第10話 『侵略』する大罪
「なるほど。そのようなことが交渉の場でありましたか」
「はい。帝国と手を結ぶ気など毛頭もないようです。明確に敵対に意志を出されたので捕えております」
「バベルたちが仕掛けられている可能性がある」
「なるほど……明日には戻る予定ですな。すぐにでもアークを攻める準備をしていただきたい」
ルジストルを捕らえた後、彼はすぐに控えていたソレイユのもとに出向き話をでっち上げた。
ルジストルの態度を誇張し、訳の分からない条件を付きつけられ、街に攻め込む準備はできているという報告をソレイユにしたのだ。
さすがにソレイユも全てを信じるような真似はしないが、帝国に敵対があるのは確かだと思い、バベルを待つ準備をしつつ待機している団員たちに状況を説明していく。
「小さな迷宮都市がどのようにしてルビウスに勝ると? 何かしら軍を隠しているか、領主を暗殺する手筈が整っているのか」
ソレイユは本当に争うことになるとは思っていなかったので対策を練らなければいけないし、バベルたちからの報告もまとめて書類を作る準備をしなくちゃならないで忙しかった。
それに攻めると言っても、多くの住民がいる街を上手く被害を大きくせずに事を治めるとなると苦労するだろうと、ソレイユは1つため息をつく。
「……不穏だな」
どこかモヤモヤした何かを感じながらソレイユは窓の外を眺めていた。
◇
――『罪の牢獄』 居住区 コアルーム
今日はルジストルが帰ってくる予定日だったが、朝起きるとルジストルから連絡が入っていた。
ルビウス側に条件を変える気などサラサラ無く、完全に敵対として認識されて地下牢に捕らわれている…と。
あちらさんもやる気だったようで完全にこちらの読み通りだ。
今日の昼過ぎには副団長が合流してしまう、残り4時間でルビウスを攻め込んでルジストルを解放して団長とやらを倒したい。
ルビウスがこれだけ強気なのはアルカナ騎士団が戦力として手元にいるからってのが大きいと思う。
だから団長と副団長の2名を倒すことができれば戦意を完全に削ぐことができると踏んでいるし、その無くなった戦意で交渉を行えばすんなり行くと思っている。
「合流させるだけだったらいいが、こちらの話をされる前に決着をつけたい」
少しでもこちらの情報が知られる前に勝負をかけたいってのと副団長が帰ってくるのを待っている隙をつきたい。
「手筈通り準備をするか」
俺は魔物のみんなに作戦を2時間後に実行すること告げ、すぐさま準備にとりかかった。
魔王の力を見せつけてやろうかな。
◇
――ルビウス 領主の館 周辺
ソレイユから敵襲警戒が発令され、領主の館周辺とルビウスの門を重点的に守るように言われ、団員たちは少し引き締めて見回りを行なっている。
「団長に見られてないから逆に気を抜けるよな」
「上の二人が真面目すぎて俺たちは肩身が狭いぜ」
第7師団は色んな意味で人気が無い。
他の師団が受け付けない仕事が回ってきたり、上2人が真面目過ぎて気が抜けなかったりと新人騎士が所属したくない師団トップ3に入ってしまっている。
第7師団に所属する騎士の多くが訳ありで他の師団からやってきた者なのだ。
ソレイユとバベルが誰だろうと拒まずに働かせる力があるがゆえの上の判断であろう。
「バベルさんがもうすぐで帰ってくるらしいぜ」
「はぁ~、2人が揃ったらガチガチだからよ。できれば今のうちに遊びにでも行きたいぜ」
2人が話をしていると鮮やかな赤金黒の軽鎧ドレスと青いドレスを着た美女2人が歩いてくるのが分かる。
2人は会話を交わすことなく2人に近づいていく。
「こんにちはお嬢さん方、今は領主の館へは立ち入り禁止だぜ?」
「もし暇ならアルカナ騎士団の俺たちが楽しく遊んでやるぜ?」
帝国でアルカナ騎士団という名を知らない者はいない。
どこの街でも騎士団の名前をだして良い想いをしてきた団員たちはいつものような手口を使って声をかける。
しかしいつもならアルカナ騎士団だと褒めたたえるところを美女2人は鼻で笑う。
それを見た2人は語気を強めて再度声をかける。
「おいおい! 誰に向かってそんな態度をとってるんだ?」
「ちょっと可愛いからって調子乗るなよ」
――グシャッ!
