第70話 ついに魔王が復活しました
”エイリーン、あなたが作った魔石、私が少し改良しておいたわよ!後、首から下げられるようにネックレスタイプにしておいたわ”
「ありがとうフィーリップ様」
先日無事ダンスパーティーも終わり、いよいよ魔王が復活する。魔王復活までに何とか5つの魔石を完成させることが出来た。もちろん、全て魔力数値3000以上のものだ!
完成した魔石を、フィーリップ様がより強力に改良してくれた。私の血を混ぜているせいか、真っ赤に染まった水晶はまるで私の髪みたいね。
「もうすぐ魔王が復活するでしょ。フィーリップ様はどうするの?魔術師として魔族と戦うの?」
私はずっと疑問に思っていたことを聞いた
“戦うわけないでしょ!確かに私は魔力量は高いけれど、戦闘能力はものすごく低いのよ!第一攻撃魔法なんて使ったこともないわ”
「でも一応王宮魔術師を目指しているのでしょ?ならば、戦いには参加した方がいいのではなくって?」
“それとこれとは話が別よ!第一魔王討伐は本来聖女と騎士団の仕事でしょ。私には関係ないわ。それに、私魔族って嫌いなのよね”
好き嫌いの問題じゃないと思うんだけれど…
“だからエイリーン、さっさとリリーたち連れて、魔王倒しちゃってね”
めちゃくちゃ簡単に言うフィーリップ様。フィーリップ様が戦いに参加すれば、めちゃくちゃ戦力になると思うんだけれどな。
でも本人がああいっているから、絶対何が何でも戦いには参加しないだろうな…
フィーリップ様と話をした翌日。私は生徒会室で作業を行ってた。
その時だった!
突然リリーが震えだす。
「リリー、どうしたの?大丈夫?」
心配になり、私が声をかける。フェルナンド殿下もリリーを支えている。
「わからない…わからないけれど、何かとてつもなく邪悪なパワーを感じるわ」
それって…間違いない。
「魔王が復活したんだわ…」
「魔王?」
私のつぶやきに反応するカルロ様。しまった、ついうっかり思ったことを口に出してしまったわ。
「えっと…確か本で読んだの。数百年に1度魔王が復活するって。とてつもなく邪悪なパワーって言ったから、魔王かなって思っただけ」
とりあえずごまかしてみた。
「エイリーン嬢の言っていることは、あながち間違っていいないかもしれない。前回魔王が復活してから、300年近くたっている。いつ魔王が復活してもおかしくないはずだ。そして、リリーは聖女だ。魔王の邪悪な魔力を感じても不思議ではない」
「じゃあ、本当に魔王が…」
「まだわからない。でも今すぐ調査する必要がありそうだ。兄上、とにかく至急王宮へ戻ろう。エイリーン嬢、すまないがリリーを頼む」
「わかったわ。リリーは任せて」
カルロ様とフェルナンド殿下は、急いで王宮へと戻っていった。
「さあ、リリー。私たちも、とりあえず家に帰りましょう。家まで送るわ」
震えるリリーを何とか立ち上がらせ、馬車へと乗せる。
「大丈夫よ!きっと大丈夫!」
私はリリーの背中をさすりながら、何度も大丈夫と繰り返す。まるで自分に言い聞かせるように…
調査の結果、やはり魔王が復活したとのこと。あちこちで魔族が大量発生し、騎士団たちはその対応に追われた。エイドリアンも騎士団長として毎日魔族との戦いに繰り出しているのか、ここ数日家に帰ってきていない。
本当は今すぐにでもエイドリアンに魔石を渡したいけれど、帰ってこないものは仕方がない。
魔王復活により、貴族学院も無期限の臨時休校となった。
「お嬢様、リリー様がいらっしゃいました」
え、リリーが?
「ありがとう、居間に通して」
私もすぐに居間へと向かう。
「エイリーン様」
私の姿を見ると抱き付いて来るリリー。リリーの話を聞くと、どうやら明日正式に聖女として、魔王討伐の指令が下りるとのこと。それに伴い、明日登城するよう、王宮から連絡が入ったらしい!
「エイリーン様、私怖くて怖くて!本当に私に魔王が倒せるのか、めちゃくちゃ不安なんです。フェルナンド様やカルロ殿下も一緒に付いて来てくれるらしいけれど、それでも怖くて…」
泣きじゃくるリリーを必死になだめる。そうか、明日ついに指令が下りるのね。
「リリー、落ち着いて!あなたは聖女よ。きっと大丈夫。今日は私を訪ねて来てくれてありがとう!あなたの無事を祈っているわ!」
しばらく泣いて話して落ち着いたのか、リリーは帰って行った。リリー、明日の指令の件、教えてくれてありがとう。これで私も動けるわ!
