第1章 第11話

「雪夏を部屋に呼んだの久々だよな。」


「うん……。」


佐藤先輩は受験に集中するつもりだったのか、しばらく私を部屋に入れなかった。

学校で会ったり、学校の帰りにデートをする事はあった。


「やっぱ、部屋に二人きりだと我慢出来ないや。」


「え?

な、何?!」


佐藤先輩は私をひょいっと抱えて、ベッドに連れてった。


「せ、先輩?

私、お風呂に入ってない……。」


「いいよ、お風呂に入ってても入ってなくても、雪夏は雪夏だよ。」


「で……でも……。」


私の口を『うるさいよ』って塞ぐかのようにキスをする。

やっぱり、いつもの佐藤先輩じゃない。

いつもはもっと優しく説得してくれるのに。


「いや……、あっ……。」


佐藤先輩はいつもより荒々しく私の体に触れる。

やっぱり、様子が違う。


「せ……先輩……。」


「ん?」


「いつもと違う……。」


「……。」


「先輩?」


「いつも通りだよ。」


やっぱり違う。

何だか余裕が無い感じがする。


「雪夏……。」


「ん?」


「拓哉って呼んで。」


「え?」


「二人きりの時は呼んでって言ったじゃん?」


「うん……そうだね、た……拓哉。」


「雪夏……。」


「拓哉……。」


拓哉って呼ばれたとたんにスイッチが入ったかのように愛撫される。

こんな時は何を言っても無駄だ。

でも……一方的にされるのは悲しいよ。


「愛してる……。」


愛してるっていう言葉にキュンとしない。

でも久々に触れられて体は嬉しそうに反応してしまうんだ。

こんなの……楽しくないのに。

キモチイイ……って思われちゃうんだ。

せめて、体が反応しなければ。

私が真実を聞く勇気さえ持てたら……。

でも何となく分かってる。

佐藤先輩は、何かあるとこんなふうに乱暴になる。

乱暴って言っても、暴力的とかじゃないんだけど。

マイナスの感情が流れてくるように感じる。

どうしたの?とか、どうして?とか……聞けたらいいのに。

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