第19話 決着をつけましょう
翌日、案の定ガリレゴ軍が攻めてきたようで、本陣の周りには沢山の丸焦げたちが転がっていた。
予想を裏切らない卑怯っぷりに、何とも言えない気持ちになった。
「シャーロット、戦いの前に打ち合わせをしたいんだがいいか?」
アイラン様に呼ばれ、私は団長達が集まるテントへと向かった。
「シャーロット、昨日の君の活躍はすごかった。この分だと、本当に勝利も夢ではない」
アイラン様の言葉に、皆が頷く。そんなことを言われたら、照れますわ。
「今日の作戦だが、引き続きシャーロットは聖女を頼む。俺たちも、少しづつ敵国の兵士たちを減らして行こう」
どうやらアイラン様は長期戦で行く様だ。
「少しよろしいでしょうか?アイラン様」
「どうした?シャーロット」
不思議そうにこちらを向くアイラン様。団長達も私に注目する。
「アイラン様、向こうの軍勢を考えると、長期戦は私たちにとっては不利です。本日一気にケリを付けましょう」
珊瑚の数は限られている上、我が軍は敵軍より極端に少ない。戦いが長引けば、少ない兵士しかいない我が軍は明らかに不利になる。なにより、敵軍は新たに新しい兵士たちを集めることも出来る為、ある意味兵士たちは無限だ。
ここは短期集中で、敵国の国王を討ち取る必要がある。国王さえ打ち取れば、こっちの勝ちだ。
「シャーロット、何かいい方法でもあるのかい?」
「方法というわけではありませんが、今日、私は聖女との戦いに決着を付けるつもりです。もし、私が聖女に勝てたら、次はアイラン様、相手国の国王を討ち取ってください。もちろん、私も援護いたします!」
もしかすると、私は敵国の聖女に負けてしまうかもしれないし、勝てたとしても、ほとんど魔力は残っていないかもしれない。それでも、この方法が一番いいと考えたのだ。
「シャーロット、聖女に勝てる自信は?」
「昨日戦いを早めに止めてしまったので、はっきりとはわかりませんが、7:3で勝てるかと!」
「わかった、ではシャーロットが聖女を倒した後に、俺は相手国の国王の首を狙う事にしよう」
これで作戦は決まった。後は私があの聖女を倒すのみ。やるしかない!
今日も本陣にバリア魔法をかけて戦場へと向かう。
戦場には昨日とは反対に、既にガリレゴ軍が来ていた。どうやら、自国から兵士を補ったのか、昨日と同じぐらいの兵士が集まっている。戦いが長引けば長引くほど、多くの兵士たちの命が失われる。
我が国の為にも、相手国の為にも、今日絶対に決着を付けないとね。
「やっと来たわね!昨日はお遊びに付き合ってあげたけれど、今日はそうは行かないわよ!覚悟しなさい!」
明らかに不機嫌顔の聖女。
「それはこっちのセリフですわ。さあ、早速戦いを始めましょう」
私はそう言うと、魔力を手に集中させ、一気に放出する。相手の聖女も魔力で応戦してきた。さあ、戦いの幕開けよ。
お互いの魔力がぶつかり合い、凄い衝撃だ。
「私の思った通り、あなた相当の魔力持ちね。でも、これならどう?」
さらに魔力放出量を増やしてくる聖女。それを受け止める。
一体どれくらいの時間、お互い魔力を放出しているのだろう。それくらい、長時間魔力を放出し続けている。
このままだと魔力が尽きるのも時間の問題ね。勝負を仕掛ける時だわ。
私の中に眠る魔力よ、今こそ目覚めよ。雷雲!!
聖女の頭に雷雲が現れる。
「ちょっと、何をする気よ!」
焦る聖女。
「見てもお分かりになりませんか?」
そう、あなたの頭の上にイナズマを落とすのよ!
「あれほどの魔力を放出したのに、まだイナズマを撃つ魔力が残っているの?あなた、一体何者?」
「私は、ゾマー帝国最強の魔力持ちですからね。そうそう、かつての名前はシャーロット・ウィルソンと申します」
「シャーロット・ウィルソンですって!思い出したわ!15年ほど前に、ゾマー帝国最強の魔力の持ち主が生まれたって、当時ドドリア王国でも随分話題になっていたもの。まさか、あなたが…」
「そうです!私の事ですわ」
明らかに動揺しだした聖女。でも、もう遅いわ。
「さあ、聖女様、決着を付けましょう!」
「やめて…お願い…」
誰がやめるか!
「イナズマ!!!!」
私の掛け声と共に、ものすごいイナズマが聖女の頭上に降り注いだ!
「嫌ぁぁぁぁぁぁぁ」
その場に倒れこむ聖女。イナズマをもろに受けたせいか、ピクリとも動かない。
勝ったわ!でも、魔力を随分使ってしまったわね。ふらつき、座り込む私。
「シャーロット!!!」
「貰った!!!」
アイラン様が私を呼ぶ声と、ガリレゴ王国の兵士が束になって倒しに来るのが目に入った。なめてもらっては困るわ。いくら魔力量が減っても、あなた達くらい倒せる。
”竜巻!!”
「うわぁぁぁぁ」
私に襲い掛かった兵士たちは、竜巻に飲まれどこかに行ってしまった。さあ、まだ戦いは終わっていないわ!
ふらつく頭で何とか立ち上がった。
「シャーロット、大丈夫か?」
アイラン様が私の元に飛んできた。
「アイラン様、聖女は倒しました。さあ、次は国王を討ち取りましょう。もちろん、私も援護いたします」
「シャーロット、ふらついているじゃないか!すぐに休むんだ!」
「いいえ、大丈夫です!アルテミル様、ファビオ様、アイラン様の援護をお願いします」
「「任せろ」」
私の指示に、2人が答える。
私を見て、逃げようとする敵国の国王。逃がさないわよ。炎!
国王の逃げ道を塞ぐように、炎魔法を打ち放つ。逃げ道を塞がれ、右往左往する国王。
「さあ、アイラン様、あいつをやっつけてください!」
私の言葉を聞いたアイラン様は、国王に剣を向ける。
さすがに敵国の国王。アイラン様の剣を剣でかわす。
カキーン
剣と剣がぶつかり合う音が鳴り響く。
ガリレゴ王国の国王を助けようと、相手国の兵士が必死に切りかかってくるが、アルテミル様とファビオ様が邪魔させまいと次々と倒していく。
この2人、剣の腕は一流の様だ。私も邪魔されないように、残り少ない魔力で戦う。
さすがアイラン様。次第に敵国の国王を追い詰めていく。その時、アイラン様の剣が、敵国の国王の胸を貫いた。
勝負あったようだ!
良かった。
「敵国の兵士たち、よく聞け。お前たちの国の国王を討ち取った。この戦は、我がフェミニア王国の勝ちだ!」
アイラン様の言葉で、一気にへたり込む相手国の兵士たち。
よかったわ、これで戦争が終わったのね。
とりあえず、本陣に掛けておいたバリアを解除しなきゃ!あ、頭がクラクラする…。
私は安堵からか、そのまま意識を手放したのであった。
~あとがき~
ー戦争2日目、本陣で待つオルビア達ー
「ねえ、フェアラ!皆大丈夫かしら?」
「シャーロット様がいらっしゃるから、きっと大丈夫よ。それより皆疲れて帰ってくるだろうから、栄養満点の食事を作らないとね」
「そうね…」
心配で戦場の方を見つめるオルビア。その瞬間、シャーロットが出した動物たちが次々と消えていく。
「ねえ、シャーロットが出してくれた動物たちが消えていくわ。シャーロットの身に何かあったのかしら」
すると、1人の兵士が本陣に向かって走ってくる
「ハーハー。オルビア王女。朗報です!シャーロット様が聖女を倒し、その後陛下が相手国の国王を倒しました!我らフェミニア軍の勝利です!」
その話を聞いた令嬢から、歓喜の声が上がる。
「それは本当?それで、シャーロットやお兄様は無事なの?」
「はい、皆ご無事です!」
「良かったわ!本当に良かった!」
涙を流し、フェアラと抱き合うオルビア!
こうして、本陣にも無事勝利が伝えられたのであった!
※この兵士は、その後シャーロットが倒れたことは知りません。
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