dress.
霜月ミツカ
Mother -1
玄関でパパに抱きしめられるママの姿を見てしまった日は、それだけで最悪の一日だ。パパにひっつくママの後ろ姿はか弱い少女で、普段のママとは別人だった。
パパはママを抱きしめる腕をなかなかゆるめようとせずママの服に皺をつくっていた。
何より憎たらしいのが、その様子を娘が観察しているなんてまったく意識せず、熱く抱擁しつづけていることだった。
ひとしきり、お互いの感触を確認したあと、パパが腕をゆるめてママに一度軽くキスをする。これがこの恍惚な時間の終わりの合図だ。
わたしは息を潜めてすぐに逃げられるように準備をする。
「行ってきます」
パパが世界中でママにしか聞き取れないくらいの声量でそう言う。ママはいつもパパに「行ってらっしゃい」と言っていたのか、わたしには聞き取れなかった。
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