最終章 第26話

早番最終日。


「いきなりだけど、この後って暇?」


苑香が店に来た。


「うん。

ちょっと定時で終われるか分からないけど。」


「じゃあ、待ってる。」


「うん。

そうだ、そこの売場、若い子向けに作ったんだけど、何か意見あったらお願い!」


「了解!」


苑香がこの時間に来るなんて珍しい。

ちょっと心配。

早く仕事終わらせなくちゃ。


「今日は友達とデート?」


「はい。」


「じゃあ、残業しないで帰ったら良いよ。

暇な時に残業して。」


「ありがとうございます。」


店長の心遣いが有難い!

さっさと片付けて、苑香の所へ行く。


「ごめん、待った?」


「ううん。

えっと、この売場なんだけど、コロンとか置いてないの?」


「あぁ……、コロンね、うちの店のは高いんだよね。」


「安いのとか仕入れられないの?」


「うーん、ちょっと今度店長に言ってみる。」


苑香はよくコロンを買っていた。

香水だと学校で怒られたから、コロンにしてるって言ってた。


「あそこの薬局のコロンが安いから、今度偵察したらいいよ。」


「うん、ありがとう。」


「とりあえず、カフェ行こうか?」


「うん。」


私達はカフェに向かった。


「いらっしゃいませ!

お好きな席へどうぞ!」


カフェのバイトらしき女性が出迎えてくれた。

見た事の無い人だった。


「はぁ……。

お腹すいちゃった。」


「私も。」


「何これ?

新メニューのチキンサラダプレートだって!」


「美味しそうだね。」


「あぁ……、でもさ、この季節のピザも美味しいよね。」


「両方注文してシェアしようよ?」


「うん、嬉しい!

今日は私がおごるよ。

いきなり誘ったし。」


「でも……。」


「いいのいいの!」


早速、注文を済ませた。

お金を出してもらうとなると、あれもこれも注文しづらい……。


「それで、今日はどうした?」


きっと何か話したいんだと思う。


「ちょっと、ここじゃ言いづらいけど。」


「言いづらいのに来ちゃったの?」


「うん。

でも小さい声で言う。」


注文した物が運ばれるのを待ってから、話す事にした。

気になってしょうがない。


「お待たせしました。

あっ、来てくれてたのね!

いつもありがとうね。」


胡桃ママが料理を運んで来た。


「今日は胡桃、帰りが遅くなるんだって。

待ってる?」


「いきなり来ちゃったので、また別の日に会いに来ます。」


「そう?

でもゆっくりして行ってね。」


「ありがとうございます!」


美味しそうな料理と胡桃ママの笑顔に癒される。

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