アイラン様と一緒にゾマー帝国に遊びに行きます

「アイラン様、次のお休みの予定はございますか?」



「特に考えていないけれど、どこか行きたいところでもあるのかい?」



私を後ろから抱きしめたまま、お茶を飲むアイラン様。結婚して1ヶ月が経過した。結婚してからというもの、なぜかアイラン様が物凄く構ってくるようになった。




今も夫婦でティータイムを楽しんでいるのだが、なぜかアイラン様の膝の上に座らされてお茶を飲んでいる。最初はものすごく緊張していた私だけれど、こう毎日膝の上に乗せられていれば、もうすっかり慣れたわ。




おっといけない、アイラン様に大事な話があったんだったわ。私はアイラン様の方を向いた。




「アイラン様、実は父が一度アイラン様と一緒にゾマー帝国に遊びに来ないかと申しておりまして。それで、もしアイラン様さえよろしければと思ったのですが」




一応提案は父からだが、私自身も生まれ育ったゾマー帝国を、アイラン様に案内したいと思っている。




「ゾマー帝国か。シャーロットが生まれ育った国に、ぜひ俺も行ってみたいよ。こうしちゃいられない。せっかくなら1週間くらい滞在したいから、今のうちにある程度の仕事を終わらせてしまおう。もちろん、仕事中シャーロットも俺の側に居てくれるよね」




返事を言う間もなくアイラン様に抱きかかえられ、執務室へと連れてこられた。そして、アイラン様の膝に座らされる。




日中はオルビア様が定期的に見回りに来て下さるので、アイラン様の仕事中、お膝の上は解放されていたのだが、今は夜だ。いつも止めてくれるアルテミル様とオルビア様はいない。




仕方ない、今回はゾマー帝国に行く為に頑張ってくれていることだし、しばらくは我慢するか。そう思い、大人しくしていたのだが…




仕事をしながらも私にちょっかいを出してくるアイラン様。頬に口付けをしたり頬ずりしたり、髪に口付けをしたりとやりたい放題だ。


さすがにこれはちょっと調子に乗りすぎだと思ったので


「アイラン様、ちょっと触りすぎです。仕事に集中してください!」


と、伝えたのだが…




「シャーロット、俺たちは新婚なんだ。この程度のスキンシップは普通だ!それにシャーロットに触れていると仕事がよりはかどるんだよ」


そう言うと、私の唇に自分の唇を重ねるアイラン様。




「これ以上やるとまずいな。さっさと仕事を終わらせて、寝室に行こう」


ギューッと私を抱きしめ、猛烈なスピードで仕事を始めた。




私、この後きっとアイラン様に可愛がられるのね…



シャーロットの予想通り、この後たっぷりアイラン様に可愛がられたシャーロットであった。






猛烈な頑張りによって、1週間の休みを貰ったアイラン様。ゾマー帝国までは転移魔法を使って約1日半。もっと集中して行けば一瞬で着くのだが、今回はアイラン様もいるし、経由地を観光しつつ余裕を持ってゆっくり行く事にしたのだ。




「アイラン様、準備は出来ましたか?そろそろ出発しましょう」




「ああ、俺はいつでも大丈夫だよ。それにしても、やっぱりすごい荷物だね」




移動時間も含め約1週間分の荷物を詰めたカバンはパンパンだ。極力荷物を減らす為、洋服はワンピースを準備した。アイラン様も大きいカバン2つ分の荷物がある。




「1週間分ですから仕方ありませんね。ではそろそろ参りましょうか?」




私はアイラン様の手を握った。基本的に私が触れている人や物は、私と一緒に転移魔法によって移動できる。本来であれば国王のアイラン様と王妃の私が他国に行くのだから、護衛騎士なども連れて行きたいところだ。




