混沌 ブエノスアイレスの春 ピアソラ

ここは

そうです

あの時の

なぜ

あれから

どうなったのですか

シャルダンといっしょに逃げたではありませんか

サーシャ様

覚えていらっしゃいますか

いえ

私もです


ピタ ピタ ピタ


暗いです

仕方ありません

少し離れたところに窓があります

あの時のように

水の面に月が見えるのでしょうか


ここは月が見えるのですか

そうです

時折香りもします

甘く漂う

ルージェさまの

香り


本当ですね

王子さま


シャルダン

もしかして

あなたも


いえ


では 

なぜ今伝えようとしたことが

わかったのですか


それは

いつも

ルージェ王子さまの盾として

働いているからです


そうですか



サーシャ

シャルダン

無事だろうか

サーシャ

今はどこに

遠いところからでも

お前を見続ける

どこにいようとも

サーシャを想う

どこにいるのだ



こと こと こと





牢の番兵達がいますね

そうです

私がいた時の兵とは違うようです

そうですね

狭い窓から腕のみしか見えませんので

はい


シャルダンは知っていたのですね

そうです

私がライレーゼの子供ということもですか

はい

ルージェ王子さまは知っていらっしゃるのでしょうか

知っています

気づいています

サーシャ様

いえ

サーシャが王室であろうとなかろうと

好ましくないことなのです

そうだったのですね

とにかく

ここから逃げましょう

そうですね


サーシャ

窓から月が見える

どこにいるのだ

結ばれるのだ

サーシャとは

なぜ

今になって


コト コト コト


コホ こほ




サーシャ様と言いましょう

私の中では

今でもサーシャ様です

今から剣を上に投げます

どうしてですか

そうですね

上はルージェ王子さまの寝室

はい

その通りです


サーシャ

月が美しい

サーシャの瞳と重なる


ゴト





投げました

気づいていただければよいのですが

祈ります

そうですね



なんだ

下から音がしたぞ



ん なんの音だ

おや 何の音だ まさか

何か音がしました もしかして





何かあったのか

いえ

何もありません

そうか気のせいか

明日にもう一度投げましょう

周囲に気づかれてはいけませんから

そうですね

シャルダン



今日も月が見えるか

なぜかサーシャの香りがする

なぜだ



まあ

城から出たのを兵が確認していたからな


まさか

地下牢に

気のせいね





もう一度投げます

はい



サーシャ

会いたい



ゴト


まさか

そんなはずは


いえ

そのようなはずはありません





また音か何かしたぞ

気のせいです

そうか

どうして気づいて下さらないのですか

祈りましょう

サーシャ様



いや

サーシャの香りに間違いない

下にはサーシャがいる

誰かおらぬか

はい

王子さま

下には部屋があるのか

いえ

地下牢となっております

そうなのか

はい

誰がいるのか

それは

言いなさい

言えません

よし

通せ

駄目です

王子さま

サーシャ 

今から行く





ルージェさま

ルージェ王子さま


サーシャは地下にいるのか

どうやって


サーシャ

シャルダン

なぜ






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