人間
バブみ道日丿宮組
お題:少女の宴 制限時間:15分
人間
誰かが犠牲になるのなら、それは不幸でしかない。それを気にせず生きていける人間はもはや人間ですらない悪魔だ。
「……っ」
そう頭の中ではわかっていても僕は止めることができない。できない自分が嫌なのに何もできない。見てること……それが僕が唯一できること
1人が犠牲になるだけで全員が幸せになれる。それを妨害することは1人のために全員が不幸になるということだ。
焚き火の前で舞う今回の生贄である少女の姿を見ればみるほど、僕は憂鬱さでいっぱいになる。
「目をそらすな。次はお前かもしれないのだからな」
「……その方が幸せだ」
「そうか。ならお前は絶対そうしない。せっかくの宴なのだからもう少しまともな顔をしろ。仮にも領主の娘なのだからな」
乱暴に頭を撫でられる。
それでご機嫌がとれると思ってるのだろう。冗談じゃない。親戚の娘を生贄としてるのに悪びれる様子はこれっぽっちもない。
自分が偉いから、自分に選択肢があるから、自分に間違いはないから。強い意志がそこにはある。
「……」
舞う少女と視線があった。彼女は笑い返してくれた。
視線があったのは一瞬だったが、彼女は自分の運命を受け入れてた。
僕とは大違い。
「魔王の娘好きにも困ったものだ。産出量をよくしてくれとな、最近薬をもらった」
領主である父は、緑色の液体が入ったフラスコを見せてくる。
「孕ませることと、成長が4倍にもなるものだ」
「……副作用」
「あぁ当然に人間には効きすぎて排卵がはやくなるらしいが家畜となった人間はそうする以外ないだろう」
魔王。世界を支配してる人間の上位種。その種は生きるために人間を喰らう。特に娘を好む。そうやって少しずつ人間は数を減らした。
今では家畜として増やす実験がされてるぐらいだ。
いつか報いが訪れるとかつての人間は本を書いてた。
まさに今そうなってる。
人間であったものが人間をやめて、人間を支配してる。
僕らはそれを止めることも、引き伸ばすこともできない。
それが人間である証拠……なのだ。
人間 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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