第十四話「暗転」
村に戻り、家でゴロゴロしているとケイが昼ご飯を持ってきてくれた。
「今日も遊びに行くから早く食べてね!」
そう言い残しケイはいつものように走り去っていく。
俺はささっと食事を済ませ、迎えに来たケイと共に遊びに出かけた。
「あのお風呂ってどうやって沸かしてるの?」
俺は道すがらケイに質問する。
少し硫黄の匂いはしたが、温泉らしきものは見当たらなかった。
「あのお風呂はね、東の山の方にある温泉からお湯をもらってるんだよ」
「でも、ちょっとぬるいから、わたしはあんまり好きじゃない」
「俺はあのくらいの温度の方がいいけどね」
「えー、やだよー」
俺の思った通り、あのお風呂のお湯は温泉だった。
『お風呂の日』があるということは、あまり量は出ないのだろう。
そんな事を話している内にいつもの遊び場に着いた。
スライムの量が減っているかと思ったが、この短時間に増殖していた。
「それじゃあ先に20体倒した人の勝ちね!」
「よーい、ドン!」
俺は50体までのイメージトレーニングと準備運動を朝に済ましてある。
20体なら余裕だ。
俺は万全の体制で勝負に挑んだ。
「フフフフフ」
俺は声を抑えながら笑う。
ケイに勝ったのだ。
まぁ、大学生が本気になればこんなもんだろう。
だが、意外にあっさり勝ってしまって少し物足りない気もする。
「ずるい!」
「もう一回やろ!」
ケイは俺に詰め寄ってくる。
何がずるいのか分からない。
だが俺は申し出を受けることにした。
このまま勝ち逃げしてはケイが拗ねるのが目に見えている。
大人の余裕というものを魅せてあげよう。
「わかったよ」
「でも、少し休憩させて」
俺が川辺に腰を下ろすと、ケイたちは川に向かって石を投げる練習を始めた。
ケイがこちらを見ていないことを鼻歌交じりで確認する。
<英語>を得ても、英語の歌が歌えないことは少し残念だ。
音痴は言語と関係なかった。
「アクティベイト」
スキルボードが表示され、俺はさっそくスキルを振ろうとする。
「は!?」
「……えぇ?」
思わず驚きの声が口から飛び出てしまった。
慌ててケイたちの方を見ると、俺の声には気づいていないようだった。
……もう一度、冷静に、目を擦りながらスキルボードを確認しよう。
やはり、SPが0のまま変わっていない。
一瞬頭が真っ白になったが、俺はこの原因をいろいろと考え始める。
可能性を一通り検討した結果『モンスターを一定以上倒すとスキルポイントが貯まらなくなる』という仮説にたどり着いた。
そして、それは一日の上限なのか、50体が上限になっているのかは不明だ。
「まじかよ……」
こんなことなら、もっと堅実なスキルを上げればよかった。
俺の今上げている<職業スキル>は400ポイントから、最低でも100ポイントを振らないと強さを発揮しない。
「休憩まだー?」
ケイが呼んでいる。
「ステイ」
そこからはあまり覚えていない。
気づいたら俺はケイを背負って村の入り口まで戻っていた。
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