外伝 『隅々まで』個性的
――『罪の牢獄』 コアルーム
ウチにはダンジョン外での戦闘は多くはないが、『大罪』持ちや、ルジストルに負けず劣らずの個性的な面々がいてくれる。
個人的に……そんな面白い面々の中でも、実は隠れ面白タイプなのが目の前に突然出現したゼブルボックスだ。
ダンジョンのどこかしらの階層にランダム出現して、その豪勢な外見に騙された冒険者たちに、夢いっぱいの毒蠅をプレゼントすることで有名なミミック界のプリンセス。
ポラールやイデア、ハクがいるときは大人しいが、実は悪戯好きで最近やりたい放題やってくるので、実は心臓に悪い。
これだからランダム出現ってのは好きになれないもんだ。冒険者だったらやってられない。
しかも、会話ができないので意思疎通が意外と難しく、戦闘の時はテキパキなのだが日常会話だと反応してくれない時もあり困らされる。
リトスと最高に相性が良いように見えて、ゼブルの毒蠅をリトスの蠅が一瞬で喰らい尽くしてしまうことが多いので、相性悪いのが悲しい。リトスの空腹状態に寄るので満腹時にコンビを組ませたい。
「そして俺の癒しであるモフモフ」
黙って俺にモフられるフェルとアセナの最高モフモフコンビ、気付けば寝てるので起こさないように立ち去るのに苦労するが、このモフモフ感はやめられない。
この2匹コンビは俺の気になるプレイヤーや冒険者を偵察に行くときや、外に散歩するときに頼りになる最高の番犬たちだ。
無口でクールなシンラとウロボロスに憧れてしまったのか、あまり声を出さなくなってしまった。
可能ならば可愛い鳴き声なので、バビロンやルジストル並みによく声をだすほうに憧れてくれて良かったのに……。
アセナは高速近接戦闘型だが、『霧散化』によって即離脱が出来るのってのもあって、かなりのヒットアンドアウェイスタイル。霧ごと薙ぎ払うような超広範囲スキルには弱いが、相手を攪乱させるのも上手いので本当に上手い聖獣だ。
「改めてフェルの『災禍』は壊れだと思うんだよなぁ」
クールキャラを目指してしまっているキャラだが、戦闘スタイルはクールどころから暴れん坊の荒らし屋さんであり、『災禍』と言う唯一無二の状態異常付与能力を持っており、敵にデバフと拘束スキルを放ちながらも近接攻撃で仕留める戦い方は恐ろしい強さである。
本当は獣系統の魔物軍団を形成することができれば、フェンリルをリーダーに地上戦を機動力で制圧できそうな部隊が出来たはずだが、『大罪』のくそったれな制限のせいでやらしてあげられない。
イデアやデザイアやの創造魔物たちは系統が変わってしまうし、基本的にイデアとデザイアの指示に従うので、咄嗟の方向転換についていけないので却下されたのだ。
「頼むからウロボロスとシンラに憧れて無口クールにならないでくれ~」
「「ハゥ~ン」」
「……背中がデカすぎたか」
淡々と仕事をこなしつつ、何事にも動じず勝負強いウロボロスとシンラに憧れてしまうのは仕方ないのだが、あまりにも大人しすぎる狼ってのも可愛げあるんだけど……少しくらいヤンチャさが欲しいよ……。
『罪の牢獄』ではクールで静かめタイプと、よくしゃべっていつでも元気いっぱいな2つのタイプが大半なので、もう少し色んなキャラがいても良いんじゃないかと思うんだが、この性格の傾向も偶然じゃなくても決められた何かなのかもしれない。
「魔物たちの性格は主の影響を受けて生まれてきたりするのかな?」
「「クゥゥ~ン」」
凄い今更ながらの考えを2匹を撫でながら思い返してみる。
今まで性格どうのこうの気にしたことがなかったので、何か面白い発見があったところで今までのやり方を変えるつもりは無いのだが、ウチの面々を見てみると同じようなタイプしかいない気がする。
人間は一緒にいればいるほど性格も似てくるなんて聞いたことがあるが、魔物も同じような説があるのかもしれない。
ウロボロスとシンラに関しては本当に無口クール系であり、必殺仕事人なので俺も魔物だったら憧れていたんだろうか?
「筋肉タイプに見えて立ち回り系のマスティマとグレモリーは割と五右衛門やガラクシアよりだな」
どのレンジでも戦えてタンクとしての役割もできるマスティマと、ガラクシアと似たような戦法で戦える相性バッチリコンビのマスティマ&グレモリーは、どちらかと言えば五右衛門やガラクシアのような元気型だ。
マスティマは元気な後輩系として可愛がられており、なんだか盛り上げ役みたいなこともやってくれているので、どこかしらで労わってやりたい。
そんなことを考えていると、そういえばウチにはもっと個性的な魔物がいることを思い出す。
「アマツが1番個性的な気がしてきたぞ」
概念系スキルと銃機器の2種しかスキルがないが、優秀なアビリティをもったゴーレム。俺も理解するのに頭を悩ませるレベルで面白いスキルである『
みんな俺の知らぬ間に好き勝手やっているのはいいんだが、魔物ってのは自由過ぎて予想を超えてくるのが一々驚いてしまうので、平穏に暮らさせてほしい。
「ゼブルとアマツって……そんな上手にコミュニケーションとれるのか?」
「……」
「……世の中不思議なもんだな」
ゼブルに語り掛けてみるも特に返答はなく、アマツとゼブルがひっそり悪戯を仕掛けていることを少し面白いなと思いながら、『罪の牢獄』にいる面々は本当に個性的で楽しいもんだなと思う今日この頃であった。
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