第15話 『海』を歩く者の実力
――『罪の牢獄』 居住区 食堂
元『
『
これで俺だけではどうしても時間がかかってしまうダンジョン知名度をあげることでダンジョンランクを上げる術を手に入れることができた。
カノンは1週間レーラズの元で療養することで呪いを完治させるとのことなので、少し暇そうにしているアルバスに色々話をしてもらうことにした。
『
そして面白いのが『
魔王のランクは冒険者には分からないと思うが、EXランクの配下がいたと言うことは、クラウスさんたちが言っていた討伐されてしまった魔王か。
ちなみにアルバスは過去の勇者とも面識があるらしく、喧嘩を売ってきた勇者をボコボコにした過去までお持ちのようだ。見た目と性格に反して恐ろしい奴だ。
「あまり人間界の話に詳しくなくてさ、どんなダンジョンだったんだ? その強いやつがいたとこは」
「ダンジョン名は『母なる大地』。生息していた魔物は『巨人』に関するような魔物だった。魔王の名は『魔王マキア』という大男だったな。」
「名前からして……『巨人』だったり『大巨人』とか、そんな感じの魔名かな?」
「ソウイチの魔物たちほどでは無かったがな」
「さすがに気付くか?」
「あぁ……あからさまにAランクのダンジョンに生息しているレベルではない」
やっぱりレーラズにリトス、迎えに来てくれたポラールが見られているので、今度また紹介してもいいかもしれない。
それにしても『
10人しかいないEXランクが当時は4人で、今はそのうちの2人がさらにEX認定されているので現在では7人中6人が揃っていたパーティーってどんな奇跡だよ。
「魔王マキアが言っていたが、『母なる大地』の最奥にいた魔物が『
「デカすぎるだろ」
アイシャの魔王戦争時に出された「戦争壊し」の倍くらいの大きさのある巨人に人間が勝利できるってのは、いかに戦法や能力が優れていたかということだ。
デカすぎるって反応したけど、よく考えればウチにはウロボロス様がいらっしゃったな。
ちなみに当時リーダーだったカノンと副リーダーのアルバスは後衛だったようで、前衛メンバーが頑張ってくれたとのことだ。
『
「まぁカノンが治ったら、盛大に宣伝するために、元お仲間をぜひアークに呼んでくれ」
「検討させてもらう」
「うちの魔物とも戦ってみるか?」
「それが雇い主からの要望なら応えるとしよう」
けっこう嫌そうな顔されたが、仕事なら仕方がないって感じで応じてくれた。
勢いで言ったがどうしようかな?
アルバス的にも戦力分析というか挨拶程度だと考えているだろうが、みんな呼んで盛り上がってもらうことにしようかな。
◇
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 闘技場
『
本人もみんなが言うなら頑張ろうかなっていう意気込みだ。
もちろん殺したり、大ケガさせるのはやめておいてくれと言ってある。復活させれるけれど、条件もあるので使わせたくない。
ちなみにリトスにレーラズ、ハクにデザイアとシンラ以外は闘技場に来て観戦している。ウロボロスだけ裂け目からチラ見になるけどな。
アルバスは客席にもいる魔物を見て呆れていた。さすがに実力を見る力があるな。
そして闘技場の真ん中で向き合う、アルバスとシャンカラ。
さすがにどっちも自然体だ。アルバスはポッケに手を突っ込んで脱力状態。シャンカラは優しく微笑みながら姿勢よく立っている。
「シャンカラは先手を譲っていたけど、アルバスが何をするか見物だな」
「この前の勇者より全然強いよ……なんで彼が勇者じゃないんだろうね?」
イデアが呆れている。
能力を視たんだろう。勇者の数倍っていうのはアルバスが凄いのか、勇者が弱いのか分からんな。
ちなみに阿修羅の見立てだと暁蓮よりも手練れに感じるそうだ。
シャンカラの準備運動には良いかもしれないな!
