第4話 『探究者』訪問
元勇者である本橋恭弥との密談も終わり、四大学園の生徒たちがアークに来てくれてから3日が経過した。
ダンジョンにも攻略しに来たが、イブリースに勝利したところで、ルーク君以外の生徒たちが疲れてしまったようで、そのままアークに帰還してくれたので助かったと言うべきか、もう少し見てみたかったと言うべきか…。
そして本来の目的でもある職業研修では、『ルーク』『シェイラ』『ナッシュ』は冒険者として「紅蓮の蝶々」と共に行動してもらって、色々学んでもらっている。一応Sランクパーティーだし、レディッシュはAランク冒険者でもあるので勉強になるだろう。
『パティ』は医療系の仕事をやってみたいと言っていたので、街の病院に勤務してもらったり、冒険者専属の医者を見て貰ったりとしている。どちらが好きかは、もう少し後で決めてもらおう。
『キャンディス』はアークでやっている農業、そして出来上がる農作物に大変興味を持ってくれたようで、そちらのほうの体験をしてもらっている。下手したらダンジョン攻略者よりも稼げる可能性がある仕事と聞いて、興味大有りだったようだ。
エルフからすれば、レーラズが創り出した神秘の自然たちは心地が良いだろう。
「元勇者は頑張って稼いでくれているな」
元勇者は相棒を連れて、冒険者ギルドで依頼を受けて、大森林の魔物を討伐しまくって稼いでいる様だ。
ちなみに『破滅の予言』以外にも『
そして何者か不明だったエルという子は、元は人間だったけど、何やら精霊の核やら色んな物を混ぜられた存在のようで補助魔法や『
「学生5人は欲しい存在だな……ルジストルの負担を減らせる存在は欲しすぎる」
やはり元『
17歳という若さでは考えられないほどの冷静さと対応力、そして視野の広さと機転の利かせ方が素晴らしい。『
これで7人の中で1番下っ端だったということが『
ウロボロスが『罪の牢獄』の中でもトップクラスの便利屋さんになっているように、この世界での転移能力の強さは恐ろしいものがある。
他の4人もとても優秀かつ人として良い子たちなので、ぜひとも学園を卒業したらアークに来て欲しい。
4人が卒業するころにはさらにアークを魅力的な街にしなくちゃいけないな。
「やっぱり街が大きくなると繋がりも広くなるもんだな」
まだ1年も経っていないけど、アークが広くなることで色々世界が広がっていくことを実感させられて、1人で感嘆しながら若い人間の動きをモニターで確認していた。
若さと好奇心とは大変素晴らしいもんだな。
◇
――迷宮都市アーク 商業区域 とある宿
四大学園から迷宮都市アークへと研修に来ているルークたち5人と、5人の護衛をしながら、裏では予言を覆すために活動している元勇者である恭弥とエル、彼らはアークに来てから3日目の活動を終えていた。
宿で夕食を食べながら1日の感想や発見について話し合う。
アークに対しての印象は全員が良く、他の街とは違ったルールがあるが、それもあらゆる種族を大事にするというものであり、ルークやキャンディス、パティなんかは素晴らしいと感じるようなものであった。
ルーク以外は疲労もあり、先に寝てしまったようで、宿の休憩所にはルークにカノン、それからアルバスが談話していた。
「待たせたな」
「忙しくてね~、ごめんごめん!」
「聞きたいことがたくさんあるよ」
ルークは自分の恩人でもある2人、そして『
少しアルバスがキョロキョロしているのが気になるルークだったが、待ちきれないといった感じで2人の顔を見る。
「まずは……私の呪いのことかな?」
「団長が『
「元団長だから、普通にカノンでいいよ♪ 『
「ソラならともかく、ルークは大丈夫だろう」
ルーク自身も恩人2人から内緒にしてほしいと言われたことを周囲に漏らすようなことはしないと誓って言えるので、しっかりと覚悟を決めてカノンに対して頷く。
カノンとアルバスもルークのことを信頼しており、しっかり覚悟を決めてくれたのを確認して、カノンは再び話を続ける。
「2つの症状によって、凄い勢いで記憶がなくなったり、日常生活を送るのも難しくなってきた中で、アルバスがここの魔王さんが『どんなものでも治す果物』を育てているって噂を聞いて、アークにやってきたんだ」
「……それで果物を貰う代わりに、2人の拠点をここにして、色々働きながら暮らしていると?」
「さすが話が速いね! 相変わらず大人だ♪」
「この街を見ればわかるように、少し人間に近い魔王で助かった。真に平和を願う魔王だ」
「どこから突っ込めばいいか分からないぞ……」
さすがのルークも困惑していた。
自分たちが昔、人々から平和を取り戻すために戦っていた魔王に2人はお願いして助けてもらう。その引き換えにここの街で働くことを約束する。
確かにこの街は変わっている。ルークから見れば良い意味で変わっているように感じていたので良かったが。2人が良いように使われているのが少し納得がいかなかった。
「俺たちが昔挑んだ『母なる大地』よりもヤバいダンジョンだ。挑むのはやめたほうがいい」
「う、うそだろ? EX認定されてないよ?」
「知名度が上がれば時間の問題だ」
「だからソラちゃんも挑んじゃダメだよ?」
「は? ソラ?」
――ピンッ!
「痛ったい!」
アルバスがポケットからコインを取り出して、部屋の隅に勢いよく弾くと、何かに直撃し、そこから可愛らしい声とともに1人の少女が姿を現す。
彼女も元『
彼女はソロで各地のダンジョンだったりユニークモンスターを撃破して生計を立てながら、色んな猛者に戦いを挑んで最強のスキル開発のために各地を飛び回っている冒険者だ。
「最初から普通に入ってこればよかったのに♪」
「だって2人が洗脳でもされてたら面倒でしょ!」
「おぉ……大人な感想だな」
「煩いわよ! アンタとは3カ月しか生まれた日変わらないじゃない!」
「時間を考えろ、煩いぞソラ」
「アルバスもコイン飛ばすことないじゃん!」
「呼ぶだけだと逃げるつもりだっただろ?」
「ぐぬぬ……」
2人がもしかしたら誰かに何かをされているかもしれないと考えて、透明になって姿を消していたが、残念なことに見つかってしまったソラは素直に白状する。今日の夕方にアークについて、そこからルークの後をつけていたと。
ルークは怒りたくなったが、ソラなりの護衛のつもりだったのもあって、何も言わなかった。
「あん時ぶりだな。今度はどこで遊んでたんだ?」
「遊んでないわよ。新しい勇者の話を聞いたから見に行ってたのよ」
ライトブラウンの長いツインテールを揺らしながら、慎ましい胸を張るソラ。
見るからに旅をしていると言うような軽装の彼女だが、『
メモ用紙とペンを能力で何度でも作り出し、そのペンで見たり感じた能力についてをメモ用紙に書いていくと、自分なりの形に変えて習得できてしまうという能力、もちろんある程度の正解を何個か書かなければいけないというルールはあるが、他者のスキルを自分なりに覚えられるという唯一無二の力の持ち主なのだ。
「せっかくだから散歩しながら話しよーよ!」
「久々に4人も集まったし、行こっか♪」
「やったー!」
相変わらずのソラとカノンの元気さに、懐かしさを覚えながらも提案を断り切れず、ソラのお願い通りに4人は夜の街へと踏み出していく。
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