第16話 【安寧秩序】

光一コーイチは、【白村しろむら】に帰って、天光アマミツに狩りに行く者達を集める様に指示を出す。


「それじゃケガの無い様にしっかりな。アマミツを頼りにしてるよ」


成人してから何度となく繰り返した、もう慣れた作業だ。

それでも、狩りは危険な作業だ。相手が巨大なだけに、一つ間違うと死者が出る。

気を抜かない様に長男の一人として、おさとして、指揮をする。


コーイチの治める【白村】には、約20名が住んでいる。

もちろん一暗イアンの治める【黒村くろむら】と同数だ。

約20名なのは、めぐみが治める【人類村じんるいむら】でも暮らしている者も居るからだ。

【人類村】と【白村】【黒村】全部で人口が100名を超えている。


【白村】の特徴は、狩場も含めて、3つの集落むらの建物やライフラインの管理保守と医療行為と田畑の管理を、主に行っている事。

狩りは補助としてしか加わらない。


白い髪の子達は


・傷を癒す力

・水を作る力

・火を出す力

・風を起す力

・土を操る力

・光を生む力


を得意としている。

その得意としているのうりょくを活かした仕事を受け持っているのだ。


だから、狩りでも【白村】の人間は、獣人ウェアや【黒村】の人間のサポートを主としている。


今の【白村】の主な仕事は、将来的に必要になる、居住区の増築の準備だ。

現在は、その居住区となる外周に、徐々に巨大な塀を作っている所だ。

新しく出来る居住区も含めると、【人類村】は東西南北の方向に、4つの村に囲まれる形になる。


「新しい居住区が出来上がる頃には、次に作る居住区の事を決めておかないとな……」

呟くコーイチ。


成人したコーイチは、白い髪はサラサラと長く、まつげや目の色も薄く、色白な肌。

【天使】 地球なら、そう言われてそうな美貌だ。


妹達もコーイチのファンが多い。


めぐみから産まれる子達は、全て美形なのだが、その中でも、コーイチとイアンは、群を抜いて美しい。

そもそも、めぐみ自身も美人なのだが……







イアンの治める【黒村】。


暗牙アンガ 頼んでいた狩りに行く兄弟を集めてくれ」


アンガには、【人類村】から戻る時に、既に憑依カバーを使って指示を出してある。


黒い髪の子達は、みんな憑依カバーが使える。

それ以外も


使役マリオネット

念動マインド


が、全員使える。

怨霊由来ののうりょくで使えないのは、分体スプリットだけだ。


それ以外も【光を生む力】以外の魔法が、約半分 使えるのが、黒い髪の子達の特徴だ。


その特性を活かして、【黒村】は狩りを主な仕事としている。つまり、各3つの村の守護が主な仕事で、【黒村】の建物やライフラインの保守管理も手伝っているが、補助程度でしかない。医療行為も【傷を癒やす力】を持つ者はやるが、そもそもその力が使えない者も少なくない。田畑の管理も、【土を操る力】を持つ者を中心に行っているが、【黒村】の中の畑の管理だけで、精一杯の状態なのだ。


今の【黒村】の主な仕事は、狩りの安全性の向上と、永続性を確保する方法を検討する事だ。

巨大なけものの出現数は、年々 減っている。

元々 この世界は、巨大なけものに限らず、獣人ウェアが危険を感じる程のけものは少数だったのだ。

当然 十年以上も大きなけものを狩れば、その数は減って行くし、このままだと遠く無い将来 激減するだろう。

家畜にするけものを確保したり、牧畜や半牧畜などの検討や実験を行って、持続可能な食肉の確保を確立しないといけない。


「コーイチが『この山だけでは将来 居住区の確保が難しくなる』と言ってたし、けものの調査も兼ねて、新しい地に行ってみないとな……」

呟くイアン。


成人したイアンは、黒い髪は短くふわふわで、深く黒い目は黒真珠の様だ。少し黒い肌も美しい。

【魔王】様 地球なら、そう呼ばれて尊ばれそうだ。


妹達もイアンのファンも多い。


二人共 母譲りの美形であるが、異世界では比較対象が母親と弟妹だけだ。





塀の外では、母のめぐみと、まだ小さな弟達と妹達の笑い声が、コーイチとイアンの耳に聴こえる。

レッドベリーを採って食べている様だ。


「「(みんなの幸せを守りたい)」」


二人は心の中で呟く。

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