ワイバーン対策を考える

 報告だけして冒険者ギルドから出ていく。薬師ギルドも遅いから宿屋に泊まろう。外観はぼろい。宿屋のマーク、ベットが軒下に掲げられている。とりあえず中に。

「いらっしゃい。先払いになるけどいいかい?」

「うん」

「朝夕食事付きで銀貨3枚だよ。いらないなら銀貨2枚だ」

 テーブルに銀貨を3枚置く。少し驚いた様子だがカギを渡して、部屋に案内してくれた。ご飯はもう出しているから食堂で食べるように言われた。荷物を置いて食事に。黒いパンと具だくさんスープとサラダ、肉の炒め物。パンは表面が硬いだけで中はいい感じな柔らかさ。スープは少ないが他は濃い味付けで美味しい。肉の炒め物は野菜や肉のうまみを感じる1品だ。美味しいぞ。量が多くてお腹いっぱいになったので、部屋に戻ってカギを閉めておく。扉の向こう側からはおっさん達の笑い声やたまに怒鳴り声が聞こえて、ベットの布団があるだけで眠気が。


 翌朝、宿屋の朝食は肉の炒め物が抜けて、スープが多め。せっかくこちらに来たので狩りでもしよう。こっちはワイバーンもいないから何か取れるだろう。ブラウンベアだと普通の矢を普通に打ち込んでも効かないだろうな。クマも大変そうだから、鹿とか、鳥は難易度が高いんだよね。空を飛べないのがいいよね。なんとか追いかけることが出来る。スキルがあるなら方法は思いつくけど、今の状態は生活魔法を駆使しつつ、うん?鋼鉄切れるならだいたいの動物いける?魔物も鋼鉄の剣でやっつける。魔物の資料はないのかな?調べてみる価値はある。

 朝一はクエストボードからクエスト受注の人でごった返している。受付も忙しそうだ。1度狩りに出かけよう。壁門から森の広がる山裾に向かう。森の中の動物を狩りに行こう。探索。早速、鹿発見!気配を殺しながら近づいていく。慎重に気づかれないように。よし、そのまま草を食ってて。弓を引く、放つ。よし、1発。手早く血抜きをして肩に背負う。門に並んで冒険者達が出て行くのを見ている。街の中に入ると冒険者ギルドに入って解体場を借りたいけどどうすれば。

「解体場って場所を使わせてもらったりは出来るの?」

「そうね、暇なら貸してくれるかもね。クエストボードの裏から解体場が見えるから聞いてみて」

「ありがとう」

 鹿を背負ったまま、奥の解体場に向かって行く。気持ち程度のカウンターには誰もいない。ドアのない入り口をくぐって中に入ると、腐ったようなニオイと獣のニオイ、血のニオイが混じっている。

「解体場を使いたいんだけど、使ってもいいの?」

「なんだ坊主、こんな冒険者も入ってこないようなところにやってきて。使ってないところを適当に使え。俺はここの責任者のシボ。坊主は?」

「ランス、F級の冒険者だよ」

「おう、お前さんがあの有名なランスか。魔法で壊さないでくれよ。もう1人、あっちのがアンゲイヤだ」

「よろしくお願いします」

 大きめの声で挨拶して、頷いたかな。たぶん。何も積み上がってない台の上に鹿を降ろして、解体に入る。防水の解体用の手袋も欲しい。肛門からナイフをうまく使いながら解体する。肋骨を外して内臓を掻き出す。水で洗い流して皮に切れ目を入れて剥ぐ行程。足首をぐるっと首をぐるっと剥ぎやすいように切れ目を入れていく。吊すところを借りてさっさと剥いで、キレイに剥げた。やりやすいよ。後は精肉にするだけだ。

「やるじゃねえかランス。手際もいいし、肉や皮はどうするんだ?」

「肉は食べるか売るけど、皮はなめしとかわからないんだよ。いるのは解体の時に使う防水手袋とか、靴の予備とか、毛皮があると暖かくていいかなぐらいだけど、毛皮を作れるぐらいでいいかなと思っている」

