最終章 第25話

順調に仕事も出来て楽しい。

仕事は辞めたくないなと、つくづく思ってた早番二日目の朝。


「雪夏ちゃん、おはよう。」


「おばあちゃん、おはようございます。」


拓哉のおばあちゃんが買い物に来た。


「醤油も油も取りやすくなったね。」


「ありがとうございます。」


「一番上の段のふりかけが取れなくてね。」


「あれもこれも取りやすい位置に置きたいんですけど、難しくて……。」


おばあちゃんの好きなふりかけはあまり売れない商品だったりする。

置いているだけでラッキーだと思う。


「面倒だけど店員に声をかけて下さいね。」


「うん、そうするよ。」


何でも御客様の要望を叶えたい。

でもそれは出来ないのが現実で悩ましい。


「おばあちゃん!

これでいい?」


「うん、ありがとう。

それでいいよ。」


あれ?

今日はおばあちゃんが誰かと来ている?

誰だろう?


「あれ?

雪夏ちゃん?」


「うん。

お久しぶり!」


「ほーんと、久々。

もう話せないかと思ってた。」


「え?」


「だって、拓哉君と別れたって聞いてたから。

でもまた付き合ってるんでしょう?」


「うん……。

付き合ってるよ。」


「拓哉君、落ち込んでたもんね。

その後、頭がおかしくなっちゃった。」


「え?」


「拓哉君って、あぁ見えて誠実でしょう?

なのに会う度に違う女を連れてるんだよ?

頭がおかしいじゃん?」


「まぁ……。」


「ちゃんとそばにいてくれないと、許さないよ!」


「ごめんね、もう離れないから。」


「そっか。

それならいいよ。」


おばあちゃんと来ていたのは、拓哉のイトコの佐藤沙希さとうさきだった。

この沙希ちゃんとは色々あったんだけど、どうにか仲良くなれた感じ。


「ねぇ、もし拓哉君と結婚したら仕事辞めるんでしょう?」


「え?」


「だって、パパが佐藤家の嫁は専業主婦じゃないとって言ってたよ?」


「そうなの?」


そんな話は聞いた事が無い。


「沙希。

その事は夫婦の自由でいいんだよ。」


「え?

何で?

違うの?」


「おじいちゃんは私に専業主婦になる事を要求したよ。

私はおじいちゃんを好きだから、それでいいですよって言った。

でもね、私は実家の農作業の手伝いが好きでね。

こっそりバイトしてたよ。」


「え?

そうなの?」


「うん。

だから、おじいちゃんにこの話は内緒ね!」


「分かった。」


きっと私も内緒にしないといけない話。


「雪夏ちゃんは気にしなくて良いからね。

二人で決めたら良いから。」


「はい。」


拓哉と仕事の事って話した事があったっけ?

思い出せないな……。

ちゃんと話した方がいいかな?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る