僕と記憶と死 (5) (300字小説)
生暖かい風が頬に当たる。後ろでは子供達の声が聞こえる。僕はフェンスの前に立っていた。
ここにいる人はまさか今から僕が死のうと思っていることなんてわからないだろう。僕はフェンスを跨いだ。足の先は宙に浮いている。僕は空に向かって一歩踏み出した。
目覚めると、僕の目に白い壁が入った。どうして? 僕は死んだはずなのに。あぁ、ここは死後の世界かな。
「あ、起きられましたか。こんにちは。自分のお名前わかりますか?」
誰かに声をかけられた。その方を見ると看護服を着た男性が一人立っていた。……僕はどうしてここに……? ……僕の名前って……?
……僕は誰……?
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