◇
短い期間で多くの高難易度ダンジョンやユニークモンスターを討伐した、歴史上唯一のEXランクの冒険者パーティー『
カノンとアルバス2人で旅をしていたら、どんどん増えて気付けば7人になっていたという面白い経歴のある集団だ。
当時でもEXという、普通では測り切れないということで決められた特別なランクを付けられた人物が解散時には4人も在籍するという今後も現れないであろう偉業。
7人がそれぞれ違う目標を掲げながら、ついに到達したのが、当時最高峰と呼ばれていた6つのダンジョンの1つである『母なる大地』の完全制覇。
それまで認定されていた魔物が存在するという噂はあったが、今も認定されている魔物が少ないEXランクの魔物。
最高峰のダンジョンにしか生息しないと認定されていた魔物の人類史上初討伐にも成功した7人。
しかしその後、不意をつかれてしまい、リーダーだったカノンが呪いを受けてしまう。それを機に『
『
(あの時の『
アルバスの人生で、もちろん最大の難関であった『
このダンジョンには、見ただけでそれを思い出してしまうような魔物が何体もいるのだ。
アルバスはこのダンジョンを出来たばかりのAランクと話を聞いていたが、聞き間違いだったのではないかと疑ってしまう状況だ。
そして目の前で微笑んでいる少年魔物を前に、アルバスは久しぶりに汗が止まらなかった。
「お先にどうぞ」
「……お言葉に甘えよう」
さすがにアルバスも目の前にいる魔物より自分が強いなどと言う自惚れは抱いていなかった。
まるで隙など見当たらないシャンカラに冷や汗が噴き出る。
ただ立っているだけで膝から崩れ落ちそうになる圧力が放っている魔物。
アルバスはポッケに手を入れて、肩の力を抜いて気持ちを切り替えた。
アルバスだって修羅場はいくらでも潜り抜けてきたし、余裕が無くなるような戦いは嫌いではないのだ。
そしてアルバスは自分を象徴するようなスキルを発動した。
「『
――ゴゴゴゴボボッ! ザバァァァンッ!
アルバスの足下から溢れ出る大量の水。
広い闘技場を一瞬にして湖にしてしまう量の水がシャンカラを襲う。
アルバスが戦いのスタート同時に使用するスキル『
広大な平地でなけば使用するだけで周囲を湖に変えてしまうという、なんとも迷惑な技だが、環境を激変させてしまうほどのスキルで、発動しただけで普通の魔物なら波に圧し潰されてしまうようなものだ。
しかしシャンカラは抵抗することなく迫りくる水に身を任せるように飲み込まれる。
アルバスは水の上を立てるようで、水位があがっていくにつれてアルバスの視界も上がって行く。
「平然としないで欲しいんだがな」
アルバスの視線の先には、激流に飲まれたはずのシャンカラが自分と同じように水の上を立っている姿だった。
激流に飲まれたのを目視しているのに一切濡れてすらいない姿にアルバスは失笑してしまう。
「『
鞭のようにうねる8本の水流がシャンカラを囲うようにして出現し、そのまま襲い掛かる。
牽制技としてアルバスがよく使用するのが『
熱を感知して自在にうねる水流の鞭で相手を動きを見るのが目的だ。
――ズゴォォォォォンッ!
襲い掛かる8本の水流を踊るようにして躱していくシャンカラ。
必要以上に動くことなく、最小限で確実に回避していくシャンカラを見て、さらに冷や汗が出てくるアルバス。
だが追撃の手を止めるわけにはいかなかった。
「『
――ギャオォォォォッ!!
アルバスの背後から出てくる6体の巨大な水龍。
勢いよく咆哮をあげながら、シャンカラを飲み込もうと襲い掛かる。
鋼鉄だろうと圧し潰す水龍の顎だが、アルバスはシャンカラがどう躱すかだけに注目していた。
戦闘前と変わらぬ微笑みを続けているシャンカラは、この状況でも微笑みを絶やすことなく、小さく囁く。
「『
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