王都からの逃亡

 入り口から出た瞬間は気のせいかと思っていたが、ずっと殺気がついてくる。隠すこともしないのか。宿屋に行くようにゆっくり歩く、絡みついたままの殺気をどうしたらいいかな?。このまま宿に行くと、ついてきている連中も一緒に来るんだよね?今ならギリギリ外に出られるかもしれない。王都の街がわからないから、追いかけっこは厳しい。薄暗くなりつつある街の中を走り出して、城門へ向かって行く。まだ、人の流れは多く、馬車も通っているので開いているはずだ。薄暗く、たいまつがたかれている。

「待てやF級」

 後ろから声をかけられて振り返ると、いきなり殴りかかれてバックステップで避ける。重いから動きが遅いかな。

「待つ必要は僕にないよ」

 城門に向かって走り出す。威嚇なのか足下に弓矢が飛んでくる。

「何か用?」

 弓矢を後ろ向きで躱すのは厳しい。風を使った加速で弓矢より早く移動するのはリュックとかが厳しいから無理か。そこまでの速度だと体がもつのかな。

「冒険者ギルドに魔物を持ち込んだのはお前か?」

「冒険者なら魔物は持ち込むはずだよ」

「クロコダイルを生きたまま持ち込んだだろうが」

「討伐は出来ないからね。F級だし。冒険者ギルドに討伐してもらうのが普通のことだと思うけど、君たちみたいな冒険者にね。持ち込んだらみんな逃げ出したけど」

「ふざけんな、あんな危ねえことして、ミルナリちゃんが怯えていただろうが。2度としないように指導してやる」

 今しゃべっていた前衛だろうか、筋肉でごついヤツが吠える。その後ろから短剣の男と弓の男と魔法使いの男がいる。バランスは良さそうなパーティー編成。クリスタルの壁を作ると、ちょっと遅く崩れるようにして城門に向かって行く。

「へいもーん!」

 検問は終わって、城門が閉められていく。ああ、間に合わなかった。

「逃げるんじゃねえ。2度とやらねえっていうなら許してやる。でないと体にわからせてやる、さっさと謝れ」

「冒険者に襲われるー」

 大きく叫ぶ。通行人は振り向いたりしている。城門の人達には聞こえているといいけど。

「ふざけてんじゃねえ」

 殴ろうとする拳を避ける。荷物のせいでうまく避けられなくて、当たって軽く飛んでしまう。すぐに立ち上がると、じりじりと下がって、城門のほうに下がっていく。

「F級は討伐できないことも知らない冒険者がいるなんて、冒険者ギルドは何やっているのかな?知ってていってるなら、頭がおかしいのか、わからないぐらいのかわいそうな人なのかどっちかだね」

「なんだと!?」

 顔を真っ赤にして、大ぶりで殴りかかられるのを大げさに飛んで威力を殺しつつ、城門まで転がる。立ち上がって、城門前で位置を確認。

「効かないね。こいよ。王都の冒険者は逃げるか弱いものを狙うしか出来ないからな」

 後ろから魔法が飛んできた。水かな、ちょっと威力は抑え気味かも。魔法が来たなら、その魔法を受けるぐらいに合わせて、城門に水で攻撃を仕掛ける。

 ドガッガキ

 分厚い城門に穴が空く。兵士が騒いで危急を知らせる声を上げ、鐘を鳴らす。その穴をくぐって外へと脱出を果たす。街道を走って逃げると風を使って距離を稼ぐ。普通の人には暗くても、僕には月明かりで十分に見える。街道を速度を上げて走って行く。王都は見えなくなっているから、十分な距離は稼げているはずだ。歩きながらいい場所を探してく。街道から見えないところがいい。周りを見回しながら林を発見して中に入る。適当な場所で寝る場所を作って、毛皮をしいて横になる。ウトウトしながら夜を過ごしていく。逃げたばかりで安心などしていない。


 空が白んで寝床を元に戻して街道に入る。パンと干し肉を食べながら歩いて行く。パンと干し肉の余裕はあまりないかな。途中で狩りが出来ればなんとか帰ることが出来るだろう。ホレス伯爵領が見えてきて、中に入るのはいろんな人に絡まれる気しかしないので街道から外れて都市を迂回する。見つかると冒険者ギルドに連れて行かれるかもしれないから通りたくないんだ。森の中を進んでいき、都市を抜けてから街道に戻って進んでいく。明るくなっているので人通りが多い。馬車にひかれないように街道の端っこを歩いて、喉が渇いたら水を出して飲む。太陽が高く昇ったところで1度休憩をとる。パンと干し肉をかじりながら食べ終わるまで座っていた。街に入ってパンと干し肉を買い足したいけど、通る街の全てに冒険者ギルドが必ずあるので中に入りたくない。


 まだ、体力があるうちに獲物を狙うために森の中を歩いていく。街道の近くにある森なのであまり動物がいないかも。探索をかけるけど引っかからない。どうしようかな。食べ物が少なくなっているから、肉だけでもあれば十分に食いつないでいけるから探さないと。今日は出会わないな。なんでだろう?街道沿いに戻って、良さそうな場所を探して野宿をする。


 最後のパンを口にして、水を多めに飲む。干し肉が少し残っているぐらいか。相変わらず、動物のが探索に引っかからない。なんでなんだろう。いくら街道付近は安全に通行できて、騎士の人達が巡回しているとしても一切引っかからないのはおかしい。ワイバーンがいるときは逃げ出すのはわかるんだけど、奥に引っ込んでいる理由もわからないしな。お腹空いた。お昼までは干し肉を我慢しないと、あれを食べきったら、魔法で作れる水ぐらいしかない。街に入ったら冒険者に絡まれることは間違いない。旅をしている子どもは珍しい。祝福をもらっていないと盗賊に売り飛ばされたり、魔物の餌になる。運がよくて次の街に行けるぐらい。長旅になればいなくなるなんて普通なんだから、旅をしているような子どもがいればすぐに見つかってしまう。


 街に入らないようにして、外壁沿いに歩いて行く。疲れてはいるのであまりいい状態ではない。警戒のためにちゃんと熟睡しない状態が続いている。そういうことも訓練はしたので耐えられるけど、寝ているのか寝ていないのかわからないような、朦朧とするのは好きじゃない。お腹も空いているからさっさと帰ってしまおう。冒険者ギルドのせいか。教育ができていないせいだ。それにしてもどうして動物たちが全然見つからないんだろう?

 商団と思われる馬車の集団や普通の馬車に、貴族の馬車っぽいのは騎士の護衛をつけていたのでそうなのかなと思いながら見ていた。貴族の馬車は装飾がしてある。普通は使うための装備しかないのにね。その間を馬の集団が駆けて行ったりと、街道観察で眠気を誤魔化す。


 何日たっているのか、お腹が空いて、歩いているから起きている。村に向かっているのは、通ってきた道を帰っているから。お腹の音すら鳴らなくなって、何日かたって、イライラすることすら出来ずにひたすら、足を進めることだけに集中している。たまに馬車か人とすれ違う。お腹空いた。水はあるから少しだけ飲んで誤魔化す。飲み過ぎると近くなるからね。あと、いろんなものが抜けていくらしい。森の中に入って、探索。いない。なんでいないんだろう。お腹空いた。暗くなるまで歩いて簡易の部屋を作ってその中で眠る。暗くて静かだな。

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