第33話 アイラン様と幸せになります
リアム殿下押しかけ騒動から1ヶ月が経過し、今日はいよいよ私とアイラン様の結婚式だ。
コンコン
「シャーロット、準備は進んでいる?まあ、なんて素敵なの!やっぱりウエディングドレスに手を加えて良かったわ。最初のよりずっといい」
私の元にやってきて来たのは、オルビア様。ウエディングドレスは戦争に行く前にアイラン様が手配してくれていたのだが、デザインが地味!ということで、私とオルビア様が元のウエディングドレスに少しアレンジを加えたのだ。
「そうそう、ゾマー帝国からあなたの家族や国王陛下、王妃様が到着しているわ。今、待合室で待ってもらっているの。せっかくだから、式の前に会うでしょう?」
そう言うと、私の手を引き待合室へと連れて行ってくれるオルビア様。待合室に着くと、タキシード姿のアイラン様が皆の相手をしてくれていた。
「シャーロット、久しぶりね!元気そうでよかったわ!それにしても、本当に今日のあなた、とても奇麗よ」
「ありがとう、アリーアも元気そうでよかったわ。お兄様との結婚式にはぜひ呼んでね。アイラン様と2人で出席するわ」
「もちろんよ」
久しぶりに直接話す、かつての友人。通信機越しでは何度も話しているのに、やっぱり直接話すのは良いわね。
「シャーロット、今日はおめでとう。本当に奇麗だよ」
「お兄様もわざわざ来てくれてありがとう。そうそう、フェミニア王国のご飯は本当に美味しいのよ。いっぱい食べて行ってね」
お兄様は食いしん坊だ。きっとフェミニア王国のご飯を気に入るだろう。
そんなたわいもない話が出来ると言う事に、何だが胸が熱くなる。1年前の今日、私は自ら命を絶とうとした。その頃の事を考えると、今自分が笑って過ごしていられることが、本当に嬉しいし奇跡の様に感じられる。
「皆様、ご歓談中失礼いたします。そろそろ、お式のご準備を」
アイラン様の執事が呼びに来てくれ、皆で式場へと移動する。
その時
「シャーロットちゃん。ちょっとだけいいかしら?」
王妃様が私に話しかけてきた。
「これ、あなたの母親の、エリザベスからの手紙よ。あなたを出産する少し前に、シャーロットちゃんが結婚する時に渡して欲しいと頼まれていたの」
私は王妃様から手紙を受け取り、ゆっくりと中を開く。
“最愛の娘、シャーロットへ
この手紙を読んでいるあなたは、いくつくらいなのかしら?きっと最愛の人と結ばれる喜びに、胸躍らせていることでしょう。
シャーロット、あなたを育ててあげられなくてごめんなさい。あなたを母親のいない子にしてしまった事、申し訳なく思っています。母親がいないことで、寂しい思いをしたこともあるでしょう。
でもね、私はあなたをお腹の中で育てられたこと、そしてこの世に生まれてきてくれたこと、本当に嬉しく思っているのよ。私の元に来てくれてありがとう。私は本当に幸せでした。
後ね、1つだけあなたにお願いがあるの。結婚後もできればお父様の事も気にかけてあげてね。あの人、ああ見えて寂しがり屋だから。
結婚おめでとう。どうか末永く、幸せに過ごしてください。
母 エリザベスより“
「お母様…」
私は手紙を握りしめたまま、その場で泣き崩れてしまった。死を覚悟してまで私を産んでくれたお母様。どんな気持ちで、この手紙を書いたのだろう…
「シャーロットちゃん、今日のあなた、本当にエリザベスにそっくりよ。きっと、エリザベスも、天国であなたの姿を嬉しそうに見ているはずよ。ほら、泣かないで!辛い思いをした分、絶対に幸せになるのよ」
王妃様はそう言うと、少し寂しそうに笑った。
「さあ、みんなが待っているわ。行きましょう」
涙を拭い、お父様とお兄様の待つ式場の入り口へと向かう。フェミニア王国では、花嫁は家族にエスコートされて花婿の待つ式場へと向かうらしい。
私が急いで式場の入り口に向かうと、お父様とお兄様が待っていた。
「お待たせしてごめんなさい。お父様、お兄様」
「王妃様との話は終わったのかい?」
お父様、私が王妃様と話していた事、気づいていたのね。
「ええ、終わりましたわ」
「そうか、それにしても今日のシャーロットは、本当にお前の母親のエリザベスによく似ているよ」
お父様が目を細めた。
私は改めてお父様とお兄様の方に向き直る。
「お父様、今まで愛情たっぷりに育ててくれてありがとう。お母様が居なくても寂しくなかったのは、その分お父様とお兄様が私にたっぷりの愛情を与えてくれたからよ。本当にありがとう。お父様もお兄様も大好きよ!」
エミリー様の魅了魔法のせいで、お互い沢山傷ついてしまった。でも、またこうやって和解できて、本当に良かった。きっと、天国のお母様も喜んでいるわよね。
「「シャーロット!!!!」」
私の言葉を聞き、お父様もお兄様も泣きながら抱きしめてくれた。温かな家族の温もりを感じながら、今日という幸せをさらに噛みしめる。
「シャーロット様。お取込み中のところ申し訳ないのですが、そろそろお時間です。よろしいですか?」
申し訳なさそうに案内人の人が声をかけて来た。
「ええ、大丈夫よ」
私はお父様とお兄様の間に入り、それぞれの腕に手を添える。そして、いよいよ扉が開かれ、2人にエスコートされ、ゆっくりとアイラン様のいるところまで歩く。
周りを見ると、沢山の人の顔が目に入った。オルビア様やアルテミル様、ファビオ様、フェアラ様、王妃様や陛下、アリーア。他にも他国の王族と思われる人も参加してくれている。
アイラン様の元にたどり着いた私は、お父様とお兄様からアイラン様に渡される。その後は契約書を交わし、誓いの言葉を交わした。
式も無事に終え、式場の外に出る。雲一つない青空の下には、沢山の貴族や民たちの姿が。
「アイラン陛下、シャーロット様、ご結婚おめでとうございます」
「「「「おめでとうございます」」」」」
民たちが一斉にお祝いの言葉を述べてくれる。こんなに沢山の人に、祝福されながら結婚できるなんて、本当に幸せな事だ。
「シャーロット、アイラン殿下。おめでとう」
お父様の掛け声で、空から沢山の花が降ってきた。
「うわぁぁぁぁ」
周りから歓声が上がる。
どうやら、ゾマー帝国の来賓の人たちが、魔力で花を降らせてくれているようだ。
色とりどりの花たちが次々と降り注ぐその光景は本当に奇麗で、まるで全ての人たちに祝福されている様な気持ちになる。
「シャーロット、俺たちはこんなにも沢山の人たちに祝福されているんだね。絶対に幸せになろうね」
アイラン様が嬉しそうにそう言った。
「もちろんですわ。アイラン様。絶対に絶対に幸せになりましょう」
私もアイラン様に向かって微笑んだ。
「シャーロット、16歳の誕生日おめでとう!そして、生まれてきてくれてありがとう。俺にとって、今日は最高の日だよ」
そっと、耳元で呟くアイラン様。
思い返せば1年前の今日、私は絶望の中誕生日を迎えた。あれから1年、辛いことや大変だったこともあったけれど、アイラン様やオルビア様に出会い、生きる希望を再び持てた事、大切な人と和解できたこと、そして今日という最高の日を迎えられたこと、あの日の私には想像も出来なかったでしょうね。
でも、あの日確かに私は魔力を使い果たして、命を落としたはず。それなのに、奇跡的に命を取り留められたのは、もしかしたらお母様が生かしてくれたのかもしれない。なんだかそんな気がする。
お母様、あなたに頂いたこの命、これからも大切にするわ。そして、絶対にアイラン様と幸せになるから、だから天国で見守っていてね。
シャーロットは心の中で母に感謝しつつ、アイランと共にいつまでも民たちに手を振り続けたのであった。
おしまい
~あとがき~
これにて完結となります。
今後ですが、せっかくなので結婚後の2人やゾマー帝国に遊びに行った話など、番外編として書いていきたいと考えています。
最後までお読み頂きありがとうございましたm(__)m
【お知らせ】
前の回でお話した通り、リアム殿下視点のお話をアップしていきます。
「今度は君を話さないよ」
本日19時より、1時間おきにアップしていく予定です。
宜しければよろしくお願いいたしますm(__)m
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