エピローグ ここから『始まる』街づくり


 Sランクパーティー「紅蓮の蝶々」の6人を無事うちの『黎明の三柱』が圧倒してくれた。

 『黎明の三柱』ってのは最初に真名を与えて、中心となって俺を支えてくれるから今後どれだけ魔物が増えても3人には特別でいてほしいという想いを込めて呼ばせていただくことにした。たぶん数が増えると忘れてしまうだろう。

 たくさん魔物が増えたら改めて考えればいいか…。


 アヴァロンは鎧のため分かりにくいが剣を高く掲げて喜んでくれていた。

 ガラクシアとポラールには激しく抱き着かれてめちゃくちゃ疲れてしまった。



 「紅蓮の蝶々」を仲間に引き入れた翌日。

 その6人とリーナにガラクシアとポラールを食堂に呼んで昼食を取りながら街づくりについての会議を行なっている。



「ハンバーグ美味しい~!」


「ご主人様…マッシュルームいりませんか?」


「ソウイチ様、おかわりが欲しいです」



 大事な話をしようかと思ったら相変わらずの光景が広がっている。

 「紅蓮の蝶々」の面々も少し自由な空気感に唖然としている。


 ガラクシアとポラールは別に食事をとらなくてもいいらしいんだが皆で楽しくご飯を食べるのが好きなようでいつも俺の食べる時間に合わせてDEを使わせにくる。



「みんなで話し合いたいのは街づくりをする上で街を知らないってのはいけないと思ったから、どこかの迷宮都市を見に行きたい」


「おぉ~!」



 ガラクシアが勢いよく手を挙げて盛り上げてくれる。

 冒険者の6人はまだその段階かよって感じの視線を俺に送っているが見学に行くのには色々理由がある。



「行く場所は6人が拠点にしてた「ヴァルカン」だ」


「「「「「「えっ?」」」」」」


「向こうに残してある荷物だとか諸々をあと腐れないように片付けてきてくれ。その後に俺の頼みごとをこなしていってほしい」


「そんなことして私たちが何するか分からないわよ」


「ガラクシアとポラールも一緒に行くけど、裏切って逃げ切る自信があるなら構わないぞ」


「そんなの無理だから安心しなさい」



 もちろん6人のうちの誰かでも何か起こそうものならガラクシアとポラールが容赦せずにたとえその場では逃げ切れても、必ず追い続けるつもりだ。

 6人には街を拠点にすることを正式に冒険者ギルドってやつに伝えて、ほんのり俺たちのダンジョンを宣伝してきてもらおうかなと思ってる。


 2人くらいには俺に街案内をしてくれると助かるのでメンバー選定をしてもらう。



「ということで出発は2日後かな。ガラクシアが一回下見に行って時空間魔法で転移させてくれるから一瞬で行けるぞ」


「その距離を転移できるってどうなってるんですか」



 忍者っ娘が呆れながらツッコむ。

 時空間魔法は魔族・人間ともに極僅かな人物しか習得しておらず、その中でも自在に転移ができる者なんて数人ほどしかいないそうだ。

 

 冒険者としての体験談や実力者たちがどんなものなのか、他のダンジョンをどんな風に攻略したのか? どんな魔物が強く感じるかなど面白い話を聞けてとてもいい時間になった。


 カイルっていう奴があまり俺を気に入らなさそうな視線をむけてる以外は気になるところも無く仲良くやっていけそうな気がした。









 その日の夕方。

 

 ダンジョンにまた遊びに来ていたミルドレッドに街づくりのコツを教えてもらっていた。

 ミルドレッドのダンジョンも数百年続いている都市があるらしく有名らしい。



「そうだね…商人との付き合いやソウイチの場合は特に帝国には注意したほうがいい」


「ふむふむ」


「その街特有の物や建物も考えておいたほうがいいね。街の運営を上手く回すために知能が高い魔物を多くいるとやりやすい」


「さすが経験者だ。本当に助かるよ」


「もちろん街が繁栄したら師匠に美味しいものご馳走してくれるんだろう?」


「ぜひご馳走させてくれ」



 そう言ってミルドレッドと笑い合う。

 ミルドレッドとアイシャしか付き合いがないので、こうやって同じ目線で話ができる相手と話す時間は自然と楽しくなってしまう。



「そういえば引き入れた冒険者は『豪炎』の差し金らしいね」


「あぁ…2日後に「ヴァルカン」に挨拶しに行ってやろうと思っていてね」


「はっはははは! さすが私の弟子だ! 男ならそうでなくっちゃね!」



 俺の頭を大笑いしながらぐしゃぐしゃと撫でまわしてくれるミルドレッド。

 普通はルーキーが挑むような相手じゃないかもしれないけど、1つの疑念を解消したいのと単純にケンカ売られたまま引きこもってるのは嫌(いや)ってだけだ。



「まぁ「ヴァルカン」は街としても面白いかもしれないから楽しんできな」


「あぁ…もし『豪炎』にさらにケンカ売られるかもしれないけどな」


「面白いねぇ! あぁー若いっていいねぇ」



 若い頃は悪さしまくっていたらしいが、ここ最近は刺激がなくて面白くないと言っていたミルドレッドからすれば俺の存在は見てるだけで面白いのかもしれないな。

 こうやってルーキーの相談に真面目に答えてくれるだけでも、今の俺からすれば非常に助かることだ。



 ミルドレッドが街を作る時に大変だったことや。他の魔王からどんなちょっかいをかけられたかなんてのも聞いていると、俺のダンジョンに冒険者が入ってきた知らせがきた。



「ごめん。続きはまた聞かせてくれ」


「頑張りなよ」



 魔王として冒険者の対応へと追われる。

 ミルドレッドは俺の切り替える姿を見て満足げな表情して帰っていった。


 俺はコアルームへと急ぎ、モニターで冒険者を確認しているリーナに声をかけて状況把握に努める。



「どんな感じだ?」


「新米冒険者って感じですね。4人組の若者です」


「よし…1Fで仕留めてガラクシアに引き渡していつも通りだ」



 生まれてから50日ほど経過したけど大変ながら、なんとか魔王としてやっていけることができている。


 Gランクしか召喚できないって事実を聞いた時は絶望したけれど、ガチャ運と配合運でどうにかなっている。


 素晴らしい配下に恵まれてるし、面白い知り合いもできた。


 これからやりたいことがたくさんあるし、確かめたいこともある。

 やられるわけにはいかないし、先輩魔王だろうがなんだろうが立ちはだかるやつは容赦しない。

 

 まぁ何はともあれ楽しい魔王ライフを楽しんでいくことにしよう。

 

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