エピローグ 帝国南『制圧完了』
『大罪』vs『海賊』が魔王界に魅せた。たった5分足らずの魔王戦争。
それは魔王界を大いに震撼させるには十分すぎるほどの5分間であった。
Gランクしか呼べないという絶対的不利な縛りがありながら、圧倒的な力を見せつけたソウイチに対して、どうにかして取り入ろうとする者、どうにかして叩けないかと画策する魔王など様々な動きが魔王界内で巻き起こる。
果てしなく広い海を一瞬で氷河に変えた魔物は何者だ? SSランクであんなことが出来る魔物がいるのか? それにどうやってSSランクを手に入れたんだ?
ソウイチが誇る3体の魔物に関する考察は大いに盛り上がった。
しかし……誰一人として結論に辿り着くものはおらず。
たった数分の出来事で多くの魔王がソウイチに向ける感情はひっくり返ってしまった。
戦争から1日経過したあとも、その盛り上がりは終わることを知らない。
しかし、戦争終了後から2日目を迎えようとしていた時。
またしても魔王界に激震が起こる。
『海賊』がやられたことでソウイチに対して、『海賊』の同盟として復讐すると公言した3人の魔王がソウイチの手によって消滅させられたというニュースだ。
その情報はソウイチより発信されており、「誰だろうと死ぬつもりはありません。覚悟してください」という決意硬く、震えあがるようなメッセージとともに発信されたのだ。
戦争終了から僅か1日足らずで、自身を狙う3人の魔王を見つけて消し去ることの出来る行動力と戦力に対して、魔王界を騒がせていたソウイチを討ち取ってやろう議論と騒いでいたものは一瞬にして黙ってしまい、急いで姿を隠してしまった。
魔王界はルーキーが魅せた。
たった4分間の出来事で大きく戦力図が変わろうとしていた。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
無事戦争に勝利し『海賊』の魔名を手に入れることが出来た。
そして念願の帝国領土南で自由に動けるようになった。
そこまでは良かったんだが、戦争終了後から『海賊』の同盟らしき3人の魔王が俺のことを、すぐにでも討ち取って復讐するなんて言うから、さすがに俺も黙ってられなかったし、それを聞いていた『
『毒蛸』『水霊』『錆』の魔王3人が喧嘩を売っていたことは自分たちで公言してきたので、意外と探すのには苦労しなかった。
『毒蛸』のところには「阿修羅」が行ってくれて、阿修羅がストレス発散と言わんばかりに完封してきたようだ。ソロで強い能力ヤバすぎ!
『水霊』のところには「ガラクシア」「メル」「イデア」が向かってくれて、3人仲良くダンジョンに魔法や魔導を打ちまくって、物理的にダンジョンを崩壊させて気付いた時にはコアが消滅していたそうなので、気を付けるようにと注意しておいた。
『錆』のところには「ポラール」「五右衛門」「バビロン」が向かって、3人で誰が1番最初に魔王を見つけて倒せるか競争をしたようで、さすがにポラールが貫録勝ちの結果だったようで五右衛門とバビロンが悔しがっていたので慰めおいた。
「これで表立って挑んで来る奴らはいなくなったかな?」
さすがに戦争から3日経過して落ち着いたような気がする。
アイシャとピケルさんにはメッセージで軽く説明をしておいたので大丈夫だろう。
アークに不審な者が入った報告も無いし、とりあえずは平和な時期を過ごすことが出来そうだな。
「帝国領土南は実質、俺とピケルさんが制した状況になったな」
俺が3つのダンジョンを消したことにより、『大罪』『魔像』『霧』『酸雪』の4つのダンジョンしか無くなった。
さらに人気の無くなりそうな気もするが、その分アークをよりよい街にして人を集めれば良い。
帝都に近いピケルさんの街をある程度自由に行き来させてもらうことが許されているので、より濃い情報が得られている。
「やっぱ中央に近いと情報の量と質が段違いだな」
特に中央に近ければ近いほどプレイヤーの情報はどんどん入ってくる。
それに帝国の動きってやつも知ることが出来る。4大国は仲良くないとは思っていたけど、各々が裏でやり合っている状況が続いており、最近では騎士団同士のぶつかり合いがチラホラ出てきたらしい。戦争の臭いがする。
人間同士の戦争に興味なんて無いけど、噂では国から魔王に内緒の協力要請みたいなことがあるとピケルさんから聞いた。
ピケルさんは防衛型ゴーレムを帝都に出しているので、その繋がりで遠回しに声をかけられたことがあるらしい。
そうなってくると無視するわけにはいかない。
どの戦争に誰が関わっているかってのを気にしなくちゃいけなくなるのは正直言って怠い話だ。
「とりあえず勇者の魔王討伐対象発表まで、ゆっくり休みたいんだけどな」
ハクとリトスが昼寝しているので、俺に独り言には誰も反応してくれない。
ダンジョンの方は順調だ。
イブリースはすでに多くの冒険者に越えられる存在になってしまった。
1度やられると攻略法が見出されてしまうのである。
まぁこっちとしてはメルの極小細胞から作ってもらってるから、実質負担が0なのでDEが貯まるだけなのでありがたい話だ。
ゆったりとした時間を過ごしているとルジストルとリーナが互いに1つずつの封筒を持ちながら、こんな時間にコアルームに訪れる。
「嫌な予感しかしないぞ」
「閣下、どちらの内容からご確認なされますか?」
くっそ!
ルジストルがなんだか意味ありげな顔して微笑んでやがる!
確実に忙しくなる仕事からくるストレスを俺で発散しようと思ってやがるな!
「リーナからで」
「…はい。フォルカ宛にアルカナ騎士団第2師団団長ミネルヴァ様からお手紙が来ております」
「……内容は?」
「『王国との関係がどんどん悪化してきて、そう遠くない内に戦争になりそう。フォルカ君は魔王様と知り合いらしいから、私が力を貸してと頼んでいると伝えておいて、それと魔王様に元気かな? と聞いておいてね』だそうです」
「舐めやがってと言いたいところだが、真面目にしないと面倒なことになりそうだな。ルジストルのほうは?」
まさかのミネルヴァから個人的な戦争への助力の誘い。
これは帝都への恩を売る行為として考えるかどうかだな。
王国と完全に敵対することにもなるが、さすがにここまで王国軍が動くとは思えないので、そこは気にしなくてはいいだろう。
「私のほうは、聖都へ行っている「紅蓮の蝶々」と『
「わざわざここまで持ってきたってことは重要なことが判明したんだな?」
「えぇ……まだ公表されていませんが、勇者が次に目標とする魔王は、ダンジョン「大空を吹きすさぶ天風」だそうです。つまり『天風の魔王』ということになりますな。聖都から「紅蓮の蝶々」にダンジョンまでの道中安全を確保してほしいと依頼があったようです」
「……なるほど」
「聖都は多くの冒険者に声をかけているようです」
「これはとんでもないことになりそうだな」
少しの間、平和な時期が来るかもしれないだなんて思っていた。
だけど、魔王として忙しくなるのはこれからだったようだな。
『海賊』との戦いも……始まりに過ぎない。
誰にも恥じることの無い立派な魔王として……誰が相手でも負けるわけにはいかない。
帝国だろうが、勇者だろうが……臆していれば喰われるのは俺たちだ。
俺は次の一手を打つべく、ルジストルから詳しい方針を話始めた。
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