王都本部1
受付から隻腕の男の人が出てきた。依頼の紙を持っている。
「指名依頼を拒否されたらどうするかな?戻ってきたら本部長のところに案内するように言われている。ついてこい」
言葉に従ってついて行く。少ないが並んでいる冒険者達からは注目の的にはなっているが何かされるとかはない。クエストをちゃんと受けに来ているのだろう。酒場がないから明らかに酔った人はいない。
「王都のギルドって酒場はないの?うちはギルド内にあったけど」
「酒場?隣が冒険者ギルド直営の酒場だ。建物をわけて酔っ払いが、ちゃんとやってる連中と絡まないようにしている。ランスは行っても食べるだけになるだろうがな。暴れても壊れにくい丈夫なイスや机になっていて、スキルを使わない限りは平気だ。壊すと高い罰金をギルドカードから差し引かれるから、たまにクエスト受けて失敗とか金にならないとか、バカな奴らもいるから酒場に行くときは気をつけろ。他の店に行くことを勧める。クエスト失敗して、ムシャクシャしているのも集まりやすいからな」
「行かないようにする。建物ごと吹き飛ばしそう」
「そうだな、ワイバーンをやれるならそのくらいは出来そうだ。お金が幾らあっても足りなくなるぞ」
「気をつける」
受付の反対の売店横にある階段を上っていく。2階をすぎて3階へ。
「そういえば、どこの所属なんだ?」
「薬師ギルドにも所属しているよ?」
「いや、領地のことを聞いたんだが、どこの所属って聞かれたら活動している領地をこれからは言うんだぞ?薬師ギルドの所属のF級って、ソルに勝ったのはランス君なのか?」
そうだよと軽く答えながら階段を上っていく。
「受付でもすごいF級がいるって噂になっているぞ」
「そうなんだ?あしらうって四肢の1本ぐらいでいいんだよね?」
「骨折ぐらいはしょうがないのかもな」
「骨折?切断だよ。それはやったことがないからどうやったらいいのか。うーん」
「それはやばい。何かと注目されているし困ったぞ」
少し進んで扉の前で止まる。ノックをして入っていく。中には冒険者ギルドの本部長と誰だろう?ソルもいるがなんでだ?
「本部長、連れて参りました。あと断られた指名依頼を置いておきます。それでは失礼します」
テーブルに依頼書を置いてさっさと帰っていこうとする。
「レスタ、ちょっと待て。お前をこの子の王都での担当受付にしたい。秘密の多い子でトラブルがあった場合、報告をすぐに上げて欲しい。秘密はこれから話し合うので、誓約をしたくない場合は出てもいい」
「誓約の必要なほどの秘密なんですか?」
「ああ、知らない方がいいときもある」
「どうしようか?それは相当のことですか?受付するうえで知っておいた方がいいとか?」
「知らなくとも受付は出来るだろう」
「教えてくれるなら残ります」
本部長は頭を振った。うんざりといった様子だ。
「では座りなさい。まずは紹介しよう。私が本部長のジェロイだ。こちらに座っているのがギルド長のランダ。ソルは知っているな。で担当受付のレスタだ」
本部長の対面にあるイスに机を挟んで座る。僕から見て左側にランダさん、反対の長ソファにソルとレスタさんが座る。
「カギをしてくれ、君も職務上しかたなく誓約を受けてもらう。この秘密で不利益を被ることはないはずだ」
キリッとした髪を頭の上でまとめた女の人が頷く。カギが閉まる。
「ではランス君の秘密を知らない者に伝えないことをここに誓約する」
「「「「誓約する」」」」
いつものメンバーが現れる。こういう時はこぞって出てくるんだよね。秘密の存在だからこういう時しか出られないけど。
「神の代行フェンリルの名において誓約を認める」
「女神の代行スコルの名において誓約を認める」
「妖精女王の名において誓約を認める」
イスの左右にウィットとズワルト、頭の上に妖精女王が座る。
「ランス君、そのお3方のことはティワズから聞いていないんだが」
