枯らしてやろう
かのぶん
第1話
これは、ただの思いつきで始めた
一人の女の"つまらない人生"の話だ。
女は"本気"を知らない。
20年以上生きてきた人生を振り返って、女が何もかもかなぐり捨てて、夢中になって、本気になったことなんて1度たりともない。
欲はあった。
アイツに勝ちたい、あの人に認められたい、あの舞台に立ちたい、みんなから愛されたい、あの男の唯一になりたい。
でも、あったのは刹那の欲だけで、
努力してまで、"本気"になってまで、
"それ"を手に入れたいと思ったことは
今思えば、1度もないのかもしれない。
女は達観していた。
女は長女で、弟がいた。従姉妹や親戚もいた。その子どもたちの中で、女は1番年上だった。
だから、私が面倒を見なくちゃ、と小さな頃から思っていたせいか、年相応に遊ぶことがどこか恥ずかしくて、背伸びをしていた今思えば可愛くない子どもだった。
ひとり親だったのもあるのだろうか。
自分の人生を娘や息子に捧げ、支える母親。
女は母親が大嫌いで、でも尊敬していた。
怒ると怖いし、時々理不尽だし
高校生の頃、母親の彼氏が原因で人生初の反抗期を迎えた時に至っては、たった一度だけ母親に心の底から失望した時だってある。
でもそれでも、この約20年
生きてこれたのは紛れもない、その母親のおかげなのだ。母親が大嫌いな筈の男(ちちおや)の面影を残す私たちをここまで育ててくれことには感謝しているし、凄いと思っている。
そんな母の背中を見て育ったから、
嫌いながらも、母のようになりたいと心のどこかで思っていたのかもしれない。
結局なれることはなかったけれど。
女は、愛されたかった。
子どもの頃は、どちらかと言うと父親っ子で母方の祖父にも叔母にも父方の祖母にも、初孫、初姪ということもあり、大層可愛がられたと思う。
ただ今思えば、女は本当は母親に甘えたかったんだと思う。
弟と喧嘩をすれば、だいたい母は弟の味方をしたし達観した可愛げ無い娘よりワガママでやんちゃな弟の方が良いのかと思ったこともある。だから、父親のところにしか居場所がないとさえ思っていた。
だから両親が離婚した時、それを受け入れる反面どこか心にぽっかり穴が空いたような気がした。
酒を飲むと暴れ、暴言を吐く最低最悪の父親だったけど、それにしか縋ることが出来なかった幼少期。
これまでの人生を振り返ると、
母親に甘えた記憶はない。小3の頃に両親が離婚した、あの時から私は、甘えることを忘れてしまった。
それまでだって、甘えていたかどうかすら記憶にない。
だから女は未だに、甘える、頼るということが出来ない。
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