第18話 【多種多様】

光一コーイチ陽七ヒナ

一暗イアン亜夜アヤの結婚式の様な宴が終わって、一週間が過ぎた。

二組の夫婦は、それぞれの集落むらに新居を作り、暮らし始めた。

新婚生活は、順調な様なので、母親としてホッとした。


新しい二つの集落むらも徐々に出来て上がってきている。

二つの新しい集落むらが完成したら、先に出来た二つの集落むらの名前を変更する予定になっている。

白い髪の子達の住む【白村しろむら】は、【白南区はくなんく】に名前が変わり、

黒い髪の子達の住む【黒村くろむら】は、【黒西区こくせいく】に名前が変わる。

そして、白い髪の子達が住む新しい村は、【東陽区とうようく】と言う名前になる事に決まっていて、

黒い髪の子達が住む新しい村は、【北陰区ほくいんく】と言う名になる事が決まっている。

真ん中の【人類村じんるいむら】も名前が変わる予定で、【中央区ちゅうおうく】となり、

五つ全体で、【始祖町しそまち】と言う名前で呼ばれる。


もちろん、肉を主な産業としているのは、これまでと変わらない。

鶏や豚や牛の様な動物を家畜として飼育も始めている。

家畜は他にも大型の飛べない鳥や兎や蛙の様な動物など、数種類を実験的に飼っている。

溜池や堀では、魚も養殖している。

めぐみが花見の時に手に入れた恐竜によく似たドラゴンも、更に十数体 見付けて、牧場で飼育している。


田畑も豊かになり、五つの区画の町全体だけで、自給自足が可能な程にまで、集落むらは成長した。

いや、名称を変える程に、村と言うより、町としての規模と賑わいを持つまでになった。




「さて、コーイチ 行こうか?」


そうコーイチに声を掛けたのは、イアンだ。


「ああ、行こう」


区長くちょうをしている二人は、数人の仲間を連れて、新しく集落むらを作る場所を探すのを兼ねて、燻製や塩漬けにし、保存性を高めた肉を、獣人ウェア集落むらに行商しに行く。


は、子供達の安否がわかる様に、毎回 憑依カバーを使って、遠出の様子を観察している。

子供が成長しても、私の子供なのは変わらないからね。


今回の遠征は、南に向かって行く予定だ。

南には、草原を好む獣人ウェア 兎族ラビット獣人ウェア 鼠族マウスなど、数種の獣人ウェア集落むらが在るらしい。


の作った町だけで、自給自足は可能だが、多種多様な獣人ウェアとの協力関係は、これまで同様 大事にしている。


移動はドラゴンに乗って行く。


先ずは、山道を降りて行き、森を抜けて、広い草原に出る。

見渡す限りの草原だ。

がフジャーが出会った草原を、コーイチ達 子供達がドラゴンに乗り、移動する。

草原は森より危険な生き物は現れにくいが、安全とは言い切れないので、

コーイチ達は、最大限の警戒をしながら進む。


途中 食べられる物を見付けては、ドラゴンから降りて、採取を行い、また移動する。

採取は、野菜として栽培出来そうな物は、根ごと採って、根を水苔みずごけで包み、大切に持ち帰れる様にしている。


「これ、良いのが採れたよ。ずっと栽培してみたかったけど、これ、なかなか無くて出来なかったんだよね」


と、コーイチがイアンに言う。


「あー 解る解る。それ美味しいよね」


イアンも同意する。


そんな理由わけで、なかなか草原を抜けられない。

警戒もせず、採取もしないで、草原をドラゴンに走らせて移動すれば、既に草原を抜け出している頃だ。


そうして、のんびりと移動していたら……


ピョコッ


耳の長い者が現れた。

獣人ウェア 兎族ラビットだ。

イアンが憑依カバーを使って意思疎通をする。


「こんにちは、今 兎族ラビット集落むらに行く途中です」

そう、イアンが伝えると


[いく 案内する こい]


と、兎族ラビットは伝えてきた。


集落むらまで案内してくれるらしい。


「「「「ありがとう」」」」


コーイチ達は、みんなでお礼を伝える。


獣人ウェア 兎族ラビットは、獣人ウェア 猫族キャットと同じ位の大きさで、他の獣人ウェアと同じく、草食では無くて雑食の知性体。

凄く長い耳を持っている。

狼族ウルフ猫族キャットは、野菜より肉を好むが、兎族ラビットは、肉より野菜を好む。

それでも、一定量の動物性タンパク質を摂取する種族だ。

ただ、好む肉は、脂気あぶらけの少ないサッパリした物で、

逆に脂気あぶらけの多い物を好む狼族ウルフ猫族キャットとは、対象的だ。

この様に、好みの違いは有るけれど、全ての獣人ウェアは、大なり小なり動物性タンパク質も摂取し、野菜も食べる雑食性と、獣人ウェア 狼族ウルフ達に教わった。


ちなみに、兎族ラビット達も、モフモフして可愛い。

凄く可愛い。


コーイチ達は、獣人ウェア 兎族ラビットに食べられる野草を教わりながら、彼等の集落むらに移動する。


「えっ?これの根も食べられるんだ!?」

コーイチが興味深く説明を聞いている。


白い髪の子達は、農業が主な仕事の一つなので、そのちょうであるコーイチは、新しい農作物を増やそうと、努力をしている。


今 説明を受けているのは、根が肥大して可食部分となる野草だ。

白いのとオレンジ色の二種類が有り、根は似た形になるが、全く別の植物らしい。

多分 白いのは大根、オレンジ色は人参と似た物だろう思う。

コーイチは、丁寧に採取して、活かしたまま持ち帰られる様に処理をしていた。


[あそこ 行く]


獣人ウェア 兎族ラビットは、草原から見える小山を指差して伝えてきた。


「あの小山に集落むらが在るんですね」


兎族ラビットを先頭に、ドラゴンから降りたまま、歩いて集落むらに向う。

初めて行く種族の集落むらに、ドキドキワクワクが止まらないコーイチ達。


集落むらを目指して歩いていると、またいで渡れる程の幅の小川が流れていた。

その小川に沿って、獣道けものみちが続いている。


そこから30分も歩くと、獣人ウェア 兎族ラビット集落むらに着いた。

高さ3メートル程の木の柵で囲われている。

出入口から入ると、小山の麓に穴が多数有り、それが住居になっている様だった。

小川は出入口付近から集落むらの中に続いていて、集落むらの中では、小山の麓の湧き水の所に続いていた。


コーイチが

「先ずは族長オサーに挨拶したい」

と、集落むらまで案内してくれた兎族ラビットに伝えると、集落むらの中も案内してくれて、族長オサーの所に連れてきてくれた。


集落むらの中心の住居の穴の前に居る、白い毛が長目の兎族ラビットが、族長オサーらしい。


族長オサー 【人類村】から肉を持って来ました。交換をしませんか?」

そう伝えると、喜んで迎えてくれた。


集落むらの中央の広場に案内される。

そこに敷物をして、その上に燻製や塩漬けになった肉を並べる。

一気に人集ひとだかりが出来て、物々交換を希望する者が殺到する。

肉はなかなか貴重らしい。

イアンは集団全体に憑依カバーを掛け、落ち着く様に伝える。


「落ち着いて、お肉は沢山沢山 持ってきてあるから」


獣人ウェア 兎族ラビット達の出してくる品を見て、より有用な物は多くの肉と交換し、価値の低い物とは、少量の肉と交換する。

いつもと違うこの時を、コーイチ達は愉しんで過ごした。

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