第2章 第38話
「はぁ……。
次は私の番だ……。
緊張するなぁ……。」
胡桃が毎日そう言っていた。
でも無事に専門学校の入試を終えて、今日、学校に合否通知が届いた。
担任と一緒に進路指導室で開封するらしい。
「あぁ……うちらまで緊張する!」
「だよね。」
「落ち着きなさいよ……。」
私と苑香と秋奈は進路指導室の前で待っていた。
全員でそうしようって決めたから。
「ねぇ、こういう時、歌でも歌えばいい?」
「え?
何で?」
「落ち着くかな?って。」
「廊下に響くよ……恥ずかしくないの?」
「うーん、恥ずかしくないけど、やめておこう!」
苑香が歌いそうだったから焦った。
「うーん、まだかな?
あっ、来た!」
胡桃が進路指導室から出てきた。
胡桃に真っ先に話しかけたのは苑香だった。
「どうだった?」
「うん、大丈夫だった。」
「え?」
「合格だよ!」
「ん?
合格?
マジで?」
「うん。
秋奈がオープンキャンパス行った方が良いって言ってくれてね。
それでこっそり行ってたのよ。
それが良かったみたい。」
「こっそり行かなくてもいいじゃん?!」
「だって、苑香、行きたがるじゃないの!」
「うん、一応ね?!」
秋奈は本当に的確にアドバイスしてくれる。
すでに進路が決まった三人で、秋奈に何が出来るだろう。
「雪夏、何、考えてるの?」
「え?」
「私なら平気よ。
どうせ、残った私に何かをしたいとか言うんでしょう?
息抜きの手伝いでもしてくれたらいいのよ。」
「そうか。
息抜きしたい時は言ってね!」
「うん、勿論!」
秋奈は冷静だ。
緊張しないのかな?
「私は自分の事で緊張しないのよ。
友達の事の方が緊張するわね。」
「え?」
「そんなふうに見えないって表情してるから。」
「そう……かな?」
「うん。」
秋奈みたいに周りに緊張するのを隠せているって凄い。
隠してるつもり無いだろうけど。
「胡桃の所のカフェで勉強なんてしていいのかしら?」
秋奈が胡桃に言った。
「いいよー!
混んで来たら、家に来てもらうけど。」
「そうなのね。
良かったわ。
やっぱり人が沢山いる場所で集中する事にも慣れておきたいのよ。」
「ちゃんと親にも話しておくわ。
カウンターなら、混んでいても空いてる時が多いから、気にしないで。」
「あら、本当に?
じゃあ、御言葉に甘えて。
勿論、何か注文させていただくからと伝えて。」
「うん。
でも気にしないで。
私の友達だから。」
秋奈の受験勉強はまだまだ続く。
秋奈も合格して、一緒に笑って新生活を迎えられますように……。
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