第12話:魔術の不思議
俺の奴隷生活は結構お気軽なものだ。
普通なら朝早くから夜遅くまで重労働で酷使される。
与えられる食事も本当に少なく、常に飢えに苦しむことになる。
理由もなく理不尽に鞭うたれ、人の尊厳など全く与えられない。
それが普通の奴隷なのだそうだが、ここではそうじゃない。
奴隷仲間は重労働に苦しんでいるが、俺は基礎レベルが100だから楽勝だ。
食事は少ない量しか与えられないが、俺が隠れて狩りをしているから豊富だ。
理由もなく鞭打ちすることは、指揮官のアンが毛嫌いしているので誰もやらない。
その点はクソ女騎士のネルがサンドワームに喰われた事が大きいない。
アンが国と騎士の名誉を穢す者を絶対に許さない事は、大使との言い争いで有名になっているから、誰も不名誉な事はやらない。
「今日は狩りをやる。
狙うは一番の強敵、サンドワームだ。
ネルが喰い殺された事からも、油断ならない敵なのは分かっているな。
一瞬たりとも気をゆるめるな」
アンは本気でやる気のようだが、今のアンでは難しいと思う。
奴隷として側で観察していて分かったのだが、アンはとても努力家だ。
エリザベス王女の使った魔術のサンドスネークを覚えようとしていたが、土魔術に適性のないアンでは不可能だった。
だがそれでも諦めず、自分が使える火水風の魔術で応用しようとしている。
だけどレベルが3では難しいと思う。
スタンフォード王国に来てからずっと魔術について検証してきた。
最初は異世界や異次元から呼び出しているだけだと思っていたのだが、周りの物、物質を利用する魔術もたくさんあった。
エリザベス王女の使ったサンドスネークも周りの砂を利用した魔術だった。
異世界や異次元から魔術で物質を呼び出して利用するよりも、この世界にある物質を利用する方が簡単でMP消費も少ないように思う。
そう考えれば、アンはこの辺でも普通にある空気、風魔術で戦う方がいいと思う。
どんどん風魔術のレベルをあげて、風の刃や嵐で敵を斃せばいい。
それに、風魔術で空気を自由に操れるのなら、砂を風で操作して土魔術のサンドスネークと同じ術を使える気がするのだ。
いや、実はもう自分で試しているので、確実に可能なのだ。
それに、水中以外ならどこにでもある風魔術が使えるのは大きいと思う。
「奴隷たちは私たちが狩った魔物を運ぶのだ。
ネルの恥知らずのように囮にしたりはしない。
安心するがいい」
奴隷たちは心から安心したようだ。
アンの事は信用していても、長年の奴隷生活で疑い深くなっている。
その気持ちは分かる気がする。
半数近くの奴隷が指の一本程度は失っているからな。
俺が本気で練習したら指どころか腕や脚を失った奴も治せるかもしれない。
問題はどうやって治癒魔術を覚えるかと、それを俺がやったと気がつかれないようにする事なのだが、正直いい方法が思い浮かばない。
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