第1章 第18話
「ねぇ、今晩泊めてくれない?」
軽部先輩と苑香がデートした日の夜。
苑香が家に来た。
「いいけど……。」
何となく察した。
これは今晩、長い長い夜になる。
「はぁ……。
もうさぁ、予防線ガッツリで無理だった。」
「え?」
「好きな人の話をされたの。」
「え?」
「告白するって言ってた。」
「そうなんだ?」
「誰かに告白されたとしても揺るがない?って聞いたら、揺るがないって。
しかもさぁ……相手誰か知ってる?」
「知らん。」
「姉ちゃんだよ。」
「え?」
実は苑香の近所には、苑香を可愛がってくれていた二つ上の女子が住んでいる。
「姉ちゃんと軽部先輩、バイトが同じだったみたい。」
「知らなかったの?」
「だって別の学校だから疎遠になってたと言うか。」
「でも何で姉ちゃんって分かったの?」
「軽部先輩に、私の妹分が同じ高校にいるはずだけど知ってる?って聞いたんだって。」
「うん……。」
「まさかね、二人で私の話をしてたとはね。」
「……。」
「だから私を妹扱いしてたんだよ。
もう、やだ。
姉ちゃんには勝てない。」
「それで……告白しなかったんだ?」
「無理。
姉ちゃんにそれ言ったら、もし両思いでも姉ちゃんはごめんなさいって言うかもしれない。」
「だから言わない?」
「うん……言えん。
無理。
折角考えて行ったのに、いきなり姉ちゃんの話だよ。」
「そっか。」
「ごめんね、雪夏は別れたばかりで辛いのにこんな話。」
「いいよ、気にしないで。」
好きなのに気持ちを伝えさせてもくれないって状況が切なくて、自分の事はどうでもいいと思った。
苑香は泣きそうで泣かない。
泣きたくないのか泣けないのか……。
苑香が眠くなるまで、ずっと私は話を聞き続けた。
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