「なるほど、この紐をやる。肉を縛れ」

 もらった紐で縛って肩にかける。

「ついてこい」

 解体場から出て商品の並んだ場所に来る。

「エッジ、解体用の手袋はあるか?」

「あるが、破れたのか?」

「いや、このランスがいい解体をしていたんでな、ここで買えるように教えておこうと思ってな。夜は酒場のマスターだ。昼は暇だから売店をやってるんだ。欲しい物はこいつに頼めば何でも、金さえ払えば手に入る」

「ギルドで使いそうな物はそろっている。取り寄せは時間がかかる。オーダーメイドは無理だぞ。あくまで既製品でだ。商業ギルドならオーダーメイドから既製品まで何でも揃うがこの街にはない。田舎の冒険者ギルドでこの品揃えなら十分だ」

 何かいる物は解体用の手袋は確かに欲しい。毛皮はあるのかな?

「欲しいのは解体用の手袋だけど、防水されてる?」

「ああ、水も使うし血がつくからな。当然されている」

「じゃあ、解体用の手袋と弓矢と寒さをしのぐために毛皮はある?」

「全部あるぞ。矢は何本いる?」

「とりあえず20本あれば十分。いくらぐらいになる?」

「全部で大銀貨1枚だな」

 なんか安くないか?ビーカーとかは金貨なのになんでだ?

「不思議そうな顔をしてるな。皮は手に入りやすいから安い。なめすのも手間はかかるがギルドが大量にやっているから、そこそこにいい物が安く手に入るのさ。防水もなめしの工程が違うぐらいで、手間はそんなに変わらない。値段はそんなもんだ。適正価格にギルド割引がついてそんなもんだ。金はあるのか?」

「最強のF級だぞ。俺たちよりも稼いでいるさ。冒険者のカードに残高があるならカードで決済できる」

「そんなことが出来るの?」

「ああ、いちいち大金持ち歩いていたら襲われるからな。ギルドでの支払いが出来るようになっている。他のギルドでも支払いは出来るぞ。ここだと薬師ギルドくらいしかないがな。王都なんかだと鍛冶のギルドなんかで使うんじゃないか?個人でやってるところは使えねえところがあるから金を持っていかないといけないぞ」

「そんなことが出来るなんて。入っているお金ってカードごとに違うの?」

「そうだな。2つぐらいのギルドに所属するのはいるが一緒にはならないといっていたな」

「なるほど。いいことを聞いた。ありがとう。皮はいらないからあげる」

「おう、もらっておこう。また解体したいときはいつでも来い」

 よろしくですといって、カードを出して精算。毛皮は羽織るタイプで腕を出せる穴も空いている。暖かそう。手袋と矢ももらって、どうするか考える。薬師ギルドには顔を出しておこう。

「フッセさん、戻ってきた」

「お帰り、早かったね」

「うん、狩りが出来なくて困ってたの。村からは遠かったけど山沿いにワイバーンを見つけたからヘルセさんへ報告に戻ってきたんだ」

「え?何を見つけたの?」

「ワイバーン」

 叫び声が響いてデールさんが出てくる。

「どうしたんだ。ランスが帰ってきたぐらいで叫ぶなよ。びっくりしたぞ」

「いや、ランス君が帰ったぐらいで叫ばないです。ワイバーンを目撃したって聞いたからびっくりしたんです」

「ワイバーン?そんなのいるわけないだろう。たまに冒険にでるワイバーンもいると聞くがここまで来るのはなかなかいない」

「村で見かけて冒険者ギルドには報告しておいた。徐々に南下しているようで、うちの村が襲われなければいいんだけどね。もうちょっと下ると辺境伯様の領地になるから強い軍隊がいるんだって。どうにかしてくれないのかな」

