サボテン
バブみ道日丿宮組
お題:鋭い凶器 制限時間:15分
サボテン
心臓に刺さったトゲは深く背中まで貫通していた。
それを勢いよく引きぬくと、隣人は血を吐いた。
「……」
なにやら口をモゴモゴして話してるようだけど聞き取れない。もっと聞くつもりではないのだから聞こえるものも聞こえやしない。
凶器に使ったトゲはサボテンのトゲ。警察にもわからないだろう。焼いて食べてしまえばいい。台所に向かう途中一度だけ振り返ると、隣人はまだジタバタと震えていた。
案外しぶといやつだ。
とはいえ、瀕死の状態。命が終えるまで数分もないだろう。
サボテン料理には詳しくなかったが、油で炒めて卵でとじれば大体同じようなものだ。
「……」
味は草。
味覚が弱いこともあってそうとしか思えなかった。
隣人のプレゼントとして持ってきたサボテンをまるまる1つ食べ終えると、若干の睡魔が襲ってきた。ここで眠ってはいけないのだろうけど、とても勝てそうにない。
死体と一緒に眠るというのはどういう味があるのだろうか少し気にはなる。同じ夢を見れるのか、あるいは復讐される夢か。
どちらにせよ、長くはいられない。
自分の家でしっかり休むのも手だがアリバイ的に家にいないほうがいいだろう。
そう思い身支度を整え、隣人宅を出る。
外には誰もおらず好都合だった。万が一見られてもしたら疑いを与えてしまう。
「……よし」
駅前の漫画喫茶で休憩することにしよう。最近じゃベッドルームがあったり、シャワー室があったりと喫茶とは何なのだろうかと疑問の念に捕らわれそうになるが今は気にしないでおこう。
数分後ーー目的の漫画喫茶に到着した。
顔はよく見られないようにマスクと眼鏡をつけておいた。これでおおよそ私という個人は潰れる。もっともただのアルバイト店員が客を覚えることもないだろう。コンビニのように毎度同じ客が同じ時間にくれば話は別だろうが。
受付でもらった鍵で用意された個室に入ると、ようやく一息つけた。あとは身体に残ってるサボテン成分を吐き出してしまえば痕跡は完全に消える。
だがその前に一眠りしよう。
そうして私は目覚めることのない夢を見ることになった。
サボテン バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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