セブン ブリッジ シティ
本の雨
洗礼
第1話
強い風が吹く。
マントがたなびきバタバタと音をたてる。
しかし、それ以上の喧騒と熱気に包まれながら二人は歩いていた。
「父さん、一度にこんなに沢山の種族が集まる場所があったんですね!」
「ああ、噂に聞いていたが想像以上だ」
声変わりしたばかりの声と低く落ち着いた声が交わされる。
彼らはフードの下から周りを見ていた。
赤い髪をした若い男ばかりの傭兵らしき一団、首長牛が牽く車に乗っているのは商業都市のキャラバンか?
深くフードを被る一団から風に吹かれて時折のぞき見える緑の美しい髪、あれはエルフかもしれない。
短い体躯に筋肉を詰めた姿のそれは間違いないなくドワーフだと確信する。
他にも鳥人バードマン、風の民ウィンディア、砂の民、獣人……ほとんどの種族がいるようだ。
北大陸を5年近く放浪して来た親子でも一度にこれ程多くの種族を見たことはない。
随分と若くして多くの経験を積んだ息子といえども興奮を隠し切れない様子。
父親は息子の年相応の反応に思わず頬を緩ませた。
「ほら、もう見えてきたぞ。あの高い建物が中央、市役所だろう」
キャラバンの群れの隙間から遠くに見えてきたものこそ、今回の旅の終着地を示すシンボルだ。
初代市長退任より300年、未だ二代目の主を戴けない庁舎。
セブンブリッジシティ市役所、人々は単に【中央】と呼ぶ。
「おおー、あれが噂の!行きましょう!確か観光コースがあるんですよね!」
「はは、こらこら、まずは宿をとってからだ。それに目的を忘れてはいかんぞ?」
にこやかに、和やかに話す二人は微笑ましい。
しかし忘れてはいけない。
ここはあらゆる欲望渦巻くセブンブリッジシティ。
彼等に待ち受けているのは栄光か、あるいはーーー
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