第4話 幼馴染

翌日。

いつも通り、俺はバイト先へ向かっていた。

色んなアルバイトを転々としていたが、最終的には小さな喫茶店で落ち着いた。


一応、音楽で成功するという大きな夢を目指している為、ある程度シフトの融通が利くような職場を探していたら、たまたまアルバイト募集の貼り紙を見つけたのが、この喫茶店だ。


店内はそんなに広くもなく、60代夫婦が経営しているアットホームな雰囲気の店だ。


店長にはいつも、急な用事ができても休ませて貰ったり、かなり融通をきかせて頂いている。感謝しかない。


カランカランー


「いらっしゃ・・なんだ、お前か。」


スーツ姿の、いかにも営業マンという風貌のサラリーマンがきた。


「おいおい、俺だってお客さんだぞ、ちゃんと接客しろよ。」


こいつは俺の幼馴染のジュンペイ。

営業の外回りをサボって、良くうちの喫茶店に足を運んでる。


「いつものコーヒーでいいか?」


「ああ。ところで、昨日のオーディションはどうだったんだよ?」


俺は慣れた手つきでコーヒーを淹れながら、ジュンペイの質問に答えた。


「まぁ…結果待ちだよ。」


結果待ちも何も、その場で落選を言い渡されているのに、プライドが働いて嘘をついてしまった。


「まぁその様子だと、今回もダメだったみたいだな!お疲れさん!」


さすが小学校からの付き合いだ。すぐに見抜かれる。


「うるせぇな、さっさと飲んで会社に帰れよ。」


「はいはい。お、今日のコーヒーも美味いなぁ。お前、喫茶店でも開いたらどうだ?」


「そういう冗談に聞こえねぇ冗談はやめろ…」


「ははは!悪い悪い!俺はお前の歌好きだけどな〜!あれだ、彼女でも作ったらいい曲作れるんじゃないか?良く言うじゃんか!実体験を元にした方が良い曲作れるとか〜」


俺が最後に彼女がいたのが、20歳のときだ。

もう四年感もまともに恋愛していない。


「そんな簡単に彼女なんてできねぇよ。それに・・」


「ん?なんだ?それに?」


ジュンペイに、昨日盲目の女子高生と出会って、連絡先を交換したなんて、言えるわけない。

ましてや、その女の子の事が気になっているだなんて、恥ずかしくて言えない。


「・・ジュンペイは、もし気になる子がいたとしたら、最初にどんな連絡をする?」


ジュンペイは驚いた表情でこっちを見た。


「おいおい、マジかよ!好きな女でもできたのか?」


とても嬉しそうに、とても興味があると言わんばかりの表情だ。


「まぁ〜そうだな〜、俺なら速攻でデートに誘うな!やっぱり会って話さねぇと始まらないからな!」


「そうか。ジュンペイらしいな。」


「で、相手はどんな子だ!?歳は!?見た目は!?どこで会ったんだよ!?」


「そ、それは・・また進展があったら教えるよ。」


「なんだよそれー!そこまで言っといて内緒かよ!」


さすがにまだ一回も連絡していない状況だ。

もしかしたら、連絡先をブロックされているかもしれない。


プルルルル…

ジュンペイの携帯が鳴った。


「はい!お世話になっております!はい!すぐにお伺いします!」


ジュンペイは、慌てた様子で、カバンを持った。


「あーもう!今度教えろよ!絶対な!ご馳走さま!」


カウンターにコーヒー代を置き、嵐のように去っていった。

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