「えっと、僕の監視役として顕現しているというか、現世にいるんだ。神々は上で忙しいからね。その代理。これ以上は言ってもいいのかな?」
「我々は神々の代理としてランスを守護している。監視ではない。ランス、それ以上は神々の領域の話になる。するでない」
「わかった。そういうことだって」
初見の4人は口が開いたままで固まっている。
「ランス君のスキルはどうなっているんだね?」
「それは封印する前?後?」
「封印?」
「グリじいと代理、僕の魔力で自分のスキルを祝福前になるように封印しているの。自分で封印できないけど、最悪の場合は、いや、その前にスコルとズワルトがやるか」
祝福前の封印ってなんだと小声が聞こえる。
「本部長は知ってると思うけど、いろいろなスキルを習得済み。それを祝福前だからそれに合わせて、出してもいい、祝福前の持っていてもいいスキルだけを使える状態にしている。それが今の状態。封印前のことは本部長が説明してくれる」
「ティワズの唯一の弟子だ。ランス君の卒業試験だと木の棒だけで夕暮れの血に放り込んで全滅させた。我々でははかりきれない」
「ティワズとどっちが強いんだ?」
ソルが睨むようにいう。
「今は全然だけど、封印前は力以外では張り合っていたかな。ティワズは武神で魔法はからっきしだから、魔法の分、総合力は僕の方が上」
「な、あのティワズの上を行くのか。魔法はどんな威力なんだ?教えてもらってもわからんが」
「最近使ってないからわからないけど、盗賊退治のところぐらいならすぐに消滅するぐらいは出来たけど、禁止されてたから木の棒でなんとかしたけど」
「夕暮れの血の本拠地は都市分ぐらいの広さはあったはず。それに地下に潜伏もしていたのに消滅?妄想はいいんだよ」
ソルはいい加減に理解をしたほうがいい。
「なら封印された僕の生活魔法がどの程度の威力か知っているの?」
「身をもって知っている」
「手加減されたって知っているのに、笑えるね。武術の手加減相手になってよ。筋力は強化されないから耐えられるよ」
「お前とは関わり合いになりたくない」
「そのせいで冒険者が死んでもいいなら構わないよ?いなすって1本ぐらい切り落としてもいいんじゃないのかと思っている。威力がどんなものか、生活レベルがワイバーン殺したときに1上がったんだ。風系だったから火系でいってみる?ここの結界ぐらいなら城壁外から王城まで届くと思うんだ」
「何の話だ?ワイバーン?」
レスタさんは指名依頼の紙を滑らせるように本部長の方へ。
「ワイバーン討伐の報奨金授与に関する指名依頼。エルミニド辺境伯様からだって?まさか、ワイバーンを討伐したのか?」
「そうだね。その時に報酬は持ち合わせでいいっていったんだけど。村に来たから、もしものために辺境伯領近くへおびき寄せて討伐にかかったんだ。鋼鉄の固さの皮膚を貫いて中がもっと硬かったらどうしようかと思ったけど、ウインドカッター?テンペストカッター?ぐらいので仕留められたよ。仕留めたあとにクビの肉を食べてたら辺境伯様の斥候のヴァレンスとディナルドって人に見つかっちゃった。討伐隊のところまで連れて行かれて、ワイバーンを引き渡した。倒した魔法を見せてと言われて、見せて、大金貨3枚分もらって帰った」
「けが人は?」
「いないと思うけど、全力で防御させて余波で隊列が押し込まれた感じ?討伐隊は後ろだったけど、結界が弱いし、盾戦士も地面に盾をさして準備していたのにどうして押し込まれるんだろうね?ちゃんとスキルを使っていたのかは疑問。周囲の風を巻き込んではなったのは間違いないけど、どうなんだろう」
「ふむ、辺境伯様のワイバーン討伐隊を余波で押し込んだと?この国でも最高レベルと謳われる軍隊をね」
「防御が苦手なのかもしれないよ。うん、きっとそう」
本部長は頬が引きつる。ギルド長が口を開く。
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