　リリは脇腹に牛型怪人（ミノタウ）の角が突き刺さっていた。手に持っていた弓を落として、床に転がっていく。

「グフっ、グフっ」

　ミノタウは楽しそうに笑い声を上げる。

そして角を振り回すと、リリを床へと叩きつける。脇腹から銀色混じりの血が流れ落ち、リリの額も床にぶつかった衝撃で裂けて鮮血が頬を伝う。

「雑魚ガ」

　リリを見下ろして、ミノタウは勝ち誇った表情を浮かべる。そしてリリを踏みつけるために蹄を持ち上げると、一気に振り下ろす。

「うあっ…」

何度も、何度も。体重を乗せた蹄がうつ伏せとなったリリの背中に突き刺さる。その度に骨が悲鳴を上げ、そして砕け散る。そして血溜まりに沈んだリリを満足げに見下ろすと、踵を返して人攫いという"仕事"に戻る。

「まだ…終わって、ない」

　ミノタウが振り返ると、満身創痍でぼろぼろになりながらもいつのまにか手に持った弓を杖代わりに立ち上がる。そして痛みとミノタウの暴力の恐怖から体を震わせるが、なんとか震える手を意思で押さえ込んでミノタウへと照準を合わせる。

「私が、頑張らないと…私しか戦えない…だから」

　銀の矢が指先から出て、そのまま弓につがえる。そして限界まで引き絞ると、そのままミノタウへと撃ち抜く。

「遅イ」

　リリの放った矢は、ミノタウの背後の壁へと突き刺さる。リリの視界から消えたミノタウ、そしてすぐさま背後からリリの背へと衝撃が走る。

「弱イ。まったくお前はなんなんダ？」

　ミノタウがタックルした衝撃でリリは床を転がっていき、そしてテナントのガラスをぶち破って服が置いてある棚を薙ぎ倒していくのだった。

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