第3話:追跡者、犬型怪人ヘルハウ
悪の組織
『自分の家に帰りたい』という
「かえりたいかえりたいかえりたいかえりたかえりたいかえりたい」
同じ言葉を繰り返し、出口を求めて一気に走り出す。だが、すぐさま異常を知らせるサイレンが施設内に響き渡る。そしてわらわらと影の様に紛れた漆黒の
狭い通路をまるで壁のように切っ先や槍先が仄かな明かりを受けて光る。
「かえりたいかえりたいかえりたいかえりたかえりたいかえりたい」
(おいっ、落ち着けよ!)
奏矢は銀混じりの
壁のように密集した切っ先の壁のその脇を疾風のように駆ける銀混じりの人型が、槍先や剣先で突かれながらも突破していく。打ち倒し、殴りつけ、蹴り飛ばして、銀混じりの
「おい、この不良品。どこに行くつもりだ?」
「かえりたいかえりたいかえりたいかえりたかえりたいかえりたい」
(……なんだ、こいつ。犬みたいな怪人だな)
「おいおい、
首をバキバキと鳴らす犬顔の怪人。黒の毛皮に筋肉が隆々、そして辺りには硫黄臭が立ち込めていた。犬型怪人は面倒臭そうにあくびをすると、伸びた爪で己の頬を掻く。
銀混じりの
「シィイイイイイッ!」
鋭い爪で横の壁をスポンジのようにえぐり取り、そのまま怪人は飛礫を投げつけてくる。
飛礫が風を切る音を立てて襲いかかる。鈍い音が辺りに響き、銀混じりの
『
「あ?」
ヘルハウと呼ばれてた犬型怪人は動きを止めてスピーカーを見上げる。
そして手の中で瓦礫を遊ばせながら、口から唾を飛ばしながらがなり立てる。
「……俺に命令すんじゃねぇよ、イズミ」
『もう~、本当にヘルハウちゃんったら言うことを聞かないんだから~。その
ぶつりとスピーカーから切断音が響く。ヘルハウはため息を吐きながら銀混じりの
ヘルハウは
(まあ、だからこいつを生きたまま解剖したいんだろうが)
そしてそのまま乱雑に持ち運ぼうとしたとき、
「あ?」
そこには意識を取り戻した銀混じりの
ヘルハウがそのことに気がつくと同時に、手に痛みが走り咄嗟に手を離してしまう。
「物みてぇに人を扱うんじゃねぇよ……!」
「っ!?」
銀混じりの
鈍い音が響き、ヘルハウの額が裂けて血が噴き出す。そしてさらに
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