「情報は採れましたかメル?」
「こいつらは地下牢の場所を知らない。団員の場所が集まってる箇所は分かったから送っておく」
「ありがとうございます」
ポラールとメルクリウスは領主の館地下牢に捕らわれているルジストルを救出する組として忍び込むことをせず、正面から陽動をかねて動いていた。
団員2人は『
遠目で見ても目立つ格好の2人が館の近くで歩いていれば、さすがに見つかり10人ほどの団員たちが駆け寄ってくる。
しかし先ほどの2人と違って武器を構えて、警戒しているようだ。
「我らがご主人様の理想を阻むものは」
「みんな餌になってもらう」
「敵しゅっ!?」
――バギッ!
館に聞こえるように叫ぼうとした団員だったが、ポラールの拳が鎧を砕きながら腹に突き刺さっており、血反吐を吐いて倒れていく。
そしてポラールに気をとられた他の団員たちは『
「地下牢の場所知っている奴いたよ」
「館正面の騎士は片付きましたね。中に入ってルジストルを助けましょう」
「うん」
こうして僅か2分足らずで領主の館正面を守っていた騎士団員12名は仲間に敵の存在を伝えることもできずに死んでいった。
◇
――ルビウス 南門前
ソレイユと領主による敵襲警戒が出されてアルカナ騎士団の一部はバベルが戻ってくるであろう南門で有事に備えていた。
もしかしたら敵に追われながら戻ってくる可能性がある。ソレイユは現在交渉を行なっているアークという迷宮都市が帝国に敵対したということを伝えられた団員たちは戦闘準備を南門前にある兵の休憩所を使用していた。
「帝国に盾突こうなんて馬鹿な奴らだよな」
「できたばかりの迷宮都市なんて何もねぇーってのによ」
「うちの団長に勝ちたいならSランク魔物3体は持ってこいってんだ!」
バベルが到着するまで1時間以上あり、交代制というのもあり休憩時間を楽しむ団員たちはここでも帝国に庇護下に入らないと決めたアークを見下すような話をしていた。
談笑する団員たちのすぐ近くに2つの影がある。
そこから現れたのは派手な和装をした鬼神・阿修羅と堕天使ガラクシアだ。
「首堕」
声を挙げる暇も無く、談笑していた6人の団員たちは阿修羅の手刀で気絶していく。
2人はできるだけ殺すなとの指令をソウイチより受けており、ガラクシアの力で操ってほしいとも言われているので気絶させる阿修羅と操るガラクシアで役割分担をすることにしていた。
「昨日の女騎士が街に帰ってくるまでに片付けるとするか」
「そうだね~♪」
「俺は忍んで倒しておくからお任せする」
「まかせてー!」
2人の任務は門前に集まると予測される騎士をガラクシアの力で制圧し、副団長たち誰も領主の館に近づけさせずに捕らえること。
住民への被害はできるだけ減らし、かつ戦闘を見られないようにしてほしいってことだったので、この2人が選ばれたのである。
「じゃ~お外に出て街に結界張ってくるね!」
「おうさ。一体騎士もらってくぞ」
ガラクシアは街の上空へ転移魔法で跳ぶ。
そして自分のアビリティである結界を発動させる。
「『
ガラクシアを中心に満天の星を思わせる夜空が街を覆うように広がっていく。
発動から僅か10秒でルビウスの空は輝く夜空で埋め尽くされていた。
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