第3章 第12話

夜勤二日目。


「あれ?」


見覚えある人が店にいる。


「あっ、雪夏ちゃん!

こんばんは。」


「オジサン!

……じゃなくて、社長!

何してるんですか?」


社長が何故か店の片隅でウロウロしていた。


「探し物ですか?」


「うーん、探し物って言うか、この角の商品って売れてるのかな?って思って。」


「あぁ……そこ見辛いですよね?」


スポットライトが欲しいかも?という位、ちょっと暗い場所がある。


「ここに置いても売れる物を置けばいいんだよね。

でもさ、売れ筋を奥に置くのもね?」


「それなら、出入口に近い所に一番売れてるのを置いて、他にも奥にありますって書きます?

あぁ……誘導するタイプね?」


「よくお店に書いてありますよね?

見るであろう場所に貼り紙あって、他にもこのコーナーあるよ!みたいな。」


「あるある。

店員も迷子にならなくていいね!」


「え?」


「店員が迷子に?」


「そうそう、それで苦情になるの。」


「あぁ……店員用にマップ作った方が良いですかね?」


「でもさー、そんな時間ある?

忙しいでしょ?」


「そうですね、もう少し店員増やしたら……。」


「うーん、検討しようね。

お給料払うんだからね。」


「そうですね。

ところで今日は何か用事があったのでは?」


社長が店に来る理由って何だろう?


「誰にも言わないでくれる?」


「え?」


「み・ず・む・し!」


「はい?」


「雪夏ちゃんなら言わないでしょう?

社長が薬を買っていったって。」


「誰に言うんですか?」


「専務とか?」


「言いませんよ。

怒られるでしょうから。」


「そうなんだよ、病院行けとかね。

私、忙しいのに。」


「忙しいのに二日酔いはダメですよ?」


「大丈夫!

今日は飲んでない!」


「本当に気を付けて下さい!

それで、その薬、レジのお兄さんしか売れないですよ?」


「うん、あの人は口がかたいから平気よ?」


常習犯……いや常連さんなのかも。


「いつも買ってるんですか?」


「ハハハ、内緒だよ!」


「それ、こじらせてません?」


「皮膚科通ったけど、市販薬の方が効くんだよね。

何でだろう?」


「違う皮膚科通ったらどうです?」


「あぁ……なるほど!

じゃあ、今回の新商品使ってダメなら行ってくる!」


「もしかして、自分で試してから売りたいとか?」


「それもある。」


社長が薬を持ってレジに向かった。


「あっ、社長。

痔は治ったんですか?」


轟さんは社長と仲良さそう……。


「女子の前で痔とか言わないで!」


「あっ、すみません。

その後どうです?」


「元気元気、ありがとうね。」


「それで、また水虫復活ですか?」


「なーんか、痒いんだよね。」


「これでダメなら病院行って下さい。」


「これで治らなかったら病院行くよ。

雪夏ちゃんと約束した!」


「女子に水虫って言ったんですか?」


「だってバレるじゃん?」


「そうですか。」


轟さんは冷静に対応してる。

笑ったりしないのかな?



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