【オンボロ剣】でも【神剣】にする最強剣士

月風レイ

第1話

「——————というわけで、お主は儂らの手違いによって死んでしまったわけだが、今回の死は儂らの過失であるのでお主には特別に違う世界での新しい人生を与えようと思う」


 目の前にはサンタクロースのような白髭の爺さんがのほほんと、お茶を啜りながら告げる。

 

 だが、突如言われた事に脳の理解力が追いつかず、「はい?」と首を傾げて、白髭の爺さんに聞き返す。


 白髭の爺さんは「コホン」と咳払いをして最初から説明を始めた。


「次はきちんと聞いておれよ。お主は晴天の中、突然の落雷によって感電死した。そして、その異常気象は儂の部下である神が歪み合いをした際に生じたものだったのじゃよ。というわけで、お主は儂らの下らない争いに巻き込まれて死んでしまったというわけだ。本来であればそのまま輪廻転生すれば良いのじゃが、お主の死の原因が儂らとなるとお主が不憫で仕方ないからな。特別にお主には違う世界で新しい人生を与える事にしようと思う」


 白髭の爺さんの話を簡単に要約すると、神のせいで俺は死んでしまったで、その罪滅ぼしに新しい異世界で生きる権利を与えようという感じであろうか。


 俺はそれを聞いて、少しだけ頭に血が昇るのを感じる。


「爺さん、話は分かったけど、最初に言うことはないんか? もっと先に言うことがあるんじゃないか?」


 俺は自称神の白髭の爺さんに問い詰める。

 爺さんはキョトンとした表情を浮かべるが、何かを察したのか


「すまんかったのう」


 白髭の爺さんは頭を下げて謝ってきた。

 俺もただ謝って欲しかっただけである。


 というのも、最近では何かをやらかした時に、最初に「ごめんなさい」と謝罪をする人が少ない。

 何かにつけて言い訳をしたり、他の所為にしたりと自己保身ばかりに走る。


 爺さんも謝ってくれた事だし、本題に入る。


「爺さん、違う世界で別の人生って言っていたけど、そこはどんな世界なんだ?」


 俺は爺さんに行き着く際がどんな場所なのかを問う。

 行く世界がどんな場所で、どんな時代なのかを知らなければ、どう行動していいかも分からないだらうし。


 爺さんは俺の問いに対して優しく答えてくれる。


「お主が代わりに行く世界なんだが、簡単に言うと魔物という存在が跋扈する剣と魔法のファンタジー世界と言えばわかりやすいかのう」


 爺さんの発言に俺は胸を高鳴らせる。


「おぉぉ、剣と魔法の世界か。となると異世界に行くとなるとあんたから特典なんかは貰えるのか?」


 俺は一応、どちらかと言えばオタクよりの性格で異世界転生・転移の基礎が詰まったライトノベルを幾つか、読んでいた。


 こういう場合は神様の過失のなので、幾つか異世界において生きやすいスキルを頂けるというのがお決まりになっている筈——————

 

 俺は爺さんに特典があるかと聞くと爺さんは髭を撫でる様にして、


「うーーん、特に考えておらんかったなぁ。まぁ今回は特別ということで特典をつけてやろうではないか。お主はどんな特典が欲しいんじゃ?」


 今回は特別という事らしく、爺さんに特典をつけてもらえることになった。


 それもある程度の融通を利かせてもらえるらしい。


 となると、やはり強奪系? それともスライムの様な雑食吸収系? だがこの両者もスキルというものがないと対して効果が発揮されない。

 それとも、なんでも生み出せる様なチートすぎる創造系?


 だが、どれもありきたりだなと思ってしまう俺。

 

 そして、考えた末、脳裏にある考えが浮かんだ。


 剣の天才が達人的な努力を積み重ね、剣聖へと上り詰めることがある。


 どんな錆びた剣でも剣聖の剣捌きという技術によって、錆びた剣が魔剣や聖剣に相応しい力を発揮することがある。


 俺はそれに似た能力が欲しいなと考えた。


 どんな錆びた剣でも、俺が持った瞬間に聖剣、魔剣、さらには神剣へと変えてしまうような能力。

 そして、それは剣だけに留まらず、自分が使用する物を全て最高級へと変化させてしまうな能力。


 俺はそんな考えを白髭の爺さんへと伝えた。

 爺さんはうーんと悩んだ後、


「よーし、いいじゃろう。しかし、こちらでも僅かだが規制を付けさせて貰うぞ。今回そういう措置を取るのは『その時使っている物に限る』ということじゃ。簡単に言えば錆びた剣もお主が持っている間は聖剣や魔剣・神剣へと変化するが、使用を放棄した瞬間に、それは錆びた剣へと戻るということじゃ。こうしておかんと下界が剣のインフレをして堪らんからな」


 爺さんの条件に俺も納得した。

 というか、爺さんはほぼ俺の要求を呑んでくれた。

 そして、齟齬がないように爺さんともう一度条件を擦り合わせをした。


 まず、爺さんは異世界転生させてくれるという話だったが、また赤ちゃんから人生をやり直すというのは流石に面倒に感じられたので、自分の中で全盛期だと思われる15歳へと戻して貰う事にした。


 美的感覚が今から行く世界でどんなのかは分からないが、前と変わらないのであれば大丈夫だと思う、自慢ではないが寧ろ、注目を浴びてしまうかもしれない。


 そして、貰える特典なのだが異世界でも生きていくのに困らない為に、どんな言語でも日本語へと変化してくれる『自動翻訳機能』と無制限に物を収納出来、勝手に整理整頓してくれる『異次元収納』。


 そして、さらに俺が欲しいと願った、どんな剣でも持った途端に聖剣・魔剣、そして神剣へと変わるような力を持たせる能力。【#固定能力付与__スーパーエンチャント__#】という名の能力。


 【#固定能力付与__スーパーエンチャント__#】に伴って、それを最大限に活かすことが出来る『アイテム鑑定』という物まで貰った。

 


 無事、転移の準備が整った様で白髭の爺さんは


「よし、じゃあそろそろお主を向こうの世界へと転移させるぞ」


 俺は爺さんに促される様に魔法陣らしき上へと立たされる。


「爺さん色々とありがとな」


 なんやかんや良くしてもらった爺さんに俺は感謝を告げる。爺さんは「フォフォフォ」と優しい笑みを浮かべ、


「じゃあ新しい世界で幸せに生きるんじゃぞ」


 爺さんがそう言うと魔法陣が、激しく発光する。

 そして、その同時に浮遊感が体を襲う。


 

 こうして俺、佐藤聡太は剣と魔法の世界、ユーストフォリアという世界へと転移を果たした。

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