第4話 魔力が完全に復活しましたが放出する方法に悩みます~前編~
国王陛下に挨拶を終えた日から、私は陛下とオルビア様の3人で食事を摂ることとなった。どうやら話を聞くと、既に陛下とオルビア様のご両親は亡くなっているとのこと。そのため、今王族は2人だけなんだとか。
それにしても、若い王様だとは思っていたけれど、まさかご両親が亡くなっていたなんてね。驚きだわ。
「ねえ、シャーロットの住んでいた国はどんな国だったの?ゾマー帝国だったっけ?詳しく教えて」
3人で食事をしていると、急にオルビア様が話しかけてきた。ゾマー帝国の事か…
「そうですね。私の国の住民は全員多かれ少なかれ魔力を持っています。そのため、料理や掃除なども皆魔法で行っていましたわ。後は…そうですね。宝石鉱山があったので、様々な宝石が採れました。自然も豊かで、恵まれていた土地だったと思います」
私は出来るだけ当たり障りのない程度に答える。
「へ~、皆が魔力を持っているのか。なんだか魔法使いの国みたいだね」
陛下の言葉に、「本当ね。素敵だわ!!」と、同意するオルビア様。確かに、魔力のない国からすれば、私は魔法使いに見えるのかもしれないわ。
ありがたいことに、陛下もオルビア様も私の家族の事や、なぜ死のうとしたかは聞いてこなかった。きっと気を遣ってくれているのだろう。そもそも、こんなどこの馬の骨ともわからない私を、こんな風に大切にもてなしてくれる2人だもの。本当に感謝しかないわ。
それにやっぱり誰かと食べる食事は美味しいわね。陛下もオルビア様も、これから毎日一緒に食事を摂ろうと言ってくれた。
「いつも2人で寂しく食事をしているのよ。シャーロットが一緒に食べてくれると、私たちも嬉しいわ」
そう言ってくれたオルビア様。本当に感謝しかない。
もう私は誰かと食事を摂ることはないかもしれないと思っていたけれど、思いがけない2人の温もりに触れることが出来た事がとても嬉しかった。
そして私が目覚めて1週間が経った。魔力はもう完全に元に戻った。でも、実は私にはある悩みがある。それは、どうやって魔力を放出するかだ。私は人よりかなり魔力量が多く、定期的に放出しないと魔力が暴走し、命の危険にさらされるのだ。
ゾマー帝国に居た頃は、定期的に魔力を放出していた為、問題なかった。それなら、ここで魔力を放出すればいいと思うかもしれないが、そうもいかない。
そもそも、魔力を放出するには、かなりのエネルギーが発生する。最悪、家一軒吹っ飛んでしまうこともあるのだ。
ちなみに地下牢で全魔力を放出したから、もしかしたらゾマー帝国の王宮は今頃影も形もなくなっているかもしれない。
もしかしたら、ゾマー帝国自体無くなっていたりして…
そう考えると、背筋が凍り付く。大丈夫よ、さすがにそんなことはないはず。過ぎてしまったことは仕方がない、考えるのは止めよう…
おっと、話が逸れてしまった。だから、ここで魔力を放出し、万が一王宮に傷でもつけたら大変だ。でも、魔力を放出しないと、私の命が持たないわ。後2日程度は大丈夫だろうけれど。早急に解消しないといけない問題ね。
もういっそのこと、オルビア様に正直に話して、どこか安全な場所で魔力を放出させてもらうか。でも、魔力を持たないオルビア様が、私の魔力放出を見たら、きっとびっくりするわ。もしかしたら、怖がって追い出されるかもしれない。それは避けたい…
一体どうしたらいいのかしら…
その日は魔力の放出の事ばかり考え、あまり眠れなかった。翌日、朝食を摂る為、食堂へと向かう私。
既に食堂には陛下もオルビア様も来ていた。
「お待たせして申し訳ございません」
私は急いで席に座ろうとしたのだが
「シャーロット嬢、顔色が良くない。まさか体調がすぐれないのかい?」
心配そうに私の元に駆け寄ってきたのは陛下だ。こんな風に誰かに心配してもらえるなんて、いつぶりかしら。久しぶりに温かい気持ちになった。
「ありがとうございます陛下。でも、大丈夫ですわ」
にっこり微笑む。
「それなら良いのだが…」
なぜか陛下は赤い顔をして、自分の席に戻り黙々と食事をしている。陛下の方こそ、熱があるのでは?
