行く。無理なら無理でいいんだけどね。王都に行っても、疲れの取れないままに戻されてしまったし、冒険者ギルドを回避するために街にも入らなかった。おかげで見つからずに済んだけどね。警戒でよく寝られなくて、朦朧としながら帰ってきたばかりで少し休んですぐ戻れとか。自分勝手極まりない。冒険者ギルドは僕に対して暴力でいうことを聞かせることしかしてこなかったんだから、同じことをしているだけだ。
村に戻るのを確認してから家の中に引っ込む。戸締まりをきちんと確認をすると鹿の解体に入る。疲れが抜けないな。まだ体がだるい。本当に疲れているんだろう。森の中を少しは見て回ったんだけどな。体が動くことは動くんだよね。パンとか肉入りのスープを作って食べる。何か悪いところはないと思うけど、もう1回寝てみよう。
コンコン
はあ?誰だろうか?お腹が鳴る。どのくらい寝ていたのかな。寝過ぎてだるいのかな。ドアを開けるとヘルセさんが馬を連れて立っている。
「ランス君、本部に確認してちゃんと用意するわ。後ろに乗って街まで行こう。そこからは馬車で王都に移動よ」
「ええ?やだ」
「どうして?」
「冒険者ギルドを信用していない」
「そんなこといわずに」
「力を示せ。そう、冒険者ギルドに教えられたよ。強いヤツが偉いんでしょう?そうしたのはそっちだ」
ヘルセさんの馬がいなないて鼻息を荒くする。顔を擦り付けてくる。よしよしと撫でると満足したようだった。おまえのことは怒ってないよ。お腹が空いているから、家の中に入りスープを作り始める。外で話し声が聞こえるけど、気にせず煮込む。パンをかじりながらスープを飲んでゆっくりとお腹を満たしていく。
「冒険者ギルドじゃなくて、私個人を信用してついてきて欲しい。襲わせないし、誓約をしてもいい」
食べている途中で入ってくると、冒険者ギルドの人間が何を言ってるんだろうか?
「ギルドのギルド長なのに?何を言ってるの?無理なものは無理だよ。まさか、F級が街を回避して戻ってくることが出来るのに、冒険者ギルドは出来ないの?そっちは力を示せてないのがわかってないの?じゃあ、行く最低条件として、ギルド関係者、冒険者を殺しても罪に問わず、襲うごとに僕へ賠償すること。手加減を教えることが出来ない場合は、その条件を継続。冒険者ギルドで、誓約すること。それが条件」
「それだと、私たちが殺されてもランス君にお金を払うだけじゃない」
「それほどのことをあなたたちはしている。なんで、反撃しないと思っているの?腕や足が飛ぶからだよ。僕を殺そうとして手がなくなった冒険者もいるよね。死なないまでも再起不能にはなる。暗殺向けの冒険者ですらそうなるのに、その辺の冒険者と争ったら死体が転がるよ。実力の間違いない冒険者なんだよね?そんな保証も出来ない冒険者を用意するギルドなら僕は行かない。道中もそんな冒険者や職員に襲われるから、そこを保証したなら行ってもいい。もちろん、国とも交渉してよ?捕まるのはイヤだからね」
「そんなこと出来るはずない」
「じゃあ、交渉はなし。こっちも身を守るための交渉だ」
「そんなことしたら冒険者ギルド自体が貴方を狙うわよ?」
「その時は神の怒りに触れるだけだ。ギルド関係者、冒険者がどんなことになるかはわからないけどね」
両サイドにふわりと降り立つ白と黒の狼。
「我々もそろそろ手出しをしなければならないと話し合っていた。いつになったらランスのことを周知徹底させるのかとな。神にでもなったつもりか?我らの加護の者に手出しするならば、相応の覚悟をするがよい。自らの罪を認めぬならば冒険者ギルドとやら、神託により神罰を与えるぞ?」
「教会を?」
「我らを信仰する聖女や聖人がいるのだ。使うのは当然であろう。逆らえば職を取り上げれば済むこと。それでも止まらぬなら、神の裁きが下る。そう伝え、判断せよ。知らぬ者は誓約せねば伝わらぬぞ。こやつの封印を解かせるのならば、総本部のある国ごととギルド所属者に呪いがかかるだろう。そうならぬためにもそろそろ止めねばならぬのだ」
そう言うとすぐに消える。ヘルセさんは数歩下がって家の外に。冒険者ギルドと総力戦なら当然封印は解かないといけない。今の全力だとどのくらいになるのかな?修行のところでしか強力な魔法は使ったことがない。国ごと?そんなに威力があるのかな?試せるならやってもいいかな?極大魔法とかこっちで使ってみたいような。
そんなことより途中だったご飯を食べる。パンをもぐもぐしながら食べていく。今日はもう来ないと思うから、食べ終わった鍋を水で洗って、クリーンをかける。最初に作った石鍋なんだけど、ヒビが入った。作り直すか、鉄の鍋を買うか。鉄鍋が買えるならそっちの方がいいな。薬師ギルドできいてみようかな。調合用があるからある気もするけど。
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