第3章 第14話
「いやぁ……本当に久々な気がするね!」
苑香が言う。
「そこまで久々じゃないでしょう?」
「だって毎日会ってたのが会えないんだよ?
そんなの久々じゃん?」
「まぁ……そうだけど。」
今日は私も苑香も休み。
軽部先輩は仕事中。
「この前、佐藤先輩にお金出してもらったじゃん?
あの後、何か言われた?」
「え?
どうした?
佐藤先輩の事、雪夏が言い出すなんて。」
「うん……。
何か言われたか聞きたかった。」
「お釣り返そうと思って軽部先輩経由で言ったら、もしまた雪夏落ち込んだりしたら、その時に使っていいって。
雪夏、立ち直り早いけど、めっちゃ落ち込んだりする時あるじゃん?
そういうの知ってるよねー、あの人。」
「そうなんだ。
ちゃんとお礼を言えば良かったかな?」
「え?」
キョトンとしている苑香に佐藤先輩が職場に配送しに来たと伝えた。
「あぁ……そういえば佐藤先輩の所、ドラッグストアにも配送してるんだったわ。
うちは他の配送なんだけど。」
「そうなんだ。」
「佐藤先輩、夜勤しかしてないっぽいし、また雪夏が夜勤の度に会うかもね?」
「そうだね。」
私は苑香にドキドキした事は言えてない。
どうしてそんなにドキドキするのか、自分でも分からない。
また付き合いたいとか思わないのに。
「雪夏さぁ、前より佐藤先輩避けようとしなくなったね。」
「え?」
「何だろう?
もうどうでもいいの?」
「どうでもいい……のかな?」
「前は会っちゃうと戻りたくなるみたいな感じだったのに。」
「戻らないよ。」
「そっかぁ……。」
苑香が残念そうに呟く。
戻らないと言い切ってみたとたん、何かモヤモヤする。
私は……どうしたいんだろう?
「それでさぁ。
聞いてくれる?
雪夏に一番先に報告したかった事。」
「え?
何?」
「私さぁ、軽部先輩と同棲する事になった。」
「え?」
「ビックリしてるの?」
「ビックリするでしょ?」
「そっかぁ。
ごめん。
驚かせて。」
「ううん、いいの。
苑香が幸せなら。」
「うん、幸せだよ。」
苑香がとても穏やかな表情をしている。
「軽部先輩がさぁ、うちに来て、結婚前提で同棲したいって言ってくれたの。」
「そうなんだ。」
「うちの親泣いちゃってさぁ。
もう意味分かんないけど、OKしてくれたんだ。」
「良かったね!」
「うん。
雪夏が支えてくれたからだよ。
最近だってさ、生理の心配までしてくれてさ……。
ごめん。
泣けてきた。」
苑香が泣いている。
「ほらー、泣かないの!
嬉しい事だから笑って!」
「うーん、止まらなーい!」
「ほら、また目が腫れるーってなるでしょう?」
「あーっ、そうだった。
でもさー、くすん……。」
「今度は軽部先輩が生理の心配するでしょう?」
「男には分からないよぉ……。」
「分からないか。
じゃあ、いつでも連絡してよ。
仕事じゃなきゃ平気だから。」
「うん……。」
苑香の涙が止まりそう。
「胡桃や秋奈には?」
「あとで連絡する。」
「そっか。
話してくれてありがとう!」
「うん……。
聞いてくれてありがとう。」
苑香には本当に幸せになって欲しい。
だから幸せそうでホッとした。
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