第28話平穏
しばらくは平穏な日々が続いた。
周平の家で一緒にご飯をつくったり、DVDを借りてみたり。時にはカフェにもいって、それなりに充実していた。
私自身も、あまり周平に依存しないように、アルバイトを増やしたり、えまとサークルに行くようになった。
「ライブ?」
「サークルのライブあるからゆいか遊びに来てよ」
「うん!わかった。行くね」
久しぶりのライブだった。
サークルのライブに連れてってくれるということは、私をみんなの前で彼女として紹介してくれるということだろうか。
わたしは正直、うかれていた。
なんだかんだ、周平わたしのことだいすきなんだな。そう思っていた。
ライブの日、周平とライブハウスにむかった。
「えー!周平の彼女???可愛い」
「ちょっと向井さん、やめてくださいよ」
「お前彼女つれてきやがって羨ましいぜこの野郎」
この空間がとても恥ずかしかった。
えまといったテニスサークルとはちがった、バンドマンたちの、サブカルな雰囲気がでていた。
「ちょっと、おれ飲み物とってくる」
「うん、ありがとう」
なんだかこの空間・・・緊張するな。
視線を泳がせていたら私のことをじっと見つめる女の子がいた。
黒いおかっぱ頭に、真っ赤な口紅。幼い顔立ちであったが、タバコをくわえていた。
目が一瞬あったが、慌ててそらしてしまった。
飲み物ふたつをもった周平がこっちに来ようとした時、その女の子に呼び止められていた。
しばらく2人は会話した後、一緒にむかってきた。
「れな先輩、俺の彼女のゆいかです」
「初めましてゆいかちゃん。れなです」
おもったよりもハスキーな声で、びっくりした。
「ゆいかです。周平がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ。」
にっこりと微笑んだ顔が少し怖くかんじて、握っていた携帯をおとしてしまった。
慌てて拾おうとした時、れな先輩も一緒にしゃがんでいて、わたしのすぐそばで
「あー・・・噂のね」
と言った。
「はい、どうぞ。」
「すみません。ありがとうございます。」
噂の・・・?
たしかにそう言った。
「じゃあ、また」
れな先輩は手のひらをひらひろとしながらその場を離れていった。
噂のってなんだろう・・・
良くない事だとは思っていた。
周平に問いただしたいところではあったが、いまはライブもあるし、あとでなんとなく聞こうと思っていた。
周平の出番が近づいてきた。
「ゆいか、俺ちょっといってくるね」
「うん、頑張ってね」
周平が裏へと入っていき、わたしはひとり後ろのほうで見ていた。
ふう・・・少し休憩しよう。
私以外はサークルの人達なのでみんな楽しそうに盛り上がっていた。
こんなにもサークルで違うんだな。
そんな風に思っていると肩を叩かれた。
入り口でであった人だった。
「えっと・・・むかい?さんでしたっけ」
「そうそう!ゆいかちゃんたのしんでる??」
私がひとりぽつんとしていたところ話しかけてくれたのだろうか。
「あ、はい!たのしいです」
「よかったよかった。あ、未成年だっけ?まだお酒はだめか。」
「すいません・・・」
「謝らなくていいよ」
そう言って向井さんは手に持っていたお酒を一気に飲んだ。
「ゆいかちゃんって本当---」
演奏が始まってて何言ってるかわからなかった。
「え?なんですか?」
向井さんはわたしの耳に唇をちかづけた。
「かわいいね、周平にはもったいない」
「え・・・いや、そんなことないです」
「俺ゆいかちゃんタイプだ」
向井さんは私の腰を自分の方に寄せてきた。
「あ、あのちょっとやめてもらってもいいですか?」
「周平からはみえてないって」
「いや、そういう問題じゃ---」
手をグイッと引っ張られた。
引っ張った相手はれな先輩だった。
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