第11話
あの後ダンジョンから学校へと帰ってきた俺達は、学校へ着くと直ぐ様帰りの支度が始まり、解散することになった。
そもそもダンジョン攻略をした後は、直ぐ様解散するというルールになっていたが、あの巨体な化け物の恐怖を未だ感じている生徒が多く、集中して授業が受けられる生徒が少なかったのだ。
この様子を重く見た学校からは、あの化け物の恐怖や不安を取り除く為に急遽三日間の休日が貰えるようになった。一人で活動が出来る時間が好きな俺にとって、三日間の休日を貰えたことは物凄く嬉しい。
ついでに、あの問題児との決闘が無くなる可能性も出てきた。彼奴のことだから、三日間も日にちが開けば決闘のことを忘れてる気がする。どうせ明日は学校に行かないから、彼奴がいくらやりたくても俺が何処にいるか分からない筈だから決闘は出来ないだろうし。どうか決闘のことは忘れていてくれ。
「……そういえば、改めて聞くけどノアって…お、おとーー」
「ーーちょっと静かにしようか。そのことは後で話してあげるからさ。」
おいおい、何を言おうとしたんだ?
ティアの言おうとした言葉を塞ぐ為、人差し指を伸ばしティアの唇に添える。咄嗟の判断で何やらチャラ男がしそうな俺にそぐわない行動を取ってしまったが、とりあえず止めることが出来たのでよしとする。俺が男であるような発言をここでされたら、
「…わ、分かった。だから…ちょっと、唇に指を添えるの止めて貰ってもいい?」
「え? あ、ごめん。」
目を潤ませ、少し紅くなった顔でこちらをじっと上目遣いで見つめるティア。何故紅いのかは分からないが、その目からは何かを必死に抑え込んでいるのが感じ取れる。何を抑え込んでいるのだろうか。
不満、ストレス、怒り…… ティアが抑え込んでいる物は読み取れないが、もしかして…俺に唇を触られるのは嫌だったのか?
男が少ない世界だから別にティアの唇を触ってもいいと心の隅で思っていたが、もしかしたら嫌なのかもしれない。今さっき水で洗った訳じゃないから、清潔とも言えないし、急に触られたりしたら俺も驚く。
これは謝らなければ。
俺も男ということで自信過剰になっていた。
「勝手に唇を指で触っちゃってごめん。」
「え?」
「勝手に唇触られて嫌だったよね? 優しくするから、ハンカチで唇拭いてもいい?」
「別に嫌じゃないから、大丈夫だよ? ……寧ろ、もっとやって欲しいです。」
「……ごめん。最後の方聞き取れなかった。もう一回言って貰ってもいい?」
「……寧ろ…もっとやって欲しいです。」
「ごめん。また聞き取れなかった。……もう一回いい?」
俺はティアの唇を触ってしまったことに謝ると、ティアは俺の予想とは違って怒っているようでは無かった。それじゃあ、さっきの何かを必死に抑え込んでいた目は何だったのだろうか。
消え入りそうに呟いたティアの言葉を聞き取れなかった俺は、もう一度言ってくれるように頼むも、今度もまたティアが消え入りそうな霧のように薄い声で呟いた為、またしても聞き取ることは出来なかった。
ティアの返答を聞こうと、もう一度ティアを横目で見てみると、ティアは何やら手で顔を塞ぎ込んで道の端で座り込んでいた。しかし、辛そうにはしていない。……いや、寧ろ辛そうなのか?
手に出来ていたほんの隙間からティアを覗き込むと、顔を紅潮させながら息を荒立てていた。
ティアの脈に合わせて聞こえてくるティアの荒淫とした声。
端から見ても分かる酷く淫靡な様子に、周りの女性達は下劣な物を見るような冷たい視線をティアに浴びせていた。
は?
何でそんな視線ティアに送ってるんだ?
散々下ネタを街中で呟きながら、寸暇を惜しんで男を探す憐れな女性達が蔑んだ視線をティアへ送っていることに腹が立つ。ティアに比べたらこの女性達の方が下品だし、低俗だ。
これが友達としての感情なのか、それ以外の感情なのかわからない。
ただ、俺自身驚く程に明確に怒りを持っていた。
ティアが低俗なこいつらに蔑まれるのが耐えられ無かった俺は、俺の着ていたドレスを破り、全体を震わせ快楽に溺れているティアを優しくお姫様だっこで拾い上げ、その上に優しく被せる。隠せば、嫌でもティアへと苛立たしい視線を向けることは出来ない。
幸い俺はドレスが破れた時の保険に薄いコートをドレスの下に着ているので、ドレスが破れてもそこまで問題はない。
一つ言うとすれば、
まぁ、さほど問題はない。
こうなった今、俺は人前で魔法を放つことに自制心を働かせることはなく、思うが儘に魔法を唱えた。
「
中二病精神が作り出した、酷く格好の付けた名前の魔法。
前世俺がこんな名前の付いた言葉を口ずさんでいたら、確実に友達から引かれていただろう。
しかし、その名に恥じぬ力をこの魔法は持っている。
ダンジョンのような魔力に溢れた空間では使えないが、それ以外の空間では魔力の限り使える、瞬間移動のような物だ。
俺はティアを離さないように力強く抱き締めると、超魔力出力濃度の魔方陣が足元へと現れ俺とティアを漆黒の闇で包み混む。何もない闇の中、体を何千を超える事象が過ぎ去る感覚。気が付いた時には、辺りに光が広がっていて、俺達は俺の家の前に居た。
「何も変なところはない?」
「………」
ドレスを被っているティアに尋ねるも、何も返事が帰ってこない。
ティアの状態を確認する為、被せていたドレスを取り外しティアを覗いてみると、沢山の魔力に包まれたせいか目を閉じて寝てしまっていた。魔力に包み込まれて、沢山の感覚を味わったことにより疲れたのだろう。……何やらまだ顔が紅潮し、何処か幸せそうににやけている気がするが多分気のせいだろう。寝ているというのに、そんな意識がある訳無い。
……にしても、やはり美少女の寝顔というのはいつまでも見てられそうだ。いや、ティアだからか?
心の中に浮かんだちょっとした疑問に首を傾げるも、とにかくティアを安全な場所で寝かせてやるのが先だと思い家の中へ入る。家の中へ入った途端、昼に帰るとは伝えていない筈なのに、とことこと可愛らしい足音がこっちへ迫ってきた。
「お兄ちゃんお帰りなさい!! お兄ちゃんが早く帰って来てくれて、ハル嬉しい。……でも、お兄ちゃんの抱えている女の人は誰?」
「……お兄ちゃんの友達だよ? 疲れて寝ちゃってるから、俺の部屋で寝かせてもいい?」
何処か、愛しのハルから不穏な空気を感じる。
もしかして、ハルの全く知らないティアが家の中に入ってきたのが嫌なのだろうか。
確かに、見ず知らずの人が家にやってきたら不信感を抱く。
ハルもその例に従って、見ず知らずのティアに不信感を抱いただけなのだろうか。
それとも何だ。俺がティアをお姫様だっこで抱えていることに嫉妬してるのか? そういえば、今までハルにはお姫様だっこをしたことがなかった。普通のだっこなら何百とあるけど。
ハルの不満を解決したいと思ったが、とりあえずティアを寝かせてあげたかった俺は、俺の部屋のベットの上に優しく乗せた。
ーーーーーーー
多分、次の話はティア視点の話になると思います。あまり女性視点の話書くの得意じゃないので、時間が掛かると思います。
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