「アンナ、お父様が帰ってきたらすぐに教えて」
「旦那様がですか?承知いたしました」
不思議そうな顔をするアンナ。そして夕食が終わった頃、お父様が帰って来たとアンナから連絡があった。
「お父様!大事なお話があります」
お父様は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに自分の書斎へ私を招き入れてくれた。
「エイリーン、どうしたんだい?そんな真剣な顔をして」
「今日リリーが訪ねて来たの。明日魔王討伐の正式な指令が下りるって。リリーの他に、カルロ様やフェルナンド殿下も一緒に討伐に行くと聞いたわ」
「ああ…そうだ。今我々の国は、危機的状況だ。一刻も早く魔王を封印する必要があるからな」
「それはわかっています。それで、お父様にお願いがあってここに来ました。どうか私もその討伐に参加させてください!」
「エイリーン、それはダメだ。お前は令嬢だ。そんな危ない戦いに参加させられない!」
予想通り、お父様は反対する。
「確かに私は令嬢です。でも、私は8歳から治癒魔法や攻撃魔法をより使いこなせるよう、魔力量を高めてきたわ。魔力量で言えば、エイドリアンと同じくらい、もしかするとそれ以上。そして何より、私はリリーやカルロ様が戦いに出ているのに、家で指をくわえてみているなんて出来ない!お願いお父様!私も討伐に参加させて!どうかお願いします!」
深く頭を下げた。お父様はしばらく考えた後、目に涙を浮かべて天を仰いだ。
「魔王が復活して以来、お前が討伐に参加すると言い出すのではないかと、正直覚悟はしていた。でも…実際に言われると辛いな。できればお前には、そんなところに行かせたくない!でもきっと言い出したら聞かないんだろう?分かった、好きにしなさい。ただし、明日自分で陛下に直談判すること。それでOKが出たら、行ってもいいだろう」
「お父様、ありがとう!親不孝な娘をお許しください」
私はお父様に抱き着いた。きっとお父様も辛いのだろう。それでも行かせてくれると言ってくれたお父様。ありがとう!
「お父様、そう言えばエイドリアンは魔王討伐が終わるまで、ずっと戻ってこないの?」
お父様にずっと気になっていたことを口にする。
「そのことなんだがな。今回魔王討伐団として、第2部隊がリリー嬢や王子たちと一緒に魔王がいる洞窟に行く事になった。その為、団長のエイドリアンは王宮に泊まり込んで、日夜作戦を練っている。明日には帰ってくるよ」
そうだったのね。ならば、エイドリアンには魔王討伐に行く際、皆と一緒に魔石を渡そう。
とにかく明日、陛下に討伐参加の許可を取らないといけない。まあ、お父様が承諾してくれているから、多分大丈夫だとは思うけれどね。
そして翌日、私は朝お父様と一緒に、登城する馬車へと乗り込む。
「どうして?なぜエイリーンまで馬車に乗り込むの?」
お母様が泣きそうな顔で問いかけてきた。エイドリアンが魔王討伐部団になったと聞いて以来、心配からか食事をほとんどとらなくなったお母様。
「大丈夫よ、お母様。カルロ様に会いに行くだけだから」
とっさに嘘を吐いてしまった。見送りに来たアンナも不安そうな顔をしている。お母様、アンナ、ごめんなさい。
心の中で謝った。
馬車の中でお父様に「やっぱり討伐参加を止めてもいいんだぞ」と言われたが、もちろん止める訳がないと言うと、お父様はやっぱり悲しそうな顔をした。
自分で決めたことだ。たとえ親不孝者だとしても、私はこの討伐に絶対参加する!それだけは譲れないのだ。
王宮に着くと、既に国王陛下、カルロ様、フェルナンド殿下、リリー、エイドリアンがいた。
「なぜエイリーンが一緒に居るんだ?」
カルロ様が真っ先に私の元に飛んできて、疑問を投げかける。私は何も言わずに、カルロ様に微笑む。
「国王陛下並びに、関係者の皆様、お待たせして申し訳ございません。実はエイリーンから話があると言われたので、一緒に連れてまいりました。エイリーン」
お父様に背中を押され、私は陛下の方を向く。
「突然の登城、どうぞお許しください。しかし、どうしてもお願いしたいことがあってまいりました。国王陛下、どうか私を今回の討伐メンバーに加えてはいただけないでしょうか?」
「エイリーン、君は一体何をいっているのだ」
カルロ様がとっさに叫ぶが、それを陛下が制止する。
「エイリーン、気持ちは嬉しいが君は令嬢だ。令嬢にこのような危ない場所へは行かせられない」
「お言葉ですが国王陛下、私は8歳から今までずっと魔力量アップの訓練を受けてきました。攻撃魔法はもちろん、治癒魔法も得意としております。きっと役に立つはずです!」
「なるほど。フィーサー公爵。君はこの件に関し、どのように考えているのだ?」
「私は…父親として言わせてもらえるのであれば、もちろん反対です。可愛い娘を魔王討伐部隊に加えるなど、考えられません。
しかし…総騎士団長としての立場なら、エイリーンの魔力量や戦闘能力を考えると、間違いなく戦力になると考えております。そして何より、娘の気持ちを尊重してあげたいと言う気持ちがあるのも事実です」
「そうか…分かった。総騎士団長の公爵が賛成しているのなら、私が反対する理由もない。エイリーンの討伐参加を認めよう」
「父上!!」
カルロ様が不満の声をあげるが、国王陛下が決めた事。たとえ王太子であっても、覆すことは出来ない。
私はこうして、討伐部隊に参加することが許された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。