でも、人や物が多ければ多いほど沢山の魔力が必要となる。その為、私の負担を減らすことを考えると、今回は2人だけでゾマー帝国に行くのがいいと考えたのだ。




「それじゃあ、アルテミル、ファビオ、留守を頼んだぞ」




「ああ、任せておけ」


「お土産よろしく!」




2人は笑顔で手を振ってくれた。




「オルビア様、次は一緒に行きましょうね」


不貞腐れているオルビア様に声を掛ける。実はアルテミル様から話を聞いたオルビア様は


「私も絶対に行く!!」


と張り切っていたのだが、アイラン様の猛烈な反対に合ったのと、夫であるアルテミル様からの許可が下りなかった為、泣く泣く諦めたと言う訳だ。




ああ見えて意外とアルテミル様って嫉妬深いみたいで、「オルビアと1週間も離れるなんて無理だ!」の一言であっさりお留守番になったのだとか。






「シャーロット、絶対次は連れて行ってね。それにしても、私も魔法の国に行きたかったわ」


頬を膨らますオルビア様の肩をそっと抱くアルテミル様。




「それじゃあ、行ってきます」


私は一気に体に魔力を込め、目的地の場所をイメージする。次の瞬間、一瞬にして場所が変わった。




第1経由地でもある、アリゾナ王国に無事着いたようだ。この国は1年中暖かく、南国の楽園と呼ばれている。




「シャーロット、本当に一瞬にして別の国に着いてしまったよ!君は本当に凄いんだね」


アイラン様が嬉しそうに抱き着いてきた。




「アイラン様、この国は珍しい果物が採れると聞いております。せっかくなので、色々と食べてから次の経由地へと向かいましょう」


それにしてもこの荷物邪魔ね。そうだわ。




「アイラン様、少しお待ちいただけますか?」




私は荷物を持つと、一気に魔力を込めて移動した。目的地は、今日泊まるホテルだ。1人ならば移動も楽々だ。とりあえずホテルに荷物を預け、アイラン様の待つ場所へと戻った。




「シャーロット、どこに行っていたんだ!」


私が戻るや否や凄い勢いで抱きしめられた。




「アイラン様、今日泊まるホテルに荷物を預けに行っていたのですわ。これで気軽に観光が出来ますわね」


私は満面の笑みでアイラン様に伝えたのだが…




「シャーロット、勝手に転移魔法を使うなんてどういうつもりだ!確かに君は魔力を持っているけれど、勝手に俺から離れるなんて許さない!二度とこんな事をしないでくれ!」


物凄い勢いで怒られてしまった。良かれと思ってやったんだけれど…


アイラン様の方をちらっと見ると、とっても怖い顔をしている。このままだとまずいわ。




今までの経験上、アイラン様を怒らせたその日の夜は、大変なことになる事は実証済みだ。いつもなら次の日ゆっくり過ごせばいいけれど、今回はそうはいかない。とにかく謝らないと!




「アイラン様、ごめんなさい!もう二度とアイラン様の許可なく転移魔法は使わないから。だから怒らないで」




少しでもアイラン様の機嫌が戻る様、アイラン様に抱き着き頬に口付けをした。他に人がいるし物凄く恥ずかしいけれど、アイラン様の機嫌を直すのはこれが一番効果的なのだ。




「シャーロットがそう言うなら、今回は許してあげるよ。でも、今言ったこと忘れないでね」


私のおでこに口付けしてにっこり微笑んだアイラン様。どうやら機嫌が直った様だ。




気を取り直して、街を2人で散策する。見たことが無い果物がたくさん並んでいる。




「せっかくだから、いくつか買って食べてみようか?」


アイラン様の提案で、細長く黄色いバナナと呼ばれる物と、赤い皮をしたマンゴーと呼ばれる物を2人で食べた。




「アイラン様、甘くて美味しいわ。せっかくだから、ゾマー帝国の家族にいくつかお土産に買っても良いですか?」




「うん、確かに美味しい。そうだね、何個か買っていこうか」




私の提案で、バナナとマンゴーをそれぞれお土産用に購入した。街をゆっくり見た後は、せっかくなので海の方にも行ってみた。この国はとにかく暖かい為、皆が海で泳いでいる。それも見たことが無いような薄い布切れを身にまとって…




「アイラン様、布切れだけの人が沢山いるわ。恥ずかしくはないのでしょうか?」




「あれは海で泳ぐとき用の衣装と聞いている。フェミニア王国にもあんな衣装はないから、俺も初めて見たよ。それにしても、随分肌の露出が多いな。シャーロットは絶対着てはいけないよ」




あんな恥ずかしい衣装、頼まれてもごめんだわ。それにしても、本当に大胆な衣装ね。男の人なんてほぼ裸じゃない。あ、あの人凄い腹筋だわ。アイラン様とどっちが凄いかしら。




そんな事を考えていると、アイラン様に目隠しをされた。




「シャーロット、今あの男を見ていただろう。夫の前で他の男を見つめるなんて、どういうつもりなのかい?」


耳元でささやくアイラン様。しまった、またやってしまったわ。




「アイラン様、別に男の人を見ていたわけではなくて、奥に居る女の人を見ていたの。ほら、スタイルがすごくいいでしょ?」




苦し紛れの言い訳をしてみたが、アイラン様からじっと見つめられる。まるで蛇に睨まれたカエルだ。




「そうだわ、観光ももう十分したし、今日泊まる予定のホテルに行きましょう。さあ、アイラン様」


私は話題をかえる為、アイラン様の手を取り人けのないところに行くと、転移魔法で今日泊まるホテルの前へと向かった。




「さあ、アイラン様、ホテルに入りましょう。ここのホテル、この国で一番立派なホテルなんですって。そうだわ、この国には珍しい郷土料理があるそうなの。せっかくだから、後で街に食べに行きましょう」




とにかく話をそらしてしまおうと考えたのだが…




「シャーロット、このホテルは食事を部屋まで運んでくれるそうだよ。もちろん、郷土料理もね。今から部屋でたっぷり愛を語り合おう」




満面の笑みのアイランによって、部屋へと連れてこられたシャーロット。もちろん、朝まで部屋から出ることは許されず、これでもかというくらい、アイランから愛されたのであった。


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