最終章 第21話

「そうだ、雪夏。

俺の部屋に行こうよ。」


「え?」


「学生の時のまま残ってるんだよ。」


「そうなんだ?」


食事を終えて、拓哉の部屋に行く。

実は拓哉の実家に来たのは初めてじゃないけど、部屋に入るのは初めてだ。


「どうぞ。」


「お邪魔します。」


部屋はキレイに片付いている。


「適当に床に座って。」


「うん。」


座ろうとした時に、目についたのが、机の上の写真だった。


「え?

ちょっと、何?

この写真どうしたの?」


「え?

あぁ……出しっぱなしだったか。

忘れてた。」


写真には私が写ってた。

でも私一人で写ってる写真を何で持ってるんだろう?


「どうして写真を?」


「苑香ちゃんがくれたんだよ。」


「え?」


「雪夏の写真って欲しいですか?って言われてね。」


「そうなの?」


「これ、マジで可愛いと思ったからもらったんだ。」


「そういうのは言ってよ?!」


「だってさ、この写真飾ってるとか照れくさいじゃん?」


「そんな事……。」


「そんな事?」


「どんだけ好きなのよ?って言いたくなるかも……。」


「それな。

好きって言うかさ……。」


「ん?」


拓哉が私を抱きしめる。

そして、耳元で、


「愛してるよ……。」


そう言った。

心臓がおかしくなっちゃったみたいに、滅茶苦茶ドキドキする。


「雪夏、顔、真っ赤!」


「ちょ……。

見ないで!」


「見せて。

可愛いんだから。」


「やだやだ。」


「もう、マジうるさい。」


拓哉が私の口を塞ぐようにキスをする。

数えきれないくらいキスしてたはずなのに。

ドキドキが止まらない。

長い長いキスの途中で、このドキドキが伝わったら恥ずかしいなとか。

そんな事を考えていたら……。

いきなりドアがガバッと開く。


「拓哉ぁ!

あっ、失礼しました……。」


思わず、私達は離れた。

ドアを開けたのは裕美さんだった。

そして、私達を見て、ニヤニヤしながらドアを閉めた。


「あぁ……もうっ!

ちょっと待ってて。」


ドアを閉めた裕美さんを追いかけるように拓哉が部屋を出ていく。

廊下から声が聞こえる。


「いきなり開けるなって、前から言ってるよね?」


「ごめん。」


「で、何の用?」


「何か食後にオヤツ食べる?って聞きに来ただけ。」


「あれだけ食って、まだ他にも?」


「別腹でしょ?」


「今すぐは食えないよ。」


「じゃあ、お腹すいたら言って。」


「分かった。」


「あと……。」


「ん?」


「拓哉って、激しいチューするんだね!」


「そういう事を言うんじゃねーよ。

デリカシー無いな!

早く下に戻れ!」


「またチューしたいから?」


「そういう事言うなって。」


「啓も、してくれたらいいのにな。」


「本人に言え!

って、弟とする話じゃねーよ!」


「そんな、照れる事無いじゃん。

あんなチューするくせに!」


「だから、そういう事言うな。

早く帰れ!」


「姉ちゃんに冷たいなぁ。」


「はいはい。

もう部屋に戻るから。」


「ふーん。」


拓哉がイライラしながら部屋に戻って来た。


「雪夏、ごめん。」


「ううん。」


「こういう事があるから、雪夏を部屋に呼ばなかったんだ。」


「そうなんだ……。」


もう裕美さんと顔を合わせるのが恥ずかしい……。

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