第1章 第9話

朝風呂するつもりが寝過ごした……。

佐藤先輩に臭いって思われないかな……でもお風呂に入る暇は無い。


「はぁ……。」


ため息吐いて時計を見る。


「ヤバッ!」


これは遅刻しそうだ……。

でも走ったら汗かいちゃう……。

だけど歩いて行くわけに行かないか……。


「遅刻するなら連絡しろって。」


ゼイゼイ言いながら辿り着いたコンビニで、早速怒られる。


「連絡する暇あったら走った方がいいと思って……。」


「いつも言ってるんだけどさ、遅れた事に怒ってるんじゃないよ?

事故とかあったら心配だろう?」


「うん……ごめんなさい。」


「ほら、ジュース買ってやるから、中に入ろうぜ?

どうせ水分補給してないんだろう?」


「うん……してない。」


「冬でも水分足りなかったら脱水だよ。

分かる?」


「うん……。」


「俺も喉渇いたし、ほら、早く。」


佐藤先輩が私の手を握る。

こんなふうに手を握られるのが久々で、ドキッとした。

初めてじゃないのにね。


「あっ、これ、お前が好きなヤツじゃん?」


「うん。」


大好きな林檎水。

佐藤先輩には不評。

林檎ジュースの方が美味しいって言われる。


「あっ、ポテチ、限定味が出てるじゃん!」


「ハハハ、先輩、本当に限定好きだよね?」


「当たり外れあるけどなぁ。」


「この前のあれ、イカスミ味か。

何か苦手だったわ。」


「歯も舌も黒くなったんだっけ?」


「そうそう。

お前いる時じゃ無くて良かったわ。」


「何で?」


「歯も舌も黒い俺とエッチな事出来るか?」


「……。」


「ハハハ、こんな所でする話じゃないって怒ってる?」


「怒ってない。」


「ごめん、こういうのデリカシー無いって言われるんだよな。

だから、モテない。」


デリカシー無いままでいいよ、私が彼女でいる間はモテたら困る。

でも本人に自覚が無いだけで、かなりモテてるんだよね。

だからこそ……。

何でも話して欲しいんだけどな。


「何、ボーッとしてるんだ?

もう買い物終わりでいいか?」


「うん。」


私達は会計を済ませてコンビニから出た。

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