「さすがにな。自分の領地に入るまでは無理だろう。男爵様が救援要請をしてくれればだな」

 無理だよね。領主様は王都に行っていないし、どうしよう。

「それまでは油断ならないってことだよね」

「そうだな。領地を越えるのは敵対行動と思われるからやっかいなんだ。貴族同士のそういうのはな、救援要請を受けてならまだなんとかなるがな」

「冒険者ギルドに戻ろう」

 また来るねと薬師ギルドから冒険者ギルドに戻る。エッジさんに僕が背負える大きなリュックがないか聞く。大中小の大人用のリュックを出してくれる。大だと足に引っかかって、当たるから動きの制限がかかる。小さいのは動きも制限なしでいいんだけど、食料だけで他の余裕はない。中は食料と他にも持って行けそう。持って帰るのも出来そう。肉用の袋も薦められて担いでいた肉を入れてリュックに入れた。支払いは冒険者カード。

「魔物のことってどこかでわからないのかな?」

「F級は魔物と戦うのはやめた方がいい。調べるだけなら受付で聞けば、資料室への処理をしてくれるはずだ。文字は大丈夫か?」

「読めるからわかるよ」

 登録してくれたお姉さんのところに。

「魔物ことを知りたいんだけど、調べられるところはあるの?」

「資料室にそういうのが置いてあるけど、ランス君はF級だからいらないんじゃないのかな?」

「狩人だし、魔物には出会うから逃げる必要があるでしょう?」

「どうなんだろう。聞いてみるからちょっと待ってて」

 奥のヘルセさんのいる部屋に向かって、入っていく。時間が空いて戻ってくる。許可がいるのかな。F級って。

「狩人をしているので、ギルド長権限で資料室の使用を認めてくださるとのことです。資料の貸し出し、持ち出しは出来ません。破壊や破損は弁償になるので気をつけてね。カードを出して。資料室への入室出来るようにしてくる」

 カードを渡す。何やら裏でやって戻ってくる。何をしているのかわからないけど。

「資料室って申請しないと入れないの?」

「希望する人には入れるようにするけど、文字の読めないのに入りたいっていっても許可できない。ランス君は文字が書けるし、魔物にも出会うだろうからいいって。F級は魔物に会わないように、依頼を設定しているから本当は入れないんだけどね」

「そうなんだ。その資料室ってどこにあるの?」

「2階の右の奥から2番目の部屋だよ。部屋の入り口にカードの読み取りする部分があるからカードをかざしてみて」

 やってみるねと受付の前を通って2階に上がる。2階は誰もいなくて右の奥から2番目にはドアのノブの代わりになんかの突起物が出ていた。これがカードをかざすところかな?どこに当てればいいのかわからないけど、横から当ててみる。平たい真ん中に赤い光が出てブーって音がして、びっくりする。少し下がって見ていたら、光が消えたので今度は光が出た部分に当ててみる。次は青く光ってカチャッという音がする。扉が開いたので中に入ってみると、光がついた。光るところを見ると魔道具で光を出しているようだ。魔道具自体が基本高いらしい。触ることはないので、壊したりは大丈夫だろう。

 魔物の本を探す。冒険の基本とかそういった本もある。魔物図鑑というぶっとくて結構表紙がボロボロの本がある。それを出して、ペラペラとめくっていく。ゴブリン、オーク、ウルフ、ベアなどの種類別に載っている。上位種も続くページに載っている。ワイバーンはどこにあるのか。かなりきて後ろから調べた方が早かった。図鑑は簡単な挿絵が入っていたので、見ているだけでも楽しい。

 ワイバーンのページだ。食べ物は大型の動物が主で、魔物も捕食する。人もだけど。平均的な大きさは横幅8メートルぐらい。鋼鉄と同じ強さの皮膚を持つ。鋼鉄?僕の持ってる弓は通らないね。武器としてはミスリル製以上が必須と。ミスリル製の弓って高いよね。魔法の場合は上級魔法か基本属性魔法ならLv.6以上を推奨とする。空を飛ぶために魔法師と守備に特化したミスリル以上のフルメイル盾戦士を基本として、弓のけん制や地上に落ちたときの止めの攻撃隊を編制するとより攻撃の幅が広がる。

 ミスリルは参考になるけど他は編隊って軍隊のことは詳しくない。なぜなら、1人で生き残ることを前提として教えを受けているから。軍隊は高威力でなるべく頭を潰せと教えられている。それが出来るからって。だめでも1人なら逃げられるから前線を足止めして逃げるっていう手も教えられている。軍隊の相手を教えられているので編成といわれても。

 冒険者はええとパーティーか複数パーティーのレイドで望むべきだ。各魔法師の属性による相殺をしないように、発動を制御するリーダーを作って命令する。属性を合わせて、発動を合わせるのが理想である。遠距離攻撃スキルを持つ場合はけん制や逐次ダメージを与えつつ、魔法師を援護する。当然、主力となる魔法師を重点的に守ることには常に気をつけないといけない。

 遠距離攻撃スキルは使えないから生活魔法で弱そうなところを狙ってみるといいかな。空を飛ぶのに追いつかれるか、殺されるか。あとは発動までの時間は、生活魔法が無詠唱無時間で即時発動出来るから、普通の魔法師よりはやれるはず。鋼鉄は切れたから切れるはずだけど、骨はいけるのかな?その辺りは書いていないから、皮膚さえやれれば貫通すると思っていいのかも。最悪手負いにして逃げる。倒せれば自分の空間倉庫に入れればいいか。本を戻してドアに近づく。同じのがついているな。本は貴重だから厳重な管理をしている。冒険者に見せてくれるだけでも凄いけど。

 ドアをちゃんと閉めて。後ろを振り返るとヘルセさんが疲れた顔をしてギルド長室から出てくるところだ。朝は下にいたのに。

「ヘルセさん、これあげる」

 こっちを見て、首をかしげる。ポケットから石瓶を取り出して渡す。

「僕の作ったローポーション。まだ、道具や瓶が届いてないから石だけど。ちょっとはましになると思うよ。心配なら鑑定でもして」

「この際、毒でも何でもいいのよね」

「薬師を追放されるよ。いいから飲んで」

 ぐいっと飲んでいく。目の下のクマが消える。

「あれ?だるさが消えた。ポーションは飲んだことあるけど、何でだろう?ランス君、これ本当にローポーション?」

「スキルがないからローポーションしか作れないよ?ポーションが作れないと薬師ギルドには入れないから。作ったのはデールさんが鑑定しているからそっちに聞いてみて」

「そうね、いったときにでも聞いてみよう。それで何を調べていたの?もしかしてワイバーン?」

「い、いや、違うよ。ベアとかウルフとかを調べていたんだよ」

「それならいいんだけど。ワイバーンを単独討伐とかスキルのことをいって、あとは知らないで通すしかないわね。うちでは買い取り予算がないから持ってきてもダメよ?辺境伯様のところで買い取ってもらって。あっちはギルド規模が大きいからどうにかしてくれるはずよ」

「た、倒しに行かないよ」

「倒すのは止めないけど、買い取りは出来ないからね」

 爽やかにいうだけいって、受付の中に入っていってしまった。引きつけて辺境伯様の方に誘導できれば、いや、倒せるか考えていた。皮膚は裂けるはず。なら、あとは魔力量との戦い。生活魔法だけだから枯渇したことはない。肉や骨がどれだけの固さなのか、それがわからないのが不安だな。少しずつでも攻撃が通っていれば耐久線に持ち込んで、日数と辺境伯領への引きつけで倒してもらおう。そのために食べ物もたくさん用意してから行こう。干し肉とパンをリュックに詰めるだけ詰めて。鹿の肉は肉屋に行って売った。袋を洗って串焼きを詰められるだけ買い込む。よし、これで準備は万端。食料よし。早く帰りたいけど、1泊してから帰る。

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