余命一ヶ月で恋に落ちた猫
阿久津
第1話 雨の日
ふと、雨が当たらなくなった
目を開け前を見る、そこには一人の男の人が傘を差し出し心配そうに見つめる。
「あの...大丈夫ですか?」
私は口をパクパクさせるだけで声が出ない、
仕方なく首を振る
「今夜は冷えますし家に来ますか?」
首を縦に降る
―――
ガチャ
「少し待っていてくださいね、タオル取ってくるので」
ポタ ポタと雨水が滴っている
タオルを持ってきた男の人は私の頭をワシャワシャと拭く
「お風呂沸いてるけど、入れる?」
うなずく
お風呂場に入ると湯船から湯気が立っている、冷えきった身体を温める感覚が薄れていた手足の指先も徐々に感覚を取り戻す
「服、ここに置いておきますね」
「あ、は い」
身体が温まったからか少し声を出せるようになった
少しの間湯船に浸かって身体を温める...
―――
「あ、あの ありがとう ございます」
「いえいえ、あんな雨の中ほっとけないですもん、ご飯できてるからそこ座ってください」
「はい」
机の上には丁寧に握られたおにぎりと湯気が立っている味噌汁が二人分用意されていた。
「どうぞ食べてください、その後話しましょう」
私は座布団の置かれた場所に座ると、どうぞと訴えるように笑っている彼の顔を見て、言葉に甘えおにぎりを一つ手に取り口いっぱいに頬張る、すると身体が求めていたのか食べる手が止まらなくなった
「あんな雨の中どうしたんですか?」
「わか らない」
「じゃあ名前は?」
横に首を振る
「帰る場所は?」
「多分 ない...」
うーんと悩む男性、何か思いついたように「はっ」という
「僕の名前言ってなかったね、僕の名前は
しばらく沈黙が続いた
「一つ聞いてもいいかな?」
私は耳をピクッと動かし首を傾げる
「やっぱり君は人じゃなくて猫、だよね」
「多分、そうだと思います。
これからのことなんですが...もし尋さんがよろしければここに置いてもらえませんか、私まだ外の世界が分からなくて一人で外に出るのは怖いんです。」
「うーん、いいけど明日大学に行かないといけないけど留守番出来る?」
「が、がんばります」
「今日はもう遅いし寝ましょう」
「は、はい」
「えーと確かここらへんに、あったあった」
尋はせかせかと寝る仕度を始めた
「電気消しますよ」
「はい」
パチッ
「おやすみなさい」
―――
ピピピ ピピピ
摩訶不思議な一年の一日目が始まる
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