第3章 第17話

「せんぱーい。

起きてくださーい。」


「あっ、ごめん……。」


仕事が終わって、佐藤先輩を連れて帰ろうとしたら……寝てた。

でも起こしたらすぐに起きてくれた。


「歩けます?」


「肩か腕に掴まっていい?」


「いいですよ。」


佐藤先輩は申し訳なさそうに腕に掴まる。


「もっとしっかり掴まって!」


「だって……もう別れてるし。」


「別れてるとか言ってる場合じゃ無いでしょ?!」


「そうか……。」


佐藤先輩が私の腰に手を回した。

凄く懐かしい感覚……ドキドキする。

……って、ドキドキしてる場合じゃない!


「やっぱ、病院行きません?」


「風邪薬……で治るだろ……。」


「いつもそれでこじらせるじゃないですか!

こじらせたら会社に迷惑かけますよ!」


「ハハハ……何か懐かしいな。」


「え?」


「前にもそう言われたな。

受験控えてるのに、こじらせたら困るでしょって……。」


「あぁ……。」


確かに前にもそんな事があった。


「雪夏、どの病院行けばいい?」


「前と同じ所にしたら?」


「一緒に行ってくれる?」


「いいよ。」


前もこんな感じで病院に連れて行った。

病院に行く途中、知らない女性が近付いて来る。


「拓哉?!」


「ユリ……。」


ユリ?

知り合いなのかな?


「あれって本当に別れる気だったの?」


「お前……水かけて逃げて、別れる気が無いとか言うのかよ?」


「別れればいいって簡単に言うから!」


女性が佐藤先輩に掴みかかる。


「ごめん、もうお前とは無理だ。」


「何でよ?

あんなにいっぱい抱いてくれたじゃない!

遊びだったの?」


「遊びじゃねぇよ。

ごめん、俺、具合悪いから、話してられねぇ。

ゴホッゴホッ……。」


「また、仮病使って!

この前だって、プールの後に熱出したって嘘言ってたじゃん!」


「嘘じゃねぇよ。

熱出たから、風邪薬飲んだら良くなっただけだろう?

マジで、頭が痛くなって来た。

ほーんと、無理。

別れてくれ。」


「嫌よ!

どうせ、この女と浮気してるんでしょ?

私が彼女よ!」


私は突然女性に肩をドンっと押される。


「私は彼女でも何でも無いんで、早くこの人、病院連れてって下さい。」


「はぁ?

仮病じゃん?

だって、この人熱があっても平気でエッチするのよ?

おかしいでしょ!」


「おかしいですよね。

まぁ、その時はたいした事無かったんですよ。

今は仮病じゃ無いんで、連れてって下さい。」


「はぁ?

私、病院嫌いなのよ。」


「分かりました。

じゃあ、私が連れていきます。」


「だから仮病じゃん?」


「どこが仮病なんです?

こんな顔が赤くて苦しそうなのに?

もう別れるかどうかは、後で元気になったら話して下さい。

もう行くんで、邪魔しないで下さい。」


「はぁ?」


「邪魔すんなよ、面倒くさい。

彼女のくせに彼氏の体の事も分からないなら、さっさと別れて!

迷惑!」


とうとう……私がキレた。


「あんたに言われる筋合い無い !」


「ユリ、やめろ。

こいつの言う通りだ。

お前が何を言おうと別れる!」


「はぁ?

もう最悪!

こっちから願い下げ!

さようなら!」


やっと女性が去ってくれた……。


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