ヒロイン不在の悪役令嬢は婚約破棄してワンコ系従者と逃亡する
柊 一葉/ビーズログ文庫
プロローグ 悪役令嬢、余りました
①
「やっとこの時が来たわ……!」
春の陽気が
メイドが
私、ヴィアラ・エメリ・マーカスは、ローゼリア王国の
スッと通った鼻筋に、何も
今、この手にあるのは報告書という名の『国立ローゼリア学園新入生
十六歳になると、高位の貴族令嬢や子息は
この中に私の運命を
「ククリカ、ククリカ……、あれ?」
私が探しているのは、ククリカ・ラリー
しかし――――
「待って。コレどういうこと!?」
どれほど探しても、お目当ての名前は見つからない。
「
まさかそんなことって……! そんなことがあるはずない。あっていいわけがない!
わなわなと
私は肺にたっぷり空気を吸い込み、心のままに
「いやぁぁぁ!!」
どんな物語にも
なのになぜ、ヒロインのククリカがいないの……!?
ここは、前世で私がハマりにハマった
なんと私は、小説の世界に転生した『悪役令嬢』なのだ。
ヴィアラはこの国の王子様・バロック
そこで、同じく学園に入学するヒロインと殿下が
その結果、ヴィアラは王家の
もちろん、そんな未来は絶対に
それに、前世では
前世では父の失業をきっかけに一家
だから今世こそは、
そのためには、入学してすぐにヒロインに
そうすると決めていたのに、なぜか名簿にヒロインの名前がない!!
私の
「お
「何があったんですか!? どうなさったんですか!?」
彼の手を
「どういうこと!? ヒロインの名前が名簿にないじゃない! なんで? どうして!?」
予想外の事態に、私の脳はフル回転で原作小説の内容を振り返る。
確かストーリーは王道だった。
主人公である貧しい男爵令嬢・ククリカが、学園で出会った俺様王子に
この小説の
お父さんが
「私がククリカを養ってあげる!」と何度そう思ったことか。
前世の私は家族の
俺様王子・バロック殿下は、
容姿と身分だけが
彼は学園でククリカに出会うと、その
ヴィアラがどんなにバロック殿下を愛していても、泣いて
現実的に考えると、「婚約者を捨てるなんて不誠実だ」という意見もあるだろう。
だが、ヒロインに出会った俺様王子が、改心して彼女一筋の
私も読者だったときは、なんの疑問もなくその展開を受け入れていた。
それに、バロック殿下がククリカに
ヴィアラは幼い
だが、恋愛感情を
成長と共に、ヴィアラの王子への
悪口を言って仲間はずれにするだけに
を着せようとしたり、階段どころかバルコニーから
あぁ、毒を盛るシーンもあったっけ。基本的に『ヒロインは見つけ
もっと他にやりようはなかったの……? いくらなんでも殺人
小説の中ならば「悪役ならそれくらいやっても不思議じゃない」って思えたけれど、いざ自分がヴィアラになってみるとそんな悪行を重ねるなんて許容できない。
そしてストーリー
その結果、見せしめのために国民の前に引きずり出され、あえなく処刑という流れだ。
しかも、ギロチン。ねぇ、恋愛メインの物語にそんな
絶望に
それなのに、いきなりヒロインが見つからないってこの展開は予想外なんですけれど!
「入学時点でククリカ・ラリーがいないって、どういうこと!?」
転生したことに気づいたのは十歳
今までは、ヒロインのことを考えると頭にモヤがかかったみたいだった。
まさか、思い出した
あまりに
「一体、何がいけなかったの? どこで
私だって、これまで何もやってこなかったわけではない。
運命は変えられると信じ、前世の
その時にはすでにバロック殿下と婚約してしまっていたので、まずは婚約解消を
ところが、王家と結んだこの婚約は「
パワーバランスは、王家を頂点として
そもそもこの婚約は、「うちの子ちょっとおバカだからしっかりした婚約者を」と
それに、娘を愛する父と
バロック殿下は、子どもの頃なら大きな態度も生意気な口調もまだ可愛いと思えた。
『母上が決めた相手だから、仕方なく
そんなことを言っていたお子様は、まったく更生しないまま十六歳になった。
剣や魔法の
たくさんのご令嬢を
をかける始末。パーティーで会うと、「おまえもこの輪に入りたいのか? そうだろう」という目を向けてくる。
ヒロインに出会って改心するはずだけれど、今のところはなんとも残念な仕上がりだ。
こんな王子と
と、なれば。殿下と婚約解消できていない今、心機一転して小説のスタート時点からがんばって、私の運命を変えよう。
そう気合を入れ直して、入学後はヒロインと王子の出会いを演出し、二人のハッピーエンドまでしっかりお
「なんでいないの!? ククリカがいなきゃ、殿下をもらってくれる人がいないじゃない!」
一体誰が殿下を更生させるの!?
だいたい、ヒロインがいなきゃ私ってなんなの!? 悪役令嬢、余っちゃった!
「ううっ……! 嫌、あんな王子と結婚したくない」
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