第三十九話「威迫」

「おい!馬鹿野郎!!」「おぉーーー」


 ノアが怒鳴りながらこちらに近づいてくる。

 周りを見ると、歓声を上げる者と完全に引いている者の姿が目に映った。


 もちろん、俺は木刀が手から離れないようにかなり力を入れていたのだが、それとは裏腹に見事に俺の後方にすっぽ抜けてしまった。


 さすがにこれは想定外だ。


「ちょっと!ノアさん!何やってるんですか!!」


 建物から勢いよくアメリアさんが出てくる。


 ノアは俺の横を颯爽と通り過ぎてアメリアさんの元へ駆け付け、そのまま滑り込むように膝を着くと、肘を地面に着いて頭の上で手を組んでアメリアさんに大げさに謝り始める。



「……あ」


 立ち上がったノアの頭をアメリアさんが持っていたファイルで叩いた。


 俺はその姿を見てすぐさま謝ろうと思ったが、走り出した瞬間にアメリアさんは髪をなびかせ建物の中に戻っていった。

 ノアもアメリアさんがを追いかけるように建物の中に姿を消した。



 ……どうやらノアの責任になったらしい。


 俺は運動場に一人で取り残された。



「……追いかけるか」


 建物に入る扉に近づこうと思った時、目の前の地面に大きな影が落ちる。



 バァーーーン!!!


 落ちてきたのはノアだ。

 その手には俺が飛ばした木刀と木剣が握られている。



「ふぅ……今から二次試験を行う!!!」


 ノアはそう言うと俺に向かって木刀を放り投げ、先程の位置まで戻り再び中段に構え直す。


 俺は言われるがままに木刀を構えたが、目の前のノアが先程と明らかに違い、腰が引けてしまった。


 ノアは懐に余裕を持たせるように大きく構え、木剣の剣先は微動だに動かず、俺の喉元に威圧を与える。



 ノアの威圧にビビッていると、先程のガラスの割れた所から目線を感じた。


 振り返るとアメリアさんが物凄い形相でノアの事を睨んでいる。

 そのことにはノアも気づいているようだ。



 アメリアさんの目があるならば、おそらく殺されることはないだろう。


 ……たぶん。



「ふぅ……」


 さて、第二ラウンドをはじめようか。

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