妹の料理
バブみ道日丿宮組
お題:日本恋愛 制限時間:15分
妹の料理
遠距離恋愛というのは聞くけれど、近距離恋愛というのはあまり聞かない。
それはまぁ……当たり前か。近くにいるなら普通の恋愛であって近距離じゃない。
とはいえ、
「お兄ちゃん、そろそろご飯食べてくれない?」
「そうだな。そうだとも」
家族内の恋愛は近距離だと思う。
テーブルの向かい側に座る妹は不満そうにこちらを見てる。そして俺の目の前にあるのは紫色のカツ丼。妹いわく夜の栄養がたくさん入った愛情料理だという。
妹の奇才は今に始まったものじゃない。鬼が描かれたペアルック衣装とか、べったり登校とかいろいろあった。
今回もそのうちの1つでしかない。
「しっかり食べてしっかり襲ってよね」
「そういう恋愛はしたくないな。ほら、大和撫子みたいな?」
清楚ある恋愛をしたいものだ。肉食系妹には、
「わかんない」
通じないが。
そっかと声を出したところで状況が変わることはない。目の前の強敵をどうしたら回避できるか、あるいはなかったことにできるのか。
唸り声が聞こえてきたのでもう……押し切るしかない。
口に入れればなんでも一緒だと偉い人が言ってた。ならクソマズそうな料理であっても口に入れば同じということになるに違いない。
まぁ……そのクソマズい料理をおそらくそういう人は食べてないだろう。だって、偉い人だからな。美味いものばっか食ってるはずだ。
「ナ、なかなか変わった味がするな」
「そうなんだ。じゃぁ私も食べよう」
妹の前に置かれてるのは普通のカツ丼だった。
いや……いつの間にか俺の方も普通の色をしたものがある。もしかして今まで見てたのは幻覚だったのだろうか?
これなら食えると再び箸を進めると普通の味だった。
「どうしたの? なんか疑問系の顔してるよ?」
「いや、紫色のカツ丼を見てたはずって思ってるんだ」
「何言ってるの? カツ丼は茶色というか卵の黄色だよ」
ため息が耳に届く。
妹は正しい。間違ってたのは俺の方かもしれない。
「愛情たっぷりだから味わって食べてね」
「あぁ、美味しいよ」
それから数分後に俺は全裸でなぜかベッドに横たわってた。
妹の料理 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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