「もう、お兄様ったら!そうだ、シャーロット。今日私と一緒に街に出ない?海も見せてあげるわ」
「本当ですか!嬉しいです。ぜひお願いします」
あの美しい海を近くで見られるのね。それに王都の街も見学できる。めちゃくちゃ楽しみだわ!
「シャーロットは本当にわかりやすいわね!そんなに嬉しそうな顔しなくても」
クスクス笑う、オルビア様。だって楽しみなものは楽しみなんだもの!
食事の後は、フェアラ様に手伝ってもらい、急いで準備をする。今日は街に出ると言うことで、ワンピースを着せてもらった。そろそろ服くらい自分で着れるようにならないとね。
そう思いながらも、ついフェアラ様に甘えてしまう。私ってダメね。
「シャーロット、準備できた?」
オルビア様が迎えに来てくれた。
「はい、出来ました!行きましょう」
2人で手を繋いで馬車へと向かう。
「馬車で街まで出たら歩くけれど、大丈夫?」
「はい、私、歩くのは好きなんです!」
窓の外を覗くと、目の前にはエメラルドグリーンの美しい海が広がっている。その手前には、街も見える。なんて素敵なのかしら。
しばらくすると目的地に着いた様で、馬車から降りる。
オルビア様は私が迷子にならないようにと、しっかり手を繋いでくれるのだが…
私もう15歳なのよ。迷子になんかならないわ。そう思いながらも、オルビア様の手をしっかり握る。
人の温もりってこんなにも温かいのね。ふと、そんなことを考えてしまった。街には本当にいろんなものが売っており、見たことない魚や貝たちもたくさん売られている。貝殻や奇麗な石を使ったアクセサリーなどもあった。
「オルビア様、この石たち、本当に奇麗ですね。こんなにたくさん売られているなんて」
「それは珊瑚と真珠よ。どちらも海で採れるものなの。とっても奇麗でしょう」
珊瑚と真珠。こんな美しいものが海で採れるのね。見た感じ、真珠の方が高価なようで、珊瑚はワゴンの様なものの中に大量に入って売られている。
「真珠は貿易にも使われているほど、とても貴重なのよ。その点、珊瑚は比較的手軽に手に入るから、庶民の間でも人気なの。シャーロット、欲しいなら買ってあげるわよ。やっぱり真珠がいいかしら?」
オルビア様が真珠のネックレスを手に取っている。待てよ、この大量に売られている珊瑚、私の魔力放出に使えるかもしれないわ。
「オルビア様、私この珊瑚が欲しいです。できれば沢山…」
ちょっと図々しかったかしら?
「珊瑚でいいの?真珠じゃなくて?」
不思議そうな顔をするオルビア様。
「はい、珊瑚がいいです」
「わかったわ。じゃあ、珊瑚を好きなだけ買っていいわ」
やった!
「ありがとうございます。オルビア様」
とりあえず、珊瑚を20個程度購入した。これでしばらくは持つだろう。
買い物の後は王都で人気の魚料理のお店で昼食だ。王宮の料理もおいしかったけれど、このお店の料理も本当に美味しいわね。
「シャーロット、これも食べてみて。美味しいわよ」
見たこともない切り身?が並んでいる。
「オルビア様、これは一体何ですか?」
「これはお刺身よ。新鮮なお魚をさばいて、そのまま調味料を付けて食べるのよ」
これは生のお魚って事よね。食べられるのかしら…でもせっかく勧められたのだし。
私は一切れフォークで刺すと、調味料を付けてゆっくりと口に入れる。
「とても美味しいです、オルビア様!今まで食べたお魚料理の中で一番美味しいです」
私は夢中でお刺身を食べる。こんなおいしいお料理がこの世にあったのね。
美味しくて、オルビア様の分を残すのを忘れてしまったわ!
「あの、オルビア様。申し訳ございません。全部食べてしまいました…」
「アハハハハ、シャーロットはお刺身が気に入ったのね。私は食べ慣れているから、気にしなくていいわ」
なぜか笑われてしまったが、怒られなくて良かった。
美味しい食事でお腹を満たした後は、待ちに待った海だ!
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