両親の借金を返すためにヤバいとこへ売られた俺、吸血鬼のお嬢様に買われて美少女メイドのエサにされた

青野 瀬樹斗

#1 地球と異世界が交流している世界

俺の仕事は美少女メイドさんのエサになること


 ──俺はエサだ。


 いきなり何を言っているんだと思うだろ?

 でも正真正銘の正気だし、俺──辻園つじその伊鞘いさやが雇い主から課せられた正式な役目なのである。

 言葉だけで見ればブラック企業の社畜も真っ青な所業だが。


 しかしエサになった俺という存在は、二人の美少女メイドにとっては生きるために必要なのである。


「はむ……っ、んくっ、ん……は、伊鞘君……」


 その内の一人──緋月あかつきサクラが正面から抱き着き、俺の首筋に顔を埋めるように密着していた。

 腰まで伸ばした銀髪、鮮やかなくれないの瞳、醒めるような冷たさを感じさせるくらいに綺麗な顔立ちをしている。

 しかし今の彼女にクールな面影は微塵も無く、艶やかな吐息を零しながら


 ──そう、彼女は人間じゃなくて吸血鬼だ。


「く……っ」


 文字通り刺す痛みが走り、ジクジクと熱した鉄を押し付けられるような感覚が続く。

 首筋が火傷しそうなくらいに熱い反面、手足の指先が冷たくなっている気がする。


 サクラはある事情から吸血が苦手で、どうしても痛みを伴ってしまう。


 一般的な吸血鬼は吸血する際、麻酔のような特殊な体液を流すことで対象の苦痛を和らげられる。

 その体液の副作用でよくある吸血されるとエロい反応が起きたりするワケだ。


 こうも痛みが続いていると、そんな余裕はまるで無いのだが。


 それでもサクラが生きるために吸血行為は必須だ。

 あまり痛がってしまえば彼女はきっと遠慮してしまう。

 だから俺はただ黙ってサクラに血を吸わせる。


 楽だとは嘘でも言えないけれど、何もかも辛いってワケでもない。


「あ~む♡ ちゅる、ぺろ……ふふ。きもちいーいぃ? いっくん」 

「う、ぉ……!」 


 何故ならもう一人の美少女メイド──咲葉さきばリリスもいるからだ。


 ツーサイドアップに束ねられたピンクの髪、宝石のように円らな紫の瞳、ほんわかとした可愛らしい顔で、綺麗系のサクラとは対照的な容姿をしている。

 何より際立つのがはちきれんばかりの巨乳だ。


 そんなリリスが背後から抱き着き、甘い吐息と共に俺の耳たぶを口に含むと生暖かい舌で舐め回してくる。

 ゾワゾワと背筋にくすぐったさと微かな快感で、吸血による痛みが幾ばくか和らいでいく。

 あまつさえ背中にはリリスの豊満な部分がダイレクトに密着していて、その形容出来ない柔らかさがいっそう滾らされる。


 サクラと同じくリリスも普通の人間じゃない。

 吸血鬼とも違う種族──サキュバスなのだ。


 彼女が生きるために必要なのは精気で、こうして俺に快楽を与えることで漏れ出る精気を吸収している。

 あまり効率的ではないそうだが、互いの純潔を保ちつつ間違いを起こさないためにはこれが一番だという。


 そもそも彼女達とは同じ雇い主の元で働く同僚で、同じ学校に通うクラスメイトでもある。

 クラスでは二大美少女と呼ばれている二人が、まさか俺とこんな関係にあるなんて思いもしないだろう。

 

「んく、んく……」

「れろ……」


 ちなみに美少女サンドイッチにされている俺だが、未だに童貞である。

 だって雇い主に『付き合ってもないのに手を出したら殺す』って釘刺されてるし。


 まぁそうでなくともそんな真似をする度胸はない。


「はぁ……伊鞘君の血、いつも美味しいです……」

「ん~! いっくんのせーき、今日もマジ美味ぃ~♡」


 たっぷりと時間を掛けて食事を終えた二人は、満足げな表情を浮かべる。

 身体張ることでこんな風に喜んでくれるんだから、邪な考えなんて簡単に吹き飛ぶ。


 さて、そろそろ俺がエサになった経緯でも話そうか。


 事の始まりは──俺が両親に借金返済のために異世界へ売られたことだった。


=====


お久しぶりです。

カクコン後半から参加しますので、よろしくお願いします。


12時に2話目更新します。

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