第三十三話「レベル測定装置」
「それでは上着を脱いで、ベッドに横になりリラックスしてください」
俺は少し緊張しながらも言われた通りにスーツを脱ぎ、ベッドに横になった。
その間にもお兄さんは機械をカチャカチャといじっている。
「少し服をまくってもらっていいですか?」
俺が言われた通りに服を捲し上げると、お兄さんはおそらく心電図かなにかを見るためのものを俺の手足と胸辺りに装着した。
しかし、何も説明が無いので不安だけが徐々に高まっていく。
「それでは少し頭を上げてもらってこちらを着けてください」
お兄さんは頭が全て覆われるヘルメットのような物を俺に渡す。
それにはもちろん機械から無数のコードが繋がっていた。
俺は言われた通りにそれを被ったが、窮屈感は特になく、後頭部と耳はスポンジで守られていたので、不快感は無かった。
しかし視界は真っ暗なので不安な事には変わりない。
「右腕を上げてもらっていいですか?」
俺は言われた通りに右腕を上げると二の腕と前腕に何かを巻き付けられ、おそらく金属製の冷たい台座にゆっくりと降ろされた。
同様に左手にも何かを巻き付けられる。
「右足を上げてください」
俺は右足を上げると腕と同じように太ももとひざ下に何かを巻き付けられ、冷たい台座に降ろされる。
左足も同じだ。
「身体を固定しますね」
俺は太いベルトのようなもので身体をベッドに押さえつけられた。
ここまでくると逆に不安は無くなり、面白くなってきた。
[注文の多い料理店]方式でない事を祈る……
「それでは今からレベルを測っていきます」
「なるべく身体はリラックスさせてください」
「マスクの中が光りますが、なるべく瞬きはしないようにお願いします」
カチッ……カチッ、カチッ……カチッ、カチカチ……カチッ……
じっとして待っていると目の前に小さな光の点が10個ほど現れ、それと同時に不規則なクリック音がマスクの中で鳴り始めた。
手足は少し痺れる感じもするが、それは勘違いかもしれない。
10秒ほどすると光と音が徐々にフェードアウトしていく。
「アレンさん、聞こえますか?」
俺はマスクを着けたまま小さく頷く。
「少しエラーが出てしまったのでもう一度測りますね!」
「瞬きはしないように身体はリラックスでお願いします!」
お兄さんが言った通り深呼吸をして待っていると、再び目の前に光が現れ、音が鳴り始めた。
ただじっとしているのも暇なので、心の中でゆっくりと10秒を数える。
ちなみに、こうなる事は予想していなかったわけではない。
……2……1……0……、10……
10秒をゆっくりと数え、再び10から数え直そうとすると、音と光が消えた。
さっきよりも時間がかかった気がする。
「アレンさん、聞こえますか?」
俺は再び小さく頷く。
「またエラーが出てしまったのでもう一度測定しますね!」
お兄さんは腕と足に巻いたものを強く巻き直し始める。
「……あのー、多分、測れないと思います」
「前もレベル測定的な事をやったんですけどダメだったんですよ」
俺がそう言った途端、お兄さんの手がピタッと止まった。
なにも起こらないまま10秒ほど時間が経つと、お兄さんは俺の身体に着けた機材を外し始めた。
「……マスク取っても大丈夫ですよ」
マスクを取ると、俺の目の前には明らかに頭を悩ませるお兄さんの姿があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます