第17話 世界は『広い』


――『罪の牢獄』 居住区 食堂



 カノンとアルバスが『罪の牢獄』に来てから早くも3日が経過した。


 カノンは1週間かかると言われていたが、レーラズとリトスが、果樹園に居られるのが少し嫌になったのか、少し本気を出したようで、ほぼ完治してしまった。


 アルバスは泣きそうなほど感謝しており、カノンは元気が爆発してしまっているので、万全ということで話を聞こうかなっていうことになった。



「おかげ様でスッキリしました! 全部思い出せました! 本当にありがとう魔王さん!」


「その元気をアークに今後還元してくれ。2人でのんびり出来そうな家は用意しといたから」


「何から何まで世話になるな」


「とりあえずアークを帝都の次に人気な街にして恩を返してくれ」


「毎日笛吹くね!」



 笛を吹けばアークが人気になる理論はよく理解ができないが…。

 カノンは色々と思い出したようで、少し情報を整理するのに戸惑っているらしいが、早く夢であったのんびりと角笛演奏をして暮らしていきたいようで、俺が来るまでは練習していた。


 ちなみにカノンが使用している『幸福と絶望おいでませギャラルホルン』はこの世の全ての武具の中でもレアらしくて、この角笛を使って戦うのがカノンの戦い方らしくて、スキルを使用すれば何でも出来てしまうそうだ。

 俺が聴いた時は単純に上手って感想だけど、まさか角笛で戦うなんて誰が思っただろうか…。


 ちなみにアルバスよりも強いらしい。あの水を操る能力よりも強い角笛って何??



「人間界について聞きたいことがたくさんある」


「人が滅ぶ方向性でなければ協力するさ」


「アークを見て、俺がそんなことを思うように見えるなら心外だな」


「面白い魔王さんだね! 何から聞きたんですか?」



 何からと言われれば少し悩んでしまうけれど、やっぱり2人に聞きたいのは、この世に存在している強い冒険者。

 ランクEX認定されている人間についてだ。ギルドにもいくつか情報があったが、今後敵対するかの可能性も含めて聞いておきたい。



「他のEX認定者を教えて欲しい。ダンジョン襲撃されると面倒だからな」


「ランクEX認定されてるのは、厳密に言うと冒険者だけじゃないんだ! 聖国騎士団と他一部以外の人が指定された条件をクリアしたら勝手に認定されるんだよ! 聖国騎士団と王国騎士団の一部はランクを付けられることを嫌がっているんだってさ!」


「冒険者だけじゃないってことか」


「あぁ……今のところ冒険者は元『七人の探究者セプテュブルシーカー』だけだ。他はどこかしらに所属しているが冒険者じゃない」



 そこまで名が広まるような活動を常にしている訳じゃ全然ないけれども、条件をクリアしたら自動的に認定されるどうだから、あまり本人たちも気にしていないようだ。

 冒険者ギルドから二つ名を勝手に貰うのだが、本人たちがそれをあんまり気にしないので広まらないそうだ。


 まずは最強の冒険者『七人の探究者セプテュブルシーカー』。

 リーダーである『白銀の蒼穹、虹の笛ヘイムダル・カノン』、副リーダーの『天海を揺らす者エノシガイオス・アルバス』。


 そして今は世界中で現れた遺跡を調べているパーティーの知識箱かつ、重力魔導っていう極めて珍しいスキルの持ち主の男『定まらない者・ガーランド』。


 公国にある子どもを保護する施設で働いている女性。世界最強の召喚魔導の使い手でもあり、究極のビンタマシーンと呼ばれている『大魔神・ツバキ』


 のんびりと世界旅行をしながら、危険な魔物を討伐している男。あらゆる武器を使いこなす、無限の武器系統スキルの使い手『駆け巡れ戦魂アローロ・アレス・メ―デス』。


 好奇心の塊。色んなスキルを勉強して世界最強のスキル作成を目指している。面白そうな噂があればどこにでも飛んでいき、現在も真面目に冒険者をしている『未知の探究者・ソラ』。


 これが『七人の探究者セプテュブルシーカー』のEXランクで、もう一人はのSSランクの人間は今、『四大学園』で色々楽しんでいるようだ。この人はEXになるには遠いとのこと。



「それにしても良く、そんな凄いメンバーが集まったな」


「本当に奇跡だよね! 元は私一人で旅をしてたんだけどね」


「運が良かったものだ」



 10人しかいないのを考えると笑えるような確率の話になるが、そういうことがあるから冒険者は面白いのかもしれない。もちろんカノンたちが集まったのは偶然じゃなくて誰かしらに仕込まれていた可能性があって、まだ何か計画されているのかもしれないけど…。

 いつかフォルカで世界旅なんて面白いのかもな。


 他のEXは4人の賢者でもある。王国にいる『時詠みの賢者バロン』。


 桜火の国にいる最強の傭兵だが投獄されている『無刃羅刹・天良天外』。


 帝国アルカナ騎士団第1師団団長『世界ザ・ワールド・フェルナンド』。


 聖国の英雄。最強の聖女でもある『聖女・セシリア』。


 この4人で全10名のEX認定を受けた者たちだそうだ。

 アルカナ騎士にいたのを事前に知っておいてよかった。

 アルバスも本気でなくともあんだけ出来るんだから、EX認定を受けた人間は化け物ってことを覚えておこう。


 ちなみに『七人の探究者セプテュブルシーカー』はもう集まる予定が基本的にはないが、『八虐のユートピア』関連だと行かなくては行けないとのことなので、そこは許可しておいた。



「『八虐のユートピア』か。2人がアークにいる限り、手を出してくるなら俺から先に仕留めるのもいいかもしれないな」


「これがなかなか見つからないんだよ!」


「俺の配下はとんでもなく優秀だから大丈夫だ。個別で動かせてもらうさ」



 アークの平和はダンジョンが襲撃されている以外のことでは何よりも大事なことだ。

 そんなところにカノンに隙をつけるし、何やら悪さを企んでいるような連中に好きにされるなんて許せんからな。

 見つけ次第撃滅しなくちゃいけないな。



「四大学園の若者にも注目して手な。アークの街を支えてくれる人材が欲しいんだ」


「私、卒業生だよっ!!」


「おぉ、それは心強いな」


「私はいつでも歓迎されてるから、今度一緒に行こうよ!」


「魔王連れてくって正気か……まぁ方法はあるから頼もうかな」



 そりゃEX認定された世界最強冒険者パーティーのリーダーだから、いつでも歓迎だろうし、後輩たちに話をしてほしいんだろうな。

 それにカノンに憧れてアークに来てくれる可能性を考えたら、急に夢が広がるな。

 ルジストルとリーナの負担を軽くする人材を見つけられそうだし、誘えそうだ。



「可愛い子いっぱいいるよ!」


「人間の外見には興味ないな……アークにとって有益になれるような可愛さなら歓迎するが……。」


「学園でアークを拠点に冒険を始める若い連中を誘うのはどうだ? それなりの条件や支援を約束すれば魅力的なはずだ」


「頭いいじゃないかアルバス」



 確かに学園には卒業後、冒険者として活動をしていこうと思っているパーティーがたくさんいると聞いたから、もしかしたら特別に支援を少し見せつければ寄ってくるかもしれないな。

 「紅蓮の蝶々」と『夢幻の星ドリームスター』、それにアルバスとカノンがいるんだ。確実に先輩環境は素晴らしいものがあるだろうから、残りはアークとしてどれだけルーキーを支援出来るかどうかってことか。


 考えると果てしないことだが、カノンとアルバスがいるだけで、アークとしての街発展の可能性が無限に広がってくる。


 帝国領土南は自由に出来るようになったので、帝都を見学させてもらって、出来れば帝国で活動するのに自由な立場になったら四大学園にカノンとアルバスを連れて行くのを目標にしてみようかな。

 まずは帝都に行くことだな。そして他の魔王について学んだり、帝国にいる冒険者について学ばせてもらうとしようかな。


 そんな話して、まったりとした時間を終えていった。








――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム



「ついに来たか」



 アイシャからのメッセージで、勇者4人がラムザさんのダンジョンである『絢爛の天空城』に侵入したとの報告が来ている。

 そしてラムザさんのところへコア転移が出来なくなっている。勇者の戦いを探りたいが現地に行かなくてはいけない。行きたいところだが、公国に冒険者に今、目を付けられても厄介なため、ここはどうなるかの結果待ちをすることにする。やはり勇者が出向いている旅なので四大国が邪魔されるのを、さらに警戒して防備を強化しているようだ。


 ラムザさんが勝てばさすがってことになるし、勇者4人がラムザさんを討伐したら『坂神雫』についての警戒をさらに高めなければいけない。


 魔王を崇拝させるような勇者だから、どんな手段でラムザさんに勝つか分からないからな。


 勇者が勝てば暁蓮に仕込んだ種が役に立つ。


 どっちが勝っても大丈夫なようにはしてある。種を仕込んだ分、今後やりやすいのは勇者が勝つことだが、見守ることにしよう。


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