第4話 失う

 レイが家に着くと、ちょうど男は金棒を家に振り下ろそうとしているところだった。

「やめろ!!!」とレイは怖がりながらも声を張り上げて、そばにあった太めの枝を手に握りしめ、男に向かって走り出した。ところが男はレイのことなど気にも留めず、

「ガシャーーーン!!!」と家を壊してしまった。レイはもっと足を速く動かそうとすると、急に足を引っ張られたような感覚が足を襲い、レイはその場で転んでしまった。すると、壊れた家の隙間からレアサが見えた。レアサは頭から血を流し、生きる希望をなくしたように霞んだ目をした。男はまた金棒を振り下ろそうとしていた。レアサはその瞬間霞んだ目を濡らし、ほがらかにほほ笑んだ。

「っ!」レイは思いっきり地面を蹴りだし、レアサを助けようと走り出したが、また足を引っ張られた。すると急に体が宙に浮き、何かに飲み込まれた。大きな穴だ。

「夢で見たのとおんなじ穴・・・」穴の中は明るい黄色をして光っていた。レイは家のほうを見ると、男がちょうど金棒を振り下ろしていた。レアサは金棒に頭から強くたたかれ、血を流しながらその場に膝から落ちた。

「っ!・・・お母さん・・・・・・」レイはショックをうけ、涙を流した。

(何もできなかった・・・見てることしか・・・・・・ごめんなさい・・・)レイは穴に吸い込まれながら、大粒の涙をぼろぼろと流し、うずくまった状態でいつの間にか